何か谷山さんのツイート(↓)がバズってたんで、書きます。

単なるメモ書きです。

 

第1 訴訟類型

 Xは、原級留置処分・退学処分(以下「本件処分」という)の取消訴訟を提起している

 →取消訴訟の訴訟物は処分の違法性一般であり、本件処分が違法と言えればXの「勝訴」となる(違法事由は、事実誤認でも、信義則違反でも、権利濫用でも、裁量権の逸脱・濫用でも、理由付記違反でも、何でも良い)

 

第2 制約

1 「法令や処分の合憲性を検討するに当たっては,まず,問題になっている法令や処分が,どのような権利を,どのように制約しているのかを確定することが必要である」(平成22年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法))

2 本件処分は,「その内容それ自体においてXに信仰上の教義に反する行動を命じたものではなく,その意味では,Xの信教の自由を直接的に制約するものとはいえないが,しかし,Xがそれらによる重大な不利益を避けるためには剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせられるという性質を有するものであった」(最判平8.3.8【百選Ⅰ41】)

 →「剣道実技に参加しない自由」に対する「間接的・付随的制約」になる

 

第3 憲法上の権利の保障

1 「次に,制約されている権利は憲法上保障されているのか否かを,確定する必要がある。この二つが確定されて初めて,人権(憲法)問題が存在することになるのであり,ここから,当該制約の合憲性の検討が始まる」(平成22年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法))

2 「信教の自由」(20条1項前段)は、①内心における信仰の自由、②宗教的行為の自由、③宗教的結社の自由を保障しており、それぞれに積極的自由消極的自由がある

 →「剣道実技に参加しない自由」は、②消極的宗教的行為の自由として保障される

 

第4 判断枠組み

1 審査基準は,①権利の重要性,②権利制約の態様・程度,③裁判所の制度上の能力等の諸要素を総合的に勘案して決する(曽我部真裕ほか・憲法論点教室[第2版]4頁乃至7頁参照)

2 ①信教の自由が重要な権利であることは言うまでもないが、②上記のとおり「間接的・付随的制約」であるし、③「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は,校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであ」る(最判平8.3.8【百選Ⅰ41】)

3 「裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては,校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し,その結果と当該処分とを比較してその適否,軽重等を論ずべきものではなく,校長の裁量権の行使としての処分が,全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り,違法であると判断すべきものである」(最判平8.3.8【百選Ⅰ41】)

 →「重視すべきでない考慮要素を重視」したか(他事考慮)「考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いて」いるか(評価不当)「当然考慮すべき事項を十分考慮して」いるか(考慮不尽)(呉市公立学校施設使用不許可事件(最判平18.2.7【百選Ⅰ73】))

4 「しかし,退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であり,学校教育法施行規則13条3項も4個の退学事由を限定的に定めていることからすると,当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり,その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものである……。また,……その学生に与える不利益の大きさに照らして,原級留置処分の決定に当たっても,同様に慎重な配慮が要求されるものというべきである」(最判平8.3.8【百選Ⅰ41】)

 

第5 あてはめ(全て最判平8.3.8【百選Ⅰ41】)

1 「高等専門学校においては、剣道実技の履修が必須のものとまではいい難く、体育科目による教育目的の達成は、他の体育種目の履修などの代替的方法によってこれを行うことも性質上可能というべきである」

2 「Xが剣道実技への参加を拒否する理由は、被上告人の信仰の核心部分と密接に関連する真しなものであった」

 「Xは,信仰上の理由による剣道実技の履修拒否の結果として,他の科目では成績優秀であったにもかかわらず,原級留置,退学という事態に追い込まれたものというべきであり,その不利益が極めて大きい」

 「本件各処分が右のとおりの性質を有するものであった以上、Yは、前記裁量権の行使に当たり、当然そのことに相応の考慮を払う必要があったというべきである」

 「Xが、自らの自由意思により,必修である体育科目の種目として剣道……を採用している学校を選択したことを理由に、先にみたような著しい不利益を被上告人に与えることが当然に許容されることになるものでもない」

3 「本件各処分の前示の性質にかんがみれば、本件各処分に至るまでに何らかの代替措置を採ることの是非、その方法、態様等について十分に考慮するべきであったということができるが、本件においてそれがされていたとは到底いうことができない」

 「信仰上の理由に基づく格技の履修拒否に対して代替措置を採っている学校も現にあるというのであり、他の学生に不公平感を生じさせないような適切な方法、態様による代替措置を採ることは可能であると考えられる。また、履修拒否が信仰上の理由に基づくものかどうかは外形的事情の調査によって容易に明らかになるであろうし、信仰上の理由に仮託して履修拒否をしようという者が多数に上るとも考え難いところである。さらに、代替措置を採ることによって、D高専における教育秩序を維持することができないとか、学校全体の運営に看過することができない重大な支障を生ずるおそれがあったとは認められないとした原審の認定判断も是認することができる。そうすると、代替措置を採ることが実際上不可能であったということはできない」

 「信仰上の真しな理由から剣道実技に参加することができない学生に対し、代替措置として、例えば、他の体育実技の履修、レポートの提出等を求めた上で、その成果に応じた評価をすることが、その目的において宗教的意義を有し、特定の宗教を援助、助長、促進する効果を有するものということはできず、他の宗教者又は無宗教者に圧迫、干渉を加える効果があるともいえないのであって、およそ代替措置を採ることが、その方法、態様のいかんを問わず、憲法20条3項に違反するということができないことは明らかである。また、公立学校において、学生の信仰を調査せん索し、宗教を序列化して別段の取扱いをすることは許されないものであるが、学生が信仰を理由に剣道実技の履修を拒否する場合に、学校が、その理由の当否を判断するため、単なる怠学のための口実であるか、当事者の説明する宗教上の信条と履修拒否との合理的関連性が認められるかどうかを確認する程度の調査をすることが公教育の宗教的中立性に反するとはいえないものと解される」

4 「以上によれば、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、……原級留置処分をし、さらに、……退学処分をしたというYの措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない」

 

 

エホバの証人剣道受講拒否事件の判決原文はこちら→裁判所HP

今年もやります、司法試験過去問答練ゼミ

 

昨年度からの最大の変更点は、新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、通信(添削あり・なし)クラスのみの実施になることです(講義については、事前収録の解説講義を配信します。添削は、例年どおり、私が全て担当します。)。

これに伴い、第1クール、第2クールという概念を廃止し、全体で各科目について3年度分(合計21問)を扱うことになります(後述のとおり、事前講義で各科目1年度分を扱うので、これと合わせると4年度分(合計28問)になります。)。

 

通学クラスがないため、受講生の皆さんと直接お会いできないのは残念ですが。通信クラスのみになった利点を最大に活かし、受講生の皆さんの利便性を少しでも高めるべく、以下のように制度を変更しました。

 

1 思考方法を事前講義

各年度の問題の解説講義に先立ち、「各科目の思考フロー」という総論的な講義を実施するとともに、実際にその「思考フロー」に従って1年度分の問題を解いてみせます。これにより、正しい「思考方法」を事前に理解した上で初回から答案作成に挑めますので、貴重な添削の回数を無駄にすることがありません。

 

2 答案提出締切日を一律に設定

全ての問題について、答案提出締切日を2021年4月30日(金)に設定しています。つまり、配信日以降、答案提出締切日前であれば、いつ、どんな順番で答案を提出しても差し支えありません。通学クラスがある場合は、通学クラスに併せて答案提出締切日を設けていましたが、通信クラスのみであればその必要がないので、柔軟に対応させていただくことが可能になりました。

なので、例えば「民事系第1回を○月○日に提出する」と決めて、そこに向けて民事系の勉強をしていくというように、ご自身の勉強の進捗に併せてペースメーカーとして使っていただければと思います。

 

3 話したいことを全て盛り込んだ解説講義

通学クラスでは、時間制限を気にしながら講義をしなければならないので、本当は話したいこともやむなく省略せざるを得ない場合がありました。これに対して、通信クラスのみであれば、解説講義を事前収録するので、時間制限を気にせず、お伝えしたいことを全てお話しすることができます。その分、講義時間はやや長くなりますが、時間単価・情報単価でみれば極めてお得な講座になっていると思います。

 

例年どおり、ガイダンスとサンプル動画を公開しておりますので、こちらも併せてご覧ください。

 

サンプルテキストはこちら

 

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少し前の話になってしまいますが、標記講座がリリースされました。シリーズ累計800件以上を売り上げた大好評の講座の第2版です。

既に配信・教材発送も開始されていますので,ご購入いただければ,すぐにご受講いただけます。

→ご購入はこちら

 

民法のときとほぼ同内容ですが、よくお問い合わせをいただいている事項について説明させていただこうと思います。

 

Q1.

初版と第2版で何が変わったの?

A1.

全てです。パーセンテージでいうと、80~90%ぐらい変わっていると思います。

初版から第2版の主な変更点は、以下のとおりです。

①平成29年債権法及び平成30年相続法改正に完全対応(会社法について)

②掲載判例の全面的見直し

③論述例の全面的見直し

④ランク表(A~C)を掲載

 

Q2.

第2版の掲載判例数は?

A2.

会社法が44判例(初版は58判例)、刑事訴訟法が35判例(初版は57判例)です。

初版から減少していますが、その主な理由としては、重要判例をより深く解説できるように、論証例だけ覚えておけば足りるような単論点型の「浅い」判例や、論点が被る判例を省略する等して、重要判例の解説をより拡充した点にあります。

そのため、内容面については、10倍以上パワーアップしている自信があります。その証拠に、第2版の方が掲載判例数が減少していながら、頁数は大幅に増加しています。

 

Q3.

サンプル講義・サンプルテキスト見せろ!

A3.

数が多くなってしまいますので、こちらからご覧ください。