ケータイ小説から事を発し、書籍に、コミックに、そして今回の映画化と、現在115万部を突破し今や社会現象になった話題の小説『天使がくれたもの』。原作者・Chacoさんの実体験に基づく切なくも哀しい恋物語は、女子中高生を中心に絶大な支持を獲得している。そしてこの度、その映画主題歌『天使がくれたもの』で、本日1019()、遂にデビューを果たす謎の女性シンガー、YVETSUTAYAでの先行レンタルやネット上の仮想空間セカンドライフでの活動などで、その歌声に期待感が高まる中、このameba blog上でChaco×YVEの『天使がくれたもの』対談が実現! 原作者として、歌い手として、そしてひとりの女性として…。3週にわたる夢のトークセッション、開演です!
 (取材・文:奥“ボウイ”昌史)

 

【第1回:映画『天使がくれたもの』が生み出した出会いと歌の世界】

 

――今回初対面、ということでしたけど、お互い存在は知っていたと思うんですが?

Chaco そうですね。私が映画『天使がくれたもの』の挿入歌の歌詞を書くことになったときに、主題歌のほうの歌詞と挿入歌のメロディがいっしょに送られてきて。そのときに歌詞を見て“あ、まさに『天くれ』の歌詞や”っていうので、初めて知ったかたちですね。

――そのときの歌詞の印象ってどうでした?

Chaco ぶっちゃけた話を言うと、“どうしよ~”って自分のことで焦りました()

――と、いうと!?

Chaco “やば、書かれへん”って。(詞の内容が)かぶってて()

YVE あ、でもそれは嬉しい()

Chaco 私のほうは、結局『天くれ』にも普通の恋愛にも重ねられる詞を書いたんですけど、YVEさんの詞は見てすぐに“これは『天くれ』の歌”やって分かりましたね。

――逆にYVEさんは作品にインスパイアされて詞を綴ったと思うんですが、みんなが知ってる『天使がくれたもの』という作品に対して、プレッシャーみたいなものはあったんですか?

YVE 台本を頂いて読んで、話の中でどういう風に歌として感動を添えられるか?という想いの中で作ったんで、今さっき“まさに『天くれ』の歌詞や”って言ってくださったときすごく嬉しかったんです。ぶっちゃけ私が一番最初に思ったのが、原作者であるChacoさん自身が私の歌を聴いてどういう風に感じるんだろう?っていうこと。やっぱりChacoさんのすごく思い入れのある作品の中で、絶対に邪魔をしたくないっていうのを考えたんで。主人公の舞ちゃんの気持ちや自分の恋愛…いろんなことを重ねて…。曲ができて、映画が公開されて、いよいよCDも発売される。で、Chacoさんはどう思ってるんだろう?って()。だから今こうやってお会いできたのがすごく嬉しいです。

Chaco 2005年の10月に『天くれ』が書籍化されて…もう2年になるんです。今でも“読みました!”ってホームページにメールが来るんですけど、読者さんっていうのは本当に素直で。なのでYVEさんもヘンに脚色とかをしないで、そのまま素直にストーリーを歌にしてくれたんで、私的には読者さんと同じ目線で書いてくれてるな、と思いましたね。

――それだけ純粋に受け取ってくれる方が多いんですね

Chaco 自分と重ねて読んでくれる方が多いですね。私自身自分の悪いとこもいっぱい書いてきたんで、中には“なんでそんなことするん?”っていう方もいるんですけど()、どこかしら自分にもそういうとこがあるって受け止めて読んでくれる方が多いです。今回の歌詞も読者さんから見て作品とリンクすることが多いと思いますね。実際“『天くれ』の歌聴きました”とか、“流れてるの聴きました”とかメールはもう届いてきてますよ。

――読者の方から本の感想であったり、歌の感想しかり、ダイレクトにメールで返ってくるもんなんですね

Chaco 『ホワイトキャンバス』っていう私のホームページには毎日メールが届いてます。感想であったり、相談事であったり、日記みたいなものだったり。小学校5年生ぐらいから上は普通に30代とか。

――それだけ多くの方に支持された物語、となればYVEさんからしたらある種のプレッシャーというか。しかもこれがご自身の音源としては初となったら、なおさらで。みんなが知ってる物語だからこそ、作っていく中で思い描いたことはありましたか?

YVE 映画ってエンドロールに主題歌が流れるじゃないですか? 2時間近くの映画を観てみんなが感じたことを、歌を通して“こういうシーンもあったな”って、何分かの時間でもう1回思い出せてくれるような歌にしたかったんです。YVEの歌う『天使がくれたもの』を先に耳にしてから本や映画を観てくれた人ともリンクして、もっと作品のことを知りたいって思ってもらえるような。聴くたびに毎回毎回5分の曲の中で1個1個のシーンを思い出してくれたら…そういうことをすごく思い描いて作りましたね。

――Chacoさんは今回挿入歌の歌詞にも挑戦されてますが、小説を書くのと歌詞を書くのは違う作業だと思いますが、どうでした?

Chaco 今回2回目になるんですけど、時間も結構バタバタとしたのもあって、ホンマ1日で書いたんです。なので“間に合わさな”っていうのもあり()

――作家魂ですね()

Chaco 他の作家さんとかは違うと思うんですけど、私が小説を書くときは、ダラダラ書いちゃう面もあるんです。その主人公の気持ちで熱くなって、“こういう気持ちなんや!”って文字数とか考えずにいっぱい書いちゃうんです。けど、歌になるっていうことは、曲のサイズに合わせないとダメじゃないですか? それだけじゃなくて、歌いやすい語尾とかもあるみたいで、やっぱ小説とは違うな~と思いますね。伝えたいことがいっぱいあるのに、文字数は限られているというか。そうなると、とびっきりの言葉がいるじゃないですか? それが難しいなと思いますね。小説は後からもう1文ぐらいって付け足せるんで。でも、キラいではないですね。とびっきりの言葉が見つかったときは嬉しいですし。基本作品自体が自分目線で書いてる作品ですし、歌はできるだけ共感できるものにしようって。今回は一番それが強かったですね。当初、挿入歌が流れる場所も知らなかったので、想像してたシーンと全然違うところで流れて“やってもた~”っていうところも()

YVE ()

――おふたりとも映画をご覧になったんですよね?

ChacoYVE はい。

――実際、映像化されたものを観てどうでしたか?

Chaco 自分の昔経験したことが映像になってるんで、すごく不思議というか…。一番強く思ったのが、カグ(=劇中ではLeadの鍵本輝さん)が白浜に行くっていうときに、私“何で行くん?”って言ったんです。それが目の前のスクリーンでも“何で行くん?”って同じことを言ってる。あのときのことをあの場所の違う角度から見てる。第三者の目っていうのが不思議やなぁって。そういう目で見てるんで、絶対にお客さんの目とは違うんですね。なのでみんなが感動するシーンが、自分にとっては結構キツかったり…。試写会2,3回見たんですけど、シーンによっては映像をまっすぐに観ることができなくて…。スクリーンの斜め下を見て号泣しちゃって、直視できないというか。何回か観ても気持ちがあのときに戻っちゃうんで、涙が出てきますね。横にいる担当さんとか専務さんのポケットティッシュも全部使って()。自分の作品が…自分の作品というより自分の過去ですね。それがみんなに見られてるっていう感覚がまだ不思議になることがあります。でも、映画とかマンガになることによって自分自身ではケリが着いたというか、どこかでちゃんと見直しながら前へ進もうと思えたんで。作品をいろんなかたちで残したいというより、ホンマに読む人に“同じようにならんといてよ”っていう気持ちのほうが強いんで。

――ケータイ小説から本になり、マンガになり、映画になりと、それだけそのメッセージが届くかたちが広がっていきますもんね。何かしらそれに触れた皆さんが想いを巡らせてくれたらいいですよね。逆にYVEさんは全然違う感覚で映画を観られたと思いますが。

YVE 私は完全に読者側ですよね。すごく主人公の舞ちゃんと自分がかぶってしょうがなくて。多分そういう読者の方がいっぱいいらっしゃると思うんですけど。寂しくて誰かの側にいたい気持ちとかを観てると、自分とすごくダブらせてしまって…。感情移入して切なくなって泣いたとき、Chacoさんがホームページにも書いてる、“素直になる、後悔しない”っていうメッセージを見て…ホントにそうだなって強く思って。私は『天使がくれたもの』というタイトルの、その“天使がくれたもの”っていうのは何だったんだろう?ってすごく考えたんですね。舞ちゃんの中では何だったんだろう? 観ている人の中では何だったんだろう?って。そこで私がすごく感じたのは、それは“未来”なんじゃないかな?って。切なかったり辛かったりする話ではあるけど、だけど前に進む。切ない中にもポジティブなメッセージをすごく感じて。それで、“天使がくれた未来へと歩こう”っていう歌詞が出てきたんです。本を読んでも、映画を観ても、Chacoさんが伝えてくれる、哀しい過去の中でも“みんなはこういう気持ちにならないで、今を素直に生きて欲しい”っていうすごく前向きなメッセージ。観ていてそれを一番感じましたね。

Chaco 『天使がくれたもの』の天使ってカグ(香久山 )って思われがちなんですけど、実際に天使っていうのは、好きだったその場所、その思い出、時間、あのときにの空気すべてなんです。自分は5年半くらいまったくそこに戻ってなかった。いや、戻れなかったんですよね。でもそこはやっぱりそのときの自分の、他にはない居場所なんで。すごく大切だからこそ、離れてる間にその重みがわかった。あの場所とか時間とか空気、匂い、あのメンバーみんな…そういうこと全部が私に与えてくれた感覚が、『天使がくれたもの』なんです。それは今後も絶対大切にしていきたいことですね。

 


 

初対面とは思えないトークで心を通わせたふたり。次週1026()では、主題歌『天使がくれたもの』が生まれるまでの知られざるマル秘エピソード、そしてふたりを支える読者やリスナーへのそれぞれの思い、その接点であるネットコミュニケーションについて、大いに語ってくれます。お楽しみに!