夢の話。
※
八月十一日。
初盆である。
坊主に経をあげてもらう日であった。
その前日、僕は友人宅で呑み過ぎて、二日酔いの状態であった。
そんな心根で際に見た夢だった。
僕は父と口論になり、座椅子を投げつけた。
父は僕に云った。
「お前はもう助からない。」
帰って来るのが早過ぎるのではないか。
やはり僕達はまだ赦しあえないのか。
何処かでは、気温が四十度を超えた暑い日だった。
※
次の日。
気持ちだけが先走る。
意識が先に経ち、目覚めの一服を吸い、洗面所に向かい、顔を洗う。
気付くと其れは夢だった。
ベッドに張り付いた身体を無理矢理引き剥がし、目覚めの一服にありつく。
つまらない夢だったな、と嘆息しながら煙を吐き出す。
覚醒を促す為に洗面所に向かい、顔を洗う。
其れは夢だった。
僕は余程に眠いのだ。睡眠が足りていないことを夢の狭間で思い知る。
しかし起きねば成らぬと、僕は怠惰を許さない。
危機感をまぶたに煽り、煙草に目をやる。
旨くも不味くもないただの煙に朝日が陰を射す。
日常に慣れる為に、洗面所に向かい、顔を洗った。
やはり其れは夢だった。
もしかしたら僕は死んでしまったことに気づいてなくて、必死に魂を肉体に繋ぎとめようとしているのではないか、不安の中で死と再生を繰り返した。
※
昨日。
酒を呑んだ僕はいつの間にか寝てしまっていた。
家の呼び鈴が鳴り、母が対応する。
僕の部屋は玄関の隣に有るので話し声は丸聞こえだ。
「$×°〒○(失念)は居ないようなので帰りまあす。」
男子高校生ぐらいの若い声。
ざわつきから三人程いると思われた。
母は
「はあ?」
と生返事。
悪戯であることは想像に難くない。
僕は聞き耳を立てて様子をうかがっていたが、その後音沙汰が無い。
立ち去った様子もなければ、ドアを閉めた音もない。
両者とも声を発しない。
気色の悪い雰囲気に僕は己の出番を感じ、部屋に置いてある木刀を握り締めた。
案の定、と云うべきか、そこから身体が動かない。
そこでこれが夢であることに気づいた。
それは、夢の中の僕が見ている夢だった。
実存している僕は、夢の中で日記を書いていた。
こんな日記だ。
犬を飼いたい。
犬は可愛い。
犬の頭はできれば、2WAYがいい。
首輪は二つ必要だが、構わない。
餌が必要だ。
犬は何を食べるのか。
朝と夜に散歩する。
頭が二つあるので、心も二つ必要だ。
名前はロンドベル。
名前は一つ。
餌が必要だ。
何を食べるのか。
そんな日記だった。
僕は犬を飼ったことはない。二つの頭を持った犬には何処で出会えるのか、知らない。
今は、この身を起こさなくてはならない。
神経が破裂したような、激しい音がした。
夢と現実の狭間が無くなってしまったような気持ちで目が覚めた。
夢を見たのではなく、脳漿から夢を引き剥がされてしまったのか、大事な何かを忘れたままこの世界に送り返された気分だ。
真っ白な頭の中が、これまでの記録を頼りにこの世界を形成する。
量子力学的な目覚めが僕を曖昧にする。
この三日間の夢の観測的記録である。