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Sofia Coppola1971年、アメリカ・ニューヨーク州生まれ。幼いころから、父である映画監督のフランシス・フォード・コッポラの作品に女優として出演。99年、『ヴァージン・スーサイズ』で長編監督デビュー、長編2作目の『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)ではアカデミー賞脚本賞を受賞、そして3作目の『マリー・アントワネット』(06年)では衣装デザイナーのミレーナ・カノネロがアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞。4作目となる『SOMEWHERE』が10年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。またルイ・ヴィトンでコラボレーションのバッグを発表するなど、ファッションの分野でも活躍している東京で出会い、別れるアメリカ人の男女を描いた『ロスト・イン・トランスレーション』が世界的に高く評価され、アカデミー賞脚本賞など数々の賞に輝いた映画監督、ソフィア・コッポラさん。待望の新作『SOMEWHERE』はその『ロスト・イン・トランスレーション』以来のオリジナル・ストーリーです「前作『マリー・アントワネット』の撮影後、しばらくパリに住んでいました。パリは美しくすてきな街ですが、ときどき、ふと故郷を恋しく思うことがありました。そんなとき、アメリカの文化やカリフォルニアの風景を懐かしく思い出して、書いたのがこの作品です。もしかしてアメリカに住んでいたら、この物語は生まれていなかったかもしれません。そういう意味ではいま、その瞬間にどこにいるのか。そういうことが私の作品には、大きな影響をおよぼしていると思います」

舞台となったのはセレブたちが多く滞在する、ハリウッドの伝説的ホテル、シャトー・マーモント。執筆には6カ月以上、かかりました「パリの家には書斎があったので、扉を完全に閉めきり、自分だけの空間をつくりあげて、集中して書いていました。お気に入りの音楽をかけて、イメージをふくらませる写真を壁にペタペタと貼りつけて……。とくに静かな夜中は気が散らないので、徹夜することも多かったです,arado rmt。いまは2人目の子どもが生まれて、そんなことも言っていられません。なので、周りで子どもが走り回っていても、ノートパソコンを開いたら、すぐに集中できるような術が身につきましたね(笑)」

親になったことで、大いに人生観が変わったというソフィアさん。この新作も破天荒なセレブ生活を送る俳優の父親ジョニーと多感な時期の少女クレオという父娘の物語です「セレブの父親と娘の話なので、私と父(映画監督のフランシス・フォード・コッポラ)の姿を重ね合わせる方も多いんです。でも、正直に言うと、私の子ども時代とはかなりかけ離れていますね。うちの両親は幸い離婚していませんし、母は家できちんと夕食を作って、私たちの帰りを待ってくれているような人でした。ふつうの家庭とそうは変わらないと思います。もちろん、私が書いていますので、クレオに私自身が投影されているところはあります。たとえば、彼女がジョニーとカジノに行く場面,pso2 rmt。あれは父が私を初めてカジノに連れて行ってくれたときに、いろいろ教えてくれたことがうれしくて、その思い出を盛りこみました。一方で、ジョニーにも当然、私のキャラクターが反映されています。いつも注目されている環境で子どもを持つこと、育てること。当時、私は最初の子どもを産んだばかりだったので、もし、私が彼のような映画スターだったら、どう対応するのかを想像しながら書きました」

また、クレオにはモデルもいるそう。友人であるセレブ女性の、同い年くらいのお嬢さんを参考にしたのだとか「あれぐらいの年ごろの女の子はすごく“ふつう”ということを意識するんでしょうね。クレオと同じようにホテル住まいであるにもかかわらず、彼女も自炊をしたがったり、誰かに料理を食べさせたがったりするんです。そういうことで心の均衡をとろうとするのかしら。それから、クレオが(少女とヴァンパイアの許されない恋を描いた)『トワイライト』について、熱く語るエピソードも実話です。彼女が語れば語るほど、大人たちには意味がわからないという(笑)」

鋭い観察眼と底知れぬ想像力。それがソフィアさんの作品をほかにはない、ユニークな味わいにするのでしょう。「ドラマチックなことが起きなければ、人生が変わらないなんてことはない。むしろ些細なことで人生が変わることを書いていきたい」とソフィアさんは言います。この作品でも大きな事件といえば、オスカー俳優、ベニチオ・デル・トロがちらりとカメオ出演しているぐらいでしょうか「彼はよくあのホテルにいるんですよ。だから、映画みたいに“エレベーターに乗ったら、ベニチオがいた!”というようなことはあのホテルでは日常茶飯事なんです(笑)。彼がU2のボノの話をしてくれていますが、あれは彼に『常連ならではのホテルのエピソードをなにか話して』とリクエストした成果です。写真家のヘルムート・ニュートンも撮影によく使っていたし、そういう逸話がいくらでもあるホテルなんです」

すぐれたクリエイターやミュージシャン、俳優……まるでシャトー・マーモントのようにソフィアさんの周囲にも多くの才能が集まってきます。最初の夫はスパイク・ジョーンズ。クエンティン・タランティーノと噂になったこともありました。そして、現在のパートナーはフレンチ・ロック・バンド、フェニックスのフロントマン、トマス・マーズ。ソフィアさんは『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』、そして、本作でもフェニックスの曲を使用しています「彼と一緒に仕事するのは好きですね。おたがいのテイストがおなじだから、表現したいことをちゃんと理解してくれる。いちいち説明する必要がないんです。家事や育児のサポートも、しっかりやってくれます。私もいまは子育てが一番大事です。だけど、私にとって表現することはとても大切なこと。それができる仕事は、なくてはならないものなんです」

いまは家族と一緒にニューヨークに住んでいるというソフィアさん。今度はあの街でどんな物語を紡いでいくのでしょう「パリも悪くなかったんですが、生まれ育ったところは落ちつきますね。ニューヨークは物理的にもロスに行きやすいし、私の両親のいるカリフォルニアと彼の実家のフランス、そのどちらにもちょうどいい距離。なにより、とても便利です。車社会じゃないから、どこにでも歩いて行けて、育児にも向いています。ただ、子どもたちが特殊な境遇のもとで育っているということは正直、否定できません。私の娘というだけで、彼女たちには生まれながらにして有利なこともあるでしょう。そのことを当たり前だと享受せず、感謝できる人に育ってほしいと思います。世の中にはいろんな人がいて、いろんな生活がある。そして自分たちは恵まれているということに気づいてほしい。そういう育てかたをしたいと思っています」

“ガーリー・ムービーの女王”といわれたソフィアさんでしたが、いまやすっかり母親の風格。ちょっと、さびしいなと思った直後でした。インタビュー終了後、和菓子とチョコレートを差し入れると、「どっちから開ける?」「半分こ、しようか?」と目の前のスイーツに通訳さんといきなり、テンション上がりまくり。やっぱり、まだまだ“ガール”現役!うれしくなってしまう一幕でした週刊朝日の造語「終活」が流行語大賞のトップ10に!

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