彼女と出逢ったのはいつだったか、季節の匂いも思い出せない。

丁寧にボブカットに切り揃えた髪と目に眩しい青いTシャツだけ鮮明に覚えている。


そして大きな瞳の下には泣きぼくろがあった。



僕が
『きっと悲しい恋をするね。』

と言うと、

彼女は決まって
『それもこれで終わりよ。』

と、はにかんで言った。


僕はその時の彼女の顔が大好きで、何度も同じことを聞いた。



彼女は鼻唄を唄うのが好きだった。


喋っている時と食事をしている時以外はほとんど鼻唄に時間を費やしていたのではないだろうか。


髪をとかしている時に、

風呂に入っている時に、

着替えをしている時に。



題名もわからないその唄は、どんなミュージシャンの歌声よりも僕を穏やかにさせた。


でも、たまに僕が曲をリクエストしても彼女は受け付けてくれなかった。


それが僕は少し、悲しかった。



そして彼女は僕を二度とは愛そうとしてくれなかった。



僕はそれがたまらなく悲しかった。





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