店の前で、少し考える。
入るべきか、様子を伺うか…。
絶対いるよね…。
やはりドアを少し開けて中を見ると、ワタシの顔と同じ高さで、マスターがドアにくっついて様子を伺っていた。
すぐドアを閉める。
このやり取り、いつまで続くんだろう……。
マスターが、ガバッとドアを開けて、
「おはよー千尋ちゃん!」
と、にこやかに出てきた。
「…………はよーございます……。」
「綺麗だ。ヤッパリ。」
「あざーす…。」
マスターが腕を広げて、歓迎してくれていたが、その横をガックリ肩を落としながら通り過ぎる。
「エェー!」
「なんすか…。」
「千尋ちゃん、冷たすぎる。」
「ドアにわざわぞくっついて何してるんすか…。」
「恒例になりつつある。」
「ぐっ…。」
「ぐってなに?」
「殴るのをガマンする音です。」
「ヒッ。」
「マスターって、男前だし綺麗ですよね。かっこいいのに、残念なんですよね。」
「誉めてる?」
「誉めてない…。」
「マァいいや。殴られなくてラッキー!」
「そんな問題じゃない。次、ドアの前にいたら、間違いなく殴りますから。」
「エェー!」
「エェーじゃない!それでなくても、緊張してるのに、落ち込まさないで下さい。」
「千尋ちゃんが綺麗だから、やめられない。」
「慣れたら、どぉって事なくなります。」
「千尋ちゃん、恋してるでしょ。」
「アァしてますよ。これで気がすみましたか?」
「昂大に言ったの?好きって。」
「何言ってるんですか?」
「昂大は、いい子なんだよ。その子が、僕のお気に入りの女性に告白したんだよ。外野としては、口を出したいのを、ずっとガマンしてるんだ。少しくらい、干渉したっていいじゃないか。」
いじけモードに入りかけているマスターは、メンドクサイ。
「まだ言ってません。好きかどうか、自分に問いかけてる最中です。」
ワタシは、少しだけマスターの聞きたいことを教えてあげた。
「あんまり待たせないであげてほしいな。」
「待たせるとかではなくて、彼は若いです。ワタシなんかが彼女でいいのか。そこをワタシがクリアしないと、どうしようもないです。」
「千尋ちゃんが、自分を受け入れないとダメってことだね。」
「そうです。ワタシの問題なので、いつまでも答えがでないかもということもあり得ます。」
「そっか。僕は、昂大の応援団ダケじゃなくて、千尋ちゃんの味方でもあるんだからね。忘れないで。」
「あざーす。解放してもらえますかぁー?」
「いいよー。今日は無礼講。楽しもう。」
「あい。頑張りまーす。」
ワタシは、イベの準備のために早く出たのにと思いながら、急いでスタッフルームに走った。