レオナルドダビンチが、一つの芸術を完成させる為には、筋肉の収縮を理解する必要があった。


だから彼は、わたしの身体を解剖した。


頭蓋骨をのこぎりで挽いて、脳みその皺の数を数えた。


胸から下腹部を切り裂き、内臓の温もりを確認した。


上腕二頭筋と下腿三頭筋で筋肉の弾力を改めた。


性器を二つに割り、仔細を吟味した。


レオナルドの手はわたしの血で紅く染まっている。


戦場を彩る、鮮烈な紅だ。



やがて、切り裂かれたわたしの身体をレオナルドは縫合し始めた。


彼の額に浮かぶ汗は木漏れ日に濡れ、官能的であった。


不能になったはずのわたしの性器に血潮が滲む。



時間をかけた縫合が終わると、わたしの身体をゆっくりと抱きかかえた。


わたしは、ぼんやりとする意識の中で、彼のたくましい腕の中に甘える。



「気分はどうだい?」


わたしはゆっくりうなずいた。



「ところで、聞きたいことがある。」


わたしは彼の言葉を待った。



「君の心はどこにある?」



わたしは両の手の平で、彼の、芸術家にしてはふさわしくない、ごつごつとした手を包んだ。



薄れゆく意識の中に、木漏れ日がとても眩しい。


何か言葉を遺そうと思ったけど、少し眠りたい。



その後、レオナルドは一枚の絵を完成させた。


彼は結局、心がどこにあるかわからないままだったが、
ついには心を作り出すことに成功したのだ。


容れ物を失ったわたしの心は、あの木漏れ日の中で彼の汗に濡れ、
彼の名声の中で健やかに過ごした。







次回予告。




ひょんなことから読者モデルとして生きることになった僕は、キムタクばりの型破りな方法で一躍トップモデラーに。


四年に一回、地下闘技場で行われる東京ガールズコレクションに出場するため、実話ナックルズ経由でオーディションに参加する。


僕は「生肉を頬張る泉ピン子」を披露し、オーディションを通過した。


しかし、全国からトップモデラーが集まる東京ガールズコレクションは生き馬の目を抜く恐ろしい世界だった。


全員が手に職を持ち、なにかしらの資格を習得していた。


県立高校普通科の出身である僕にはおよそ勝ち目はなく、初日は行きつけの漫画喫茶で姫ちゃんのリボンを読みながら夜を明かした。


このまま始発で田舎に帰ろうと、ネットにモデラー達の悪口を書き並べていた時、生き別れた血の繋がりのない妹の声が脳裏をよぎる。


「あいつらの靴、隠しちゃえ。」


僕は目の覚める思いでした。


こんなにも晴れ渡る脳髄、LSDとダフトパンクがばっちりキマった時以来です。


早速、築地でアナゴ丼で食欲を満たし、東京タワーの蝋人形館で記念写真を撮って、お茶の水で天国への階段を弾いて、ブックオフに姫ちゃんのリボンを全巻売り払った資金で再び地下闘技場へ向かいました。




未だベールに包まれた森ガールの最新ファッションとは


地下闘技場の横にひっそりとたたずむセレクトショップまんだらけの今年イチオシのアイテムとは


果たして僕は天国への階段をギターソロまで弾き切ることができたのか


そして成長いちじるしい妹に葛藤を憶える僕は、眼鏡と競泳水着を買い与えることができるのか



全てはこの東京ガールズコレクションで明らかになる。


次回、
「黄門様、歩き疲れて『抱っこしてちょ』と愚図る」


お楽しみに。






僕は夜に産まれたから、
僕の人生には夜が一つ多い。


僕は冬に産まれたから、
僕の人生は少しばかり寡黙だ。


僕が産まれたとき、
世界は眩しく、雄弁だった。


僕より少しあとに産まれた君は、
僕より夜を知らないし、
僕ほど寡黙というわけでもない。


だけど僕が君を愛した瞬間から、
君の人生には、僕より愛が一つ多い。


君が産まれた夜に、僕の秘密がまた一つ増えた。