前編中編後編の続きです。

 

第4 学習全体を通じて

1 マネージメントオプションの活用法

マネージメントオプションでは、週に1回、学習進捗の管理と個別指導を行います。マネージメントオプションの活用法は人によって様々だと思いますが、最大の利点は、「週に一度、軌道修正の機会がある」ということだと思います。

 

マネージメントオプションを受講するとしないとにかかわらず、「勉強は99%が自学自習」です。マネージメントオプションの時間は週に1回1時間であり、残りの6日と23時間は自学自習の時間です。したがって、合否を左右するのは、端的に「自学自習の質と量」に他なりません。

しかしながら、司法試験・予備試験は文系最難関の試験であり、法律の学習それ自体も非常に難易度の高いものです。また、司法試験・予備試験の天王山である論文は、短答(マークシート)と異なり、他者(採点官)に評価されてナンボの世界です。そのため、勉強の方向性が正しいか否かを自分自身で評価するのはとても難しいものです。

これに対して、マネージメントオプションを受講すれば、週に1回、個別指導の場において、講師が、課題の添削・講評は当然のこと、汎用性のある物事の考え方・答案の書き方から、普段講義を聞く際に意識すべきことまで、「自学自習のやり方」をお伝えします。これにより、勉強の方向性が正しいか否かについて毎週検証しながら、合格まで最短距離で進んで行くことが可能になります。

 

マネージメントオプションを受講されている方は、単に「この問題の論点は何か」「判例の立場は何説か」といったことに終始するのではなく(そもそも、こういったことは講義を聞けばわかることであり、わざわざマネージメントオプションの場で学ぶことではありません。)、上記のような「自学自習のやり方」を講師から盗むようにしましょう。「この1時間を次の1週間に活かす」というイメージです。

 

2 「総合講義1問1答」の活用法

総合講義1問1答」は、「英単語帳」をイメージしてください。

 

英語は「単語に始まり単語に終わる」とよく言われます。そもそも英単語を知らなければ、英語ができるようになるはずがありません。法律の学習も同じです。民法177条の「第三者」の意義を知らない人が合格することはあり得ません。

しかし、英単語だけ知っていれば英語ができるようになるかというと、当然そんなことはありません。同時に文法や発音等を学び、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの4技能の訓練を積んで、初めて英語ができるようになります。法律の学習も同じです。知識の暗記が必要になるのは当然ですが、それだけではなく、実際の事案で当該知識はどのように活用されるのか、当該事例はどのように処理されるのかといったことを学び、実践することで、初めて法律ができるようになります。

つまり、インプットとアウトプットは、「車の両輪」なのです。

 

さて、ここで高校受験や大学受験を思い出してください。皆さんが英語を勉強するとき、英単語はどのように覚えたでしょうか。おそらく、ターゲット1900やDUOといった「英単語帳」を使ったことでしょう。

では、「英単語帳」をどのように使っていたでしょうか。これもおそらく、「1週間毎日8時間机に向かって英単語帳を黙々と読んだ」という人は少なく、多くの方は、通学時間や授業の合間のスキマ時間等を活用していたのではないかと思います。逆に、机に向かって長時間の勉強時間が確保できるときは、他の勉強、例えば英文法の問題を解いたり、長文読解の時間に充てたりしていたのではないでしょうか。

また、「英単語帳は1周だけして後は本棚で眠っていた」という人もいないのではないでしょうか。英単語帳は、買ったその日から受験当日まで、カバンの中に入っていたはずです。毎日毎日、糊付けがはがれて手垢でボロボロになるまで使い込んだことと思います。

 

「総合講義1問1答」は、正にこの「英単語帳」です。車の片輪として欠くことのできない知識を、スキマ時間を活用して、毎日少しずつでも暗記をしていく、それこそが「総合講義1問1答」の活用法です。

 

3 論証集の「使い方」の活用法

論証集の「使い方」も、「総合講義1問1答」に近いところがあります。「総合講義1問1答」が「英単語帳」なら、論証集の「使い方」は「熟語帳」、「例文集」あるいは「数学の公式集」といったところでしょうか。そのため、基本的には「総合講義1問1答」で述べたところが妥当します。

 

ただし、論証集の「使い方」については、合格者に共通する特徴的な活用法があるので、紹介します。それは、「音声ダウンロードをして、音楽プレイヤーに入れて繰り返し聞きまくる」というものです。

皆さんにも好きな音楽があると思います。さて、好きな音楽の歌詞とメロディー、覚えていますか?当然覚えていますよね。では、何故覚えているのでしょうか?楽譜や歌詞カードとにらめっこをして覚えたのでしょうか?違いますよね。「何度も聞いたから自然と覚えていた」ですよね。これこそが、暗記の最大のポイントです。つまり、「同じことに何度も繰り返し触れる」ということです。

上記の活用法は、正にこの理に適った理想的な活用法です。通勤・通学時間や入浴中、就寝前などのスキマ時間を活用して、耳から論証を入れるのです(合格者の中には、そのまま寝てしまって夢の中で睡眠学習をしたり、1チャプターあたり50回以上聞いたりした強者もいるようです。)。

この方法は、多くの合格者が効果的だったと口を揃える活用法ですから、是非参考にしてみてください。

 

なお、よく「論証集はどこまで覚えれば良いのか」という質問をお受けしますが、基本的には、一言一句、「てにをは」や「、。」の位置まで覚える必要はなく(何周もした結果として覚えてしまうということはありますが。)、「論理の流れ」を押さえた上で、「キーワード」を暗記すれば充分です。

一般論として、他者の言葉をそのまま暗記するよりも、自分で理解して紡いだ言葉の方が記憶に残りやすく、かつ忘れにくいといえるでしょう。そのため、論証を覚えるにあたっては、最低限外してはならない「キーワード」以外は、自分の言葉で言い換えていく方が良いといえます。実際に答案で書くときには、「キーワード」と「キーワード」の間を自分の言葉で「論理的に繋いでいく」というイメージです。

 

 

おしまい

前編中編の続きです。

 

第3 学習後期

1 短答まで

年内は論文を中心に据えてきましたが、年明けからは徐々に短答の割合を増やしていきます。イメージでいえば、年内は論文9:短答1だったものを、年明けから徐々に8:2、6:4、4:6…とシフトさせていき、短答直前の1〜2か月は1:9あるいは0:10にするという感じです。

 

短答の合格点は、例年160点〜170点です(令和2年度は156点まで下がるという例外がありましたが。)。短答は、法律基本科目7科目+一般教養科目(以下「一般教養」といいます。)の合計8科目ですから、単純に考えると、各科目20点で160点となり、最低限のラインには到達します。

しかし、上記のとおり、合格点が160点超の年もありますし、一般教養は出題範囲が広すぎて、一部の人(受験を終えたばかりの大学生等)を除き、確実に20点以上とれるとも言い切れません。そこで、法律科目は、各科目22点以上を目指すべきです。22点であれば7科目で154点、25点であれば175点ですから、ひとまず安全圏といえるでしょう。

 

⑴ 短答

年内に短答過去問を1周させているはずですので、年明けからは2週目に入ります。ここからは「解ける」ようになることを追及していきます。

1週目では読み流していた解説や、飛ばしていた解説講義も、ここからはしっかり確認していきましょう。ただし、解説講義については、解説を読んでも理解できなかった箇所のみでも構いません。単純に条文や判旨の○×だけを聞くような問題等、解説を読めばそれで充分理解できるものもあるからです。

 

短答は、過去問を「100%」にすれば確実に受かります(実際にはその前に受かります。)。ここでいう「100%」というのは、「全問全肢について、正誤だけではなく、その理由まで含めて解答できるようなること」を指します(なお,これは「解説の丸暗記」を意味しません。解説にとらわれることなく,自分なりの言葉で説明できれば十分です。)。

具体的には、次のように進めていくと良いでしょう。まず、全問全肢を検討し、上記の意味で正解できた肢には○、正誤判定は合っていたが理由が間違えていた、勘がたまたま当たったといった肢(上記の意味で正解できたわけではない肢)には△、正誤判定自体を間違えた肢には×をつけます。このやり方で全体を2周すると、「○○」「×○」「×△」「××」といった感じでマークが付きます。そうしたら、3週目以降は、「○○」にならなかった肢のみをやっていきます。要するに、2回連続で○が付くまで回し続けるということです。

また、このやり方である程度体系別に回したら、今度は年度別に問いてみましょう。年度別の問題は、法務省のウェブサイトからダウンロードできます。年度別に解く際は、時間を図るとともに、各科目22点以上とることを目標にしましょう(なお、年度別に解く場合、法改正等により解答番号が変わっていたり、没問になっていたりする場合がありますので、注意が必要です。答え合わせの際には、多少面倒でも、最新の問題集の解答を確認してください。)。

 

時間的に余裕があれば、短答知識完成講座Ⅰでいわゆる「短答プロパー知識」のインプットをするのも良いでしょう。ただし、優先すべきは過去問と論文知識で解ける問題です。感覚値でいえば、上三法の過去問のうち、過去問と論文知識で解ける問題は7〜8割程度あります。「短答プロパー知識」は「上乗せ」というイメージです。過去問や論文知識があやふやなのであれば、同講座を受講するよりも、過去問や総合講義,重問の復習に重点を置くべきです。

 

なお、一般教養科目対策講座については、「足を引っ張らないようにすること」が目的です。上記のとおり、一般教養は出題範囲が広すぎて、得点源にすることは困難です。したがって、実際に過去問を解いてみて、20〜30点も取れるのであれば、受講する必要はないでしょう(それよりも法律科目をやるべきです。)。20点を下回ってしまうという人のみ、「最低限守る」という意識で、直前期に受講すれば充分と考えられます。

 

⑵ 論文講座

併せて、重問、予備過去の2周目以降にも入りましょう。ここでも「解ける」ようになることを追及していきます。逆に、「もう解けるようになったな」という問題については繰り返す必要はありません。何度やっても間違える問題、苦手な問題を潰すことが大事です。この試験は、得意なことを伸ばすよりも、苦手なことを無くす方が早く受かります。

 

上記2講座がある程度進んだら、旧司法試験論文過去問解析講座(以下「旧司過去」といいます。)で、「基礎」と「応用」の峻別や、本試験特有の「応用」「ひねり」への対処を更に深めていきましょう。この講座についても、基本的には答案構成で構いません(なお、添削を受けたいという方については、旧司法試験論文過去問セレクト答練をご利用ください。また、マネージメントオプションでは、旧司過去についても添削指導を行います。)。ただし、これも上記2講座の方が優先です。時間がない方は、短答後に回す(あるいはやらない)のでも構いません。

 

また、このあたりで選択科目対策講座にも着手しておきましょう。この時期に至れば、自分なりの勉強の仕方はある程度確立しているでしょうから、学習初期の頃よりはスピード感をもって勉強を進めていくことが可能なはずです。

選択科目についても、まずは各科目の総合講義で必要な知識のインプットを行いましょう。その際注意すべきことは、既に述べたところと同じです。次に、インプットが終わったら、過去問解析講座で問題演習を積みます。ただし、短答までの残り時間で全ての問題を検討し終えることはやや現実的ではありません。そこで、最低限、直近3~5年分の問題を検討し、どのような出題がなされているのかを確認しておきましょう(ここでも「敵を知る」ということが大事です。)。残りの問題は、短答後に片付けます。

 

2 論文まで

短答が終わったら、その日のうちに各予備校が出している解答速報で自己採点を行いましょう。合格推定点(160点以上)が取れていれば、翌日からすぐに論文対策に移行します。

 

ここでも中心に添えるべきは、重問、予備過去及び旧司過去です。マスターするまで何度も何度も繰り返しましょう。

また、実務基礎がどうしても手薄になりがちですから、法曹倫理や1周目で重点的に学ばなかった分野も含めて、実務基礎の復習をしておきましょう。選択科目についても同様です。

 

最後に、旧司法試験・予備試験型答練及び法律実務基礎科目答練で、初見の問題に対する対応力を磨きましょう。答練の最大の目的は、「本番のシミュレーション」です。これまで培った実力が初見の問題でも発揮できるか、未知の問題・学習が追い付いていない問題が出題されたときにどのように「逃げる」か、点数を全体として最大化するには現場で何を取捨選択すれば良いかといったことを含めて、「試験当日の頭の使い方」を学んでください。

 

この時期は、できれば毎日、少なくとも2日に1通は答案をフルスケールで書くようにしましょう。ここまできたら物を言うのは「気合い」です。死ぬ気で勉強する以外ありません。

 

なお、短答が残念な結果になってしまった人も、論文までは短答に受かったつもりで(論文を受けるつもりで)勉強することをお勧めします。上記のとおり、短答合格者は論文まで死ぬ気で勉強しますが、その全員が論文に受かるわけではなく(短答合格者の論文合格率は例年20%程度です。)、この死ぬ気で勉強した人達のほとんどが翌年のライバルになるからです。

 

3 口述まで

論文の合格発表までは時間が空く上、論文で燃え尽きており、一番勉強に力が入らないのがこの時期です。しかし、せっかく論文に合格したのに、口述で落ちてしまってはあまりにもったいないですから、論文の合格発表までの間も、多少の遊び・息抜きはしつつ、最低限の勉強は継続するようにしましょう。

 

口述では、試験官からの問に対して即座に口頭で解答するという「反射神経」が求められますから、基本的な定義や要件等については、瞬時に出てくるようにしておく必要があります。また、民事で問われるのは民法・民事訴訟法・民事実務の知識、刑事で問われるのは刑法・刑事訴訟法・刑事実務の知識です。そのため、総合講義や実務基礎の復習をしておくのが効果的です。

また、インターネットで「予備試験 口述 再現」などで検索すると、合格者が口述の様子を再現してくれたブログ記事などが出てきます。こういったものを読んで、口述のイメージをもっておくことも有用です。

仮に論文が残念な結果になってしまったとしても、ここで勉強したことは必ず来年にも活きてきますから、やって損になることはありません。

 

論文に合格していたら、各予備校が開催する口述模試に申し込みましょう。また、合格者の中には、受験生同士で口述の問題を出し合ったりする人もいるようです。

 

口述で最も大事なことは、「黙らない」ことです。口述は会話のキャッチボールですから、分からないことが聞かれても、何か発言することです。そうすれば、試験官は、何とか正解を引き出そうと考えて、ヒントをくれる、条文の参照を許可してくれるなど、色々と助け舟を出してくれます。しかし、沈黙してしまっている人には、助け舟を出すことができません。とにかく何か発言をして、ボールを試験官に渡してしまうことが重要です。

 

 

おまけへ続く

前編の続きになります。

 

第2 学習中期

基礎3講座を終えた科目から、短答式試験(以下「短答」といいます。)の過去問に着手します。民法の重問まで終えたら短答過去問解析講座の民法、商法の重問まで終えたら短答知識完成講座Ⅱの商法、という感じです。

また、民法と民事訴訟法の重問まで終えたら法律実務基礎科目対策講座の民事、刑法と刑事訴訟法の重問まで終えたら同講座の刑事の学習を始めます(なお、同講座に含まれている「法曹倫理」については、この時点では聞く必要はありません。)。

さらに、重問の終わりが見えてきたところで(一つの目安として、重問の憲法が終わったところで)、予備試験論文過去問解析講座(以下「予備過去」といいます。)を始めます。


ここまでを表にすると、以下のような感じになります。

 

 

このように進めていくと、刑事系の基礎3講座を進めている間も常に民事系に、公法系の基礎3講座を進めている間も常に刑事系に触れていることになりますので、前にやった科目のことを忘れにくくなるというメリットがあります。

その代わり、最大で「5講座が同時並行する時期」が出てきますので、かなり大変ではあります。しかし、この一番大変な時期を乗り越えてしまえば、年明けから一気に加速していくことが可能になります。ここでの頑張りこそが合否を左右すると思って、なんとか乗り切っていただきたいところです。

 

とはいうものの、やはりその分量の多さに恐れおののいている方が多いでしょう。そこで、できる限り負担を軽減しながら効率的に進めていくための方法について説明します。

 

1 短答過去問

短答過去問については、年内に全問全肢を1週しておくべきです(重問行政法の終わりが年内〜翌年1月頃になる場合でも、それ以外の6科目については年内に1週しておきましょう。)。短答過去問は、司法試験のサンプル問題・プレテストまで含めると、約2500問あります。これを残り日数で割れば、1日あたりの問題数が出ます。当然のことながら、始めるのが早ければ1日あたりの問題数は減って楽になりますし、遅ければ増えて大変になります。

 

注意すべきことは、ここでも問題を「解ける」必要はないということです。もちろん、この段階に至ればある程度学習が進んでいるでしょうから、実際に解ける問題もあると思いますし、解けるに越したことはありません。

しかし、この段階で短答過去問を始める主たる目的は、年明けから短答対策を本格化させるにあたっての「下準備」にあります。例えば、過去問のレベル感(「全く手も足も出ない、やばい」なのか、「あ、なんだ意外といけるじゃん」なのか)、同じ知識が何度も繰り返し問われていること、これまで勉強してきた「論文知識」が短答でも出題されるということ、短答でしか問われない細かい「短答プロパー知識」があるということ等を体感することが目的です。一言で言えば、「敵を知る」ということです。

 

したがって、短答過去問の1週目は、時間をかけて正解を出す必要もありませんし、理解できるまで解説を熟読したり解説講義を聞いたりする必要もありません。「解く」というよりも、問題文と解説を「読む」というイメージです。

時間にすれば、1問あたり5分〜10分程度で充分ですし、それ以上時間をかけるべきでもありません(他にもやらなければならないことがたくさんある中で、短答に時間をかけすぎていてはカリキュラム自体を消化しきれなくなります。)。

通勤通学時間、昼休み、就寝前など、スキマ時間を活用して毎日少しずつでも進めておくことで、年明けに向けてかなりのアドバンテージを確保することができます。

 

※この段階では、まだ短答知識完成講座Ⅰを受講する必要はありません。

 

2 法律実務基礎科目

予備試験の合格を確実にする上で、法律実務基礎科目(以下「実務基礎」といいます。)は極めて重要な位置を占めており、必ず得点源にすべき科目です。その理由としては、以下の5点が挙げられます。

 

①民事実務基礎科目(以下「民事実務」といいます。)は民法と民事訴訟法の、刑事実務基礎科目(以下「刑事実務」といいます。)は刑法と刑事訴訟法の合いの子で、新たに学習すべき事項は多くない(民事実務は0.5科目、刑事実務は0.3科目というイメージ)。

②民事実務の学習が進むと民法と民事訴訟法の、刑事実務の学習が進むと刑法と刑事訴訟法の理解が促進される。また、実務基礎で学習する事項は短答でも出題されるし、口述試験(以下「口述」といいます。)でも問われる。当然、論文式試験(以下「論文」といいます。)にも実務基礎という科目がある。つまり、実務基礎は、「一石何鳥」にもなる。

③論文で出題される問題は単純(簡単)な問題が多い。例えば、民事実務では、「請求の趣旨を記載しなさい」、「請求を理由づける事実として必要十分な最小限のものを主張する場合、次の各事実の主張が必要であり、かつ、これで足りるか」、「弁護士Pにおいて準備書面に記載すべき内容を、答案用紙1頁程度の分量で記載しなさい」といった一問一答的な出題がほとんどであり、法律基本7科目のように、論点が複雑に絡み合った問題や、判例の射程を問うような応用的な問題は出題されない。

④法律基本7科目と同配点(1科目50点)にもかかわらず、解答想定時間が1科目あたり90分(法律基本科目は1科目あたり70分)と長く、時間的に余裕がある。

⑤上記①乃至④にもかかわらず、実務基礎は軽視されがちで(又は手が回らず)、充分な準備ができている受験生は少ない。つまり、簡単に他の受験生と差をつけることができる。

 

実務基礎のうち、特に大事なのは、民事実務については要件事実、刑事実務については勾留・保釈、公判前整理手続(特に、類型証拠開示)、証拠法(特に、伝聞・証人尋問)です。したがって、1週目では、これらの分野を集中的に勉強するのが良いでしょう。

 

3 予備過去

「この段階でもう過去問?直前期までとっておくべきでは?」という疑問もあるかもしれません。しかし、ここでも大事なことは、早めに「敵を知る」ということです。これまでの自分の勉強のやり方で過去問に対応できるのか、できないとしたらそれは何故か、何をどう修正すれば良いのかといったことは、実際の過去問を解かなければわかりません。「本試験の1か月前に初めて過去問を解いてみたら、今までの勉強が完全に間違えていたことに気づいた」というのでは、目も当てられません。そのため、一見早いように感じるかもしれませんが、重問まで終わった直後に過去問を解くのが「王道」のやり方なのです。

 

予備過去は、できれば実際に時間を図って答案を書いてみるのが良いでしょう。どうしても時間を確保できない場合には答案構成でもやむを得ませんが、その場合でも、例えば直近3年度分については実際に答案を書いてみることをお勧めします(なお、添削を受けたいという方については、予備試験論文過去問セレクト答練をご利用ください。また、マネージメントオプションでは、予備過去についても添削指導を行います。)。

 

予備過去を解くにあたって特に意識すべきことは、重問までで培った「基礎」と「応用」の峻別ができていたか、「基礎」については重問までで学んだことをそのまま答案上に表現できたか、「応用」については「守る」ことができていたか、という点です。

論文では、「基礎」と「応用」」が出題されます。そして、これは既に過去の蓄積から答えが出ているのですが、論文の合否を分けるのは、「応用」ではなく、「基礎」の出来です(「応用」は上位合格の要件にすぎません。)。したがって、問題にアプローチする際は、目の前の問題が「基礎」なのか「応用」なのかを判断した上で、「基礎」であると判断したらいわゆる「論証」を貼り付けてあてはめを行い、「応用」であると判断したら「守り」の答案を書く(最低限、条文に問題文の事実を形式的にあてはめ、何か不都合があるのであれば、それを何らかの形で修正する等)というプロセスを踏む必要があります。

過去問から学ぶべきことは、「知識」ではなく(それは重問までですべきことです)、「汎用性ある物事の考え方」「勉強の方針」です。

 

 

後編へ続く