レオナルドダビンチが、一つの芸術を完成させる為には、筋肉の収縮を理解する必要があった。
だから彼は、わたしの身体を解剖した。
頭蓋骨をのこぎりで挽いて、脳みその皺の数を数えた。
胸から下腹部を切り裂き、内臓の温もりを確認した。
上腕二頭筋と下腿三頭筋で筋肉の弾力を改めた。
性器を二つに割り、仔細を吟味した。
レオナルドの手はわたしの血で紅く染まっている。
戦場を彩る、鮮烈な紅だ。
やがて、切り裂かれたわたしの身体をレオナルドは縫合し始めた。
彼の額に浮かぶ汗は木漏れ日に濡れ、官能的であった。
不能になったはずのわたしの性器に血潮が滲む。
時間をかけた縫合が終わると、わたしの身体をゆっくりと抱きかかえた。
わたしは、ぼんやりとする意識の中で、彼のたくましい腕の中に甘える。
「気分はどうだい?」
わたしはゆっくりうなずいた。
「ところで、聞きたいことがある。」
わたしは彼の言葉を待った。
「君の心はどこにある?」
わたしは両の手の平で、彼の、芸術家にしてはふさわしくない、ごつごつとした手を包んだ。
薄れゆく意識の中に、木漏れ日がとても眩しい。
何か言葉を遺そうと思ったけど、少し眠りたい。
その後、レオナルドは一枚の絵を完成させた。
彼は結局、心がどこにあるかわからないままだったが、
ついには心を作り出すことに成功したのだ。
容れ物を失ったわたしの心は、あの木漏れ日の中で彼の汗に濡れ、
彼の名声の中で健やかに過ごした。