営業目線で分析する「24時間テレビ」 | わいわい日記 by わいわい企画

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 8月末を代表するイベントとなった日テレの「24時間テレビ・愛は地球を救う」。これまでの募金累計額が350億円ぐらい…ということですので、本当にすごいイベントだと思います!


 この番組の内容については、これまでもさまざまな識者やメディア関係者がコメントしていますので、今回は「ビジネス」の側面から「24時間テレビ」を考えてみたいと思います。

 この番組、基本的には「タイム提供」をベースに設定されています。しかも、ある一部分だけ…のセールスではなく、例えば「ゴールデンの60秒と、その他の時間(日中帯と深夜、早朝)の180秒セット」みたいなセールスで1,000万円…という感じです。

 このため、スポンサーとしては「提供はしたいけど、視聴率がいいところだけを買いたい」というホンネがあったとしても、局としては「申し訳ありませんが、どこで放送するかは局側に一任して頂くパッケージでしかセールスしていません」ということになります。しかも「高いバッケージを買った方が、より良いポジションで放送される」という暗黙のルールがありますので、スポンサーとしては非常に悩ましい案件です。


 日テレHDの2013年度・第二四半期のIRリポートによると、日テレ単体の四半期のタイム売上げが545億円、たまたま同じくスポット売上げも545億円でした。この辺りから類推すると、24時間テレビの「タイムセールス」では、たぶん20億円ぐらい稼いでいるのではないかな…と思われます。

 これは日テレ単体での売上げですので、系列局はそれぞれ別途「ローカルセールス」していることを含めると、全国の「24時間テレビ」の累計では25億円くらいになるのかな…という予想です。

 番組放送時間中、チャリティで集めた金額が2億6千万円くらい(年間だと10億円くらい)とのことでしたので、日テレはその5倍以上の「売上げ」を「24時間の放送」でスポンサーから集めている訳です。その一方で、支出はどんなに使ったとしても5億円もいくことはないと思われます(特番とは別に計上されているレギュラー的な人件費などは除く)。

 過去に多くのブログで「チャリティなのに、タレントにギャラを払うのか」と叩かれていますが、まぁほとんどの場合は「払われる」のが現実ですし、よほどの高額でなければ「上記のように日テレがビジネスとして番組を放送しているのだから、そこに携わるタレントさんにも一定額のギャラを支払う」のは「(日テレ側の主観に立つと)当然」だと思います。

 仮に日テレが「(タイムセールスの売上げ + 視聴者からの募金額) - 番組制作経費 = 残金 ← その全額を寄付します」と言ったとすれば、タレント側にも「だから、無償での出演を考えて」と言えると思いますが、自社はきちんと利益を確保しているのに、タレントにだけ「無償で協力を」と言うのは、さすがにバランス的にマズイ気がします。

 その一方で、こういうビジネスの側面からでなく視聴者個人として考えると、「自分たちは身銭を切って募金しているのに、テレビ局やタレントが莫大な利益を上げているなんて許せない」という感情論も分かります。


 こういう「チャリティー」と銘打った「ビジネス」は、各種団体などでも実施されている「日本ならではのビジネス」です。新聞社などが全面記事広告と一緒になって「社会を変えよう」みたいなキャンペーンを実施する時も、実は大抵「売上げ確保」が目的としてあります。

 「社会の公器」と言われるメディア企業も、基本的には営利を追求する株式会社であることがほとんどです。ですので、福岡であればKBCの「水と緑のキャンペーン」にしても、大阪であればABCの「ガラスの地球を救え」にしても、ニッポン放送の「ラジオ・チャリティーミュージックソン」にしても、現場の意思は別として、企業としては「利益確保」が前提の「ビジネス」であることに間違いありません。

 日本でもごくまれに「私企業の利益確保のためでなく、まったくの社会貢献のため」というチャリティーも開催されますが、正直なところあまり数は多くありません。シビアな現代では、そういったイベントに会社の費用を支出した場合、株主から「そんなことにお金は使わないで、もっと社業発展のために使え」と言われるリスクもあるからです。


 広告業界にいると「大手メディア企業が主催しているチャリティー関連の事業は、ほとんどの場合『スポンサード』されることが前提であることからも、基本的には営利を追求しながら、その(広告)手法として社会に対して『良いことをしよう』と提言する事業」と見えます。

 これが「悪」とは言いませんが、視聴者から「なんでやねん!」と突っ込まれる一因になっているのも事実です。現在のようなソーシャルな時代には、これまでマスメディアや広告業界が得意としてきた「意識の刷り込み(上から目線)」的なキャンペーンは、逆に「炎上」の原因となるのかもしれないな…と思います。

 そんな中で、まったくチャリティと無関係ながらも同様のセールス手法で「笑いと感動」を届けようとするフジテレビの「27時間テレビ」は、いっそのこと『潔いな』とも思う訳です。


 と、ざっくりとですが、「24時間テレビ」についての営業的一考察を述べてみました。

 広告業界にいると「すれた感覚」と「一般の人が持つ普通の感覚」を同時に持ち続けなければいけない…と思うのですが、どうしても「裏側」から見てしまうようになってしまいますね(笑)


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