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近くはなかった距離だったのに、話しながらだと、あっという間に着いた。
真ん中の、あの噴水のあるところまできて、ベンチに座る。
以前とは、何かがチガウような、チガワナイような。
「ね、千尋ちゃん。」
「ん?」
「もし、母さんが会いたいって言ったら、どうする?」
「エッ?」
「もしもの話し。」
ワタシは少し考えてから答えた。
「会えない、かも。」
昂大の顔が、少しダケ曇ったけれど、ワタシの顔を見て、驚いたようにすぐ、笑顔になった。
「いいんだ。ゴメン。急かし過ぎだよね。」
「ワタシこそ、ゴメン。まだ、そこまでの覚悟できてなかった。昂大が彼氏になるということを、やっと自分に納得させたばっかりで。」
「ウンウン。わかってる。なんだかね、僕、舞い上がってるみたい。両親に、僕の彼女ですって、やっと僕のところに来てくれましたって、自慢したかったダケなんだよ。父さんは知ってるけれど、母さんは知らないから。」
「そだよね。和義様は、この前来店してくださった時、ワタシをキチンと守ってくださって、助かったん。」
「僕の彼女ってこともあるけれどね、父さんは、千尋ちゃんのファンだからね。」
「マジで?」
「ウン。カウンター席に座れた時は、どっちが千尋ちゃんとたくさん目があったとか、笑いかけられたとか、自分の話で、どちらがたくさん千尋ちゃんを笑わせられたかとか…。メッチャ競争してた。」
「嘘やん。」
「マジなんだけど。」
「ハハ…ハハハ…。」
ワタシの乾いた笑いがこだまし、昂大は恨めしそうな顔をして、ワタシを見つめた。
ワタシは、咳払いをして、真面目な顔を取り繕った。
「あ…。ウン。ありがとう。」
「だけど、僕の一人勝ちだからね。」
「そうなん?」
「そうだよ。僕は、ファンじゃなくて彼氏だからね。」
「そういう問題か…な…。」
「そりゃそうだよ。僕はもう、千尋ちゃんのホクロの位置まで把握している。」
ワタシの顔がみるみる赤く火照る。
「千尋ちゃんは、すぐ赤くなる。可愛くて、キスをしたくなる。」
そう言って昂大は、ワタシの頬にキスをして、立ち上がらせた。
「帰ろうか。」
昂大が差し出す手を取って、家に向かって、歩き出した。