医学部専門課程に入って、
まず解剖学で痛めつけられました。
私たちの大学の医学部は、
基礎医学が難しいのが特徴です。
臨床医学になると拍子抜けするくらい試験が簡単になります。
とくに生理学は困難の極みでした。
生理学といっても、
女性の生理とは何の関係もありません。
生理学は人間のメカニズムを追及する学問のことです。
生理学に通らなければ医者になれないといわれたくらい、
ここが大きな関所でした。
試験も口頭試問なので、
カンニングはできませんでした。
6人の教官の口頭試問をパスしないと、
不合格でした。
泰地は何とかして、
試験をパスしようと企んでおりました。
どんなことを聞かれるのか、
必死に情報を集めていました。
泰地も、
生理学が医者になるための正念場だ、
ということを知っていたのです。
泰地はバカの一つ覚えみたいに、
中学入試の時の自慢ばかりしていました。
全国の模擬試験で、
1番だったこと、
開成中学に受かったけれど、
行かなかったこと、
付属高校の推薦は、
付属高校全体で6番だったこと、
などです。
完全に、
過去の栄光に縋って(すがって)生きていました。
昔がいくらよくたって、
今がダメなら無意味なことです。
大学では、
毎年落第候補になっていたのですから、
過去の自慢より、
現在を何とかしたらどうだ、
と言われていました。
過去を自慢するとか、
親戚や友達を自慢するようになったら、
人間終わりです。
品性と言う言葉がありますが、
こういう人たちを品性下劣と言います。
泰地も充分に、
品性下劣でしたが、
彼にはその意識はありませんでした。
とにかく、
なりふり構わず、
生理学の試験に受かることを企んだ泰地でしたが、
結局全部落としてしまいました。
口頭試問では、
さすがに誤魔化しは、
効かなかったようでした。
泰地と鈴木のふたりは、
何度受けても生理学の口頭試問が受からず、
6回目ぐらいで、
ふたりがあんまり哀れなので、
進級ぎりぎりのところで、
パスさせてもらったようです。
泰地と鈴木は、
付属高校でもライバルで、
泰地が6番、
鈴木が7番で医学部に推薦で入ってきました。
ライバルとはありがたいもので、
大学に入ってからも、
底辺で競い合っていました。
生理学の口頭試問が終わると、
医学部専門課程も、
何となく山場を越した気分になりました。 🏔️
内科や外科などの臨床医学は試験が簡単でしたし、
教える方もお座なりでしたから、
学生の方もやる気はありませんでした。
したがって、
医学部専門課程も、
後半になるほど学生たちは遊びに夢中でした。⛵️
国家試験はほとんどの連中が、
眼中にありませんでした。
だって、
すごく簡単でしたから。
スペイン、コルドバのユダヤ人街です。
美しい景観を維持するのが大変だと言っておりました。
観光の国ですからね