社会貢献活動は寄付ではなく、事業として永続することが求められてます。こうなったのはこの10年ぐらいのことで、ここが昔からあるチャリティ活動とことなり新しい点です。
しかし、本業の添え物で端っこでやる事業で、そこへ経営資源を集中するなんてことはありませんでした。ほどほどにやるのが普通でした。でも時代は変り、今の時代、社会貢献事業に経営資源を集中するのがいい、そうすると企業ブランドを築くことができる、そんな時代に変ってると思っています。
そういったことを痛切に感じたのは、住友化学の蚊帳「オリセットネット」(マラリアを媒介する蚊から身を守るために、糸に防虫剤を練りこんだ繊維で編んだ蚊帳、5年間は防虫効果が持続する)をみてそう思ったのです。
住化はもっとオリセットネットに経営資源を集中していたら、今頃住化の名前はグーグルやアップルと同じように世界ブランドになっていたのに、地味にやりすぎたのでチャンスを逃したと思うのです。もったいないことです。
この蚊帳は82年から開発を開始し94年に完成、01年にはWHOから使用を推奨され、04年にはタイム誌から「世界で一番クールな技術」にも選ばれるほどのものでした。
日本ではあまり話題になりませんでしたが、世界中から讃えられた製品だったのです。
タイム誌から褒め称えられたとき、この蚊帳に経営資源を集中していたら世界中に普及し、住友化学の名は世界に知られていたはずです。
主な購入先の国際機関からは、適正な利益は確保するよう要請されています。事業継続ができなければ、蚊帳の供給も止まってしまうからです。
この5年間は国連、世銀などの国際機関、ゲイツ財団のような民間の財団は、途上国の貧困を撲滅するために資金を集中し、マラリア撲滅は具体的なプロジェクトでしたが、もし、住化が蚊帳に資源を集中すれば、このトレンドに乗りオリセットネット事業は拡大したはずです。
この会社の本業は、合繊原料、工業薬品、樹脂、電子材料、医薬品、農薬などですが、住化の名前は蚊帳で世界中に知れ渡り、本業にも役立ったはずです。
03年にはタンザニアで合弁事業をやっており(パートナーはA to Z Textile Milles Limited)、年間1900万張りを生産し、4000人の雇用を産んでいるとホームページ に書いてあります。
「社会貢献が目的」「いったん上がった利益は学校建設などの形で、再度地域に還元することにしている」(米倉社長)
会社としたらやってるつもりなんでしょうが、本業の添え物の感覚は抜けません。利益を学校建設に使うのでなく、蚊帳工場に再投資するのがやる気というものです。
アップルのiPod、トヨタのプリウス、シャープの液晶TV、これらはまだ始まったばっかりの規模の小さかったころから、そこへ経営資源を投入する挑戦をやって成功した事例です。
これと同じです。
社会貢献活動に経営資源を投入すると、いろんないいことが起こることを想像してください。
昨年にはナイジェリアに年間2000万張を生産する工場建設を決定し、5000人もの雇用を増やします。