前編の続きになります。

 

第2 学習中期

基礎3講座を終えた科目から、短答式試験(以下「短答」といいます。)の過去問に着手します。民法の重問まで終えたら短答過去問解析講座の民法、商法の重問まで終えたら短答知識完成講座Ⅱの商法、という感じです。

また、民法と民事訴訟法の重問まで終えたら法律実務基礎科目対策講座の民事、刑法と刑事訴訟法の重問まで終えたら同講座の刑事の学習を始めます(なお、同講座に含まれている「法曹倫理」については、この時点では聞く必要はありません。)。

さらに、重問の終わりが見えてきたところで(一つの目安として、重問の憲法が終わったところで)、予備試験論文過去問解析講座(以下「予備過去」といいます。)を始めます。


ここまでを表にすると、以下のような感じになります。

 

 

このように進めていくと、刑事系の基礎3講座を進めている間も常に民事系に、公法系の基礎3講座を進めている間も常に刑事系に触れていることになりますので、前にやった科目のことを忘れにくくなるというメリットがあります。

その代わり、最大で「5講座が同時並行する時期」が出てきますので、かなり大変ではあります。しかし、この一番大変な時期を乗り越えてしまえば、年明けから一気に加速していくことが可能になります。ここでの頑張りこそが合否を左右すると思って、なんとか乗り切っていただきたいところです。

 

とはいうものの、やはりその分量の多さに恐れおののいている方が多いでしょう。そこで、できる限り負担を軽減しながら効率的に進めていくための方法について説明します。

 

1 短答過去問

短答過去問については、年内に全問全肢を1週しておくべきです(重問行政法の終わりが年内〜翌年1月頃になる場合でも、それ以外の6科目については年内に1週しておきましょう。)。短答過去問は、司法試験のサンプル問題・プレテストまで含めると、約2500問あります。これを残り日数で割れば、1日あたりの問題数が出ます。当然のことながら、始めるのが早ければ1日あたりの問題数は減って楽になりますし、遅ければ増えて大変になります。

 

注意すべきことは、ここでも問題を「解ける」必要はないということです。もちろん、この段階に至ればある程度学習が進んでいるでしょうから、実際に解ける問題もあると思いますし、解けるに越したことはありません。

しかし、この段階で短答過去問を始める主たる目的は、年明けから短答対策を本格化させるにあたっての「下準備」にあります。例えば、過去問のレベル感(「全く手も足も出ない、やばい」なのか、「あ、なんだ意外といけるじゃん」なのか)、同じ知識が何度も繰り返し問われていること、これまで勉強してきた「論文知識」が短答でも出題されるということ、短答でしか問われない細かい「短答プロパー知識」があるということ等を体感することが目的です。一言で言えば、「敵を知る」ということです。

 

したがって、短答過去問の1週目は、時間をかけて正解を出す必要もありませんし、理解できるまで解説を熟読したり解説講義を聞いたりする必要もありません。「解く」というよりも、問題文と解説を「読む」というイメージです。

時間にすれば、1問あたり5分〜10分程度で充分ですし、それ以上時間をかけるべきでもありません(他にもやらなければならないことがたくさんある中で、短答に時間をかけすぎていてはカリキュラム自体を消化しきれなくなります。)。

通勤通学時間、昼休み、就寝前など、スキマ時間を活用して毎日少しずつでも進めておくことで、年明けに向けてかなりのアドバンテージを確保することができます。

 

※この段階では、まだ短答知識完成講座Ⅰを受講する必要はありません。

 

2 法律実務基礎科目

予備試験の合格を確実にする上で、法律実務基礎科目(以下「実務基礎」といいます。)は極めて重要な位置を占めており、必ず得点源にすべき科目です。その理由としては、以下の5点が挙げられます。

 

①民事実務基礎科目(以下「民事実務」といいます。)は民法と民事訴訟法の、刑事実務基礎科目(以下「刑事実務」といいます。)は刑法と刑事訴訟法の合いの子で、新たに学習すべき事項は多くない(民事実務は0.5科目、刑事実務は0.3科目というイメージ)。

②民事実務の学習が進むと民法と民事訴訟法の、刑事実務の学習が進むと刑法と刑事訴訟法の理解が促進される。また、実務基礎で学習する事項は短答でも出題されるし、口述試験(以下「口述」といいます。)でも問われる。当然、論文式試験(以下「論文」といいます。)にも実務基礎という科目がある。つまり、実務基礎は、「一石何鳥」にもなる。

③論文で出題される問題は単純(簡単)な問題が多い。例えば、民事実務では、「請求の趣旨を記載しなさい」、「請求を理由づける事実として必要十分な最小限のものを主張する場合、次の各事実の主張が必要であり、かつ、これで足りるか」、「弁護士Pにおいて準備書面に記載すべき内容を、答案用紙1頁程度の分量で記載しなさい」といった一問一答的な出題がほとんどであり、法律基本7科目のように、論点が複雑に絡み合った問題や、判例の射程を問うような応用的な問題は出題されない。

④法律基本7科目と同配点(1科目50点)にもかかわらず、解答想定時間が1科目あたり90分(法律基本科目は1科目あたり70分)と長く、時間的に余裕がある。

⑤上記①乃至④にもかかわらず、実務基礎は軽視されがちで(又は手が回らず)、充分な準備ができている受験生は少ない。つまり、簡単に他の受験生と差をつけることができる。

 

実務基礎のうち、特に大事なのは、民事実務については要件事実、刑事実務については勾留・保釈、公判前整理手続(特に、類型証拠開示)、証拠法(特に、伝聞・証人尋問)です。したがって、1週目では、これらの分野を集中的に勉強するのが良いでしょう。

 

3 予備過去

「この段階でもう過去問?直前期までとっておくべきでは?」という疑問もあるかもしれません。しかし、ここでも大事なことは、早めに「敵を知る」ということです。これまでの自分の勉強のやり方で過去問に対応できるのか、できないとしたらそれは何故か、何をどう修正すれば良いのかといったことは、実際の過去問を解かなければわかりません。「本試験の1か月前に初めて過去問を解いてみたら、今までの勉強が完全に間違えていたことに気づいた」というのでは、目も当てられません。そのため、一見早いように感じるかもしれませんが、重問まで終わった直後に過去問を解くのが「王道」のやり方なのです。

 

予備過去は、できれば実際に時間を図って答案を書いてみるのが良いでしょう。どうしても時間を確保できない場合には答案構成でもやむを得ませんが、その場合でも、例えば直近3年度分については実際に答案を書いてみることをお勧めします(なお、添削を受けたいという方については、予備試験論文過去問セレクト答練をご利用ください。また、マネージメントオプションでは、予備過去についても添削指導を行います。)。

 

予備過去を解くにあたって特に意識すべきことは、重問までで培った「基礎」と「応用」の峻別ができていたか、「基礎」については重問までで学んだことをそのまま答案上に表現できたか、「応用」については「守る」ことができていたか、という点です。

論文では、「基礎」と「応用」」が出題されます。そして、これは既に過去の蓄積から答えが出ているのですが、論文の合否を分けるのは、「応用」ではなく、「基礎」の出来です(「応用」は上位合格の要件にすぎません。)。したがって、問題にアプローチする際は、目の前の問題が「基礎」なのか「応用」なのかを判断した上で、「基礎」であると判断したらいわゆる「論証」を貼り付けてあてはめを行い、「応用」であると判断したら「守り」の答案を書く(最低限、条文に問題文の事実を形式的にあてはめ、何か不都合があるのであれば、それを何らかの形で修正する等)というプロセスを踏む必要があります。

過去問から学ぶべきことは、「知識」ではなく(それは重問までですべきことです)、「汎用性ある物事の考え方」「勉強の方針」です。

 

 

後編へ続く