■彼女と彼(1963)羽仁進 監督 | ◆Promnade~「音楽と時事放談」

◆Promnade~「音楽と時事放談」

作・編曲家 彦坂恭人(ひこさか やすと)

Yasuto Hikosaka's Weblog

■彼女と彼(1963)
Kanojo to kare


監督・脚本:羽仁進
脚本:清水邦夫
製作:小口禎三、中島正幸
出演:左幸子、岡田英次
音楽:武満徹

相撲は大鵬、野球は巨人と西鉄(西武)、高校三年生(舟木一夫)、見上げてごらん夜の星を(坂本九)が流行っていた頃の映画。
また、アメリカではケネディが暗殺された。

そんな時代背景を考慮に入れながら観てみると感慨深い。今では説明すら出来ない映画になってしまった。
ブラク、メクラ、バタヤ、ドヤガイ。

満州帰りだが、人並み以上に何不自由無く、テレビも買えて団地暮しの美人妻は、近くにまだ残るブラクに住む夫の学生時代の落ちぶれた友人と盲の女の子(実子ではないが育てている)、黒い犬。
屑屋としてその日暮らしをしている彼らに同情をしてしまい、必要以上にその生活に介入してしまう。

それはこれから子供を作ることへの不安、自分だけが幸せになることへの罪悪感からくるものなのか。

羽仁進という天才作家はそんな単純なものを描いている訳ではないように思う。
実に不気味な人間という存在、社会という欺瞞へ映画という手段を使って引っかき傷をつけていたようにと思える。

武満徹の音楽はそれに拍車をかけるように実に不穏で時には甘美に鳴り響く。