今回はもうすでに完結している『僕らの天使』の番外編。
兄弟たちの出会いのお話です。
それぞれの両親が再婚して名字が松本になる設定なので、潤ちゃんの苗字はこの時松本じゃありません。
特に意味はなく・・・・何となく思いついた名前です。
ほのぼのとした兄弟を思い浮かべながら楽しんでいただけたらと思います。
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「こんにちは」
線の細い、優しそうな女性が俺たちに微笑んだ。
「紹介するよ。右から智、翔、雅紀、和也だよ」
父さんが照れ臭そうに俺たちを女性に紹介した。
「みんなすごくハンサムね。わたしは楠木洋子って言うの。よろしくね。それから―――」
洋子さんはちょっと後ろを振り返ると、クスリと笑った。
「ほら、潤、恥ずかしがらないで」
そう言って笑う洋子さんの後ろから出てきたのは、色白で目の大きなかわいい男の子だった。
「自己紹介して?」
「・・・楠木、潤・・・です」
小さな声で、それでもしっかりと俺たちの目を見て、潤はぺこりと頭を下げた。
「歳は、確か和也と一緒だったね。なあ、今日これからみんなで動物園に行かないか?潤くん、動物好きなんだよね?」
父さんの言葉に、潤はちょっと恥ずかしそうに頷いた。
「でも、俺、動物に懐いてもらえないから・・・・」
別に、行かなくても・・・
と、もごもごと言っている潤。
俺は、とっさにその潤の前に立ち、驚く潤の小さな手を握った。
「大丈夫。楽しいよ」
そう言って笑うと、潤は一瞬驚いた後、嬉しそうにニコッと笑った。
「うん」
かわいい。
同じクラスにも可愛い女の子はいるけど、その誰よりもかわいかった。
「智にい、ずるい」
そう言って、潤のもう片方の手を握ったのは雅紀だ。
「手ぇ繋いで行こうね」
俺と雅紀に手を握られ、潤はちょっと恥ずかしそうだった。
「・・・・車で行くの?全員乗れる?」
そう聞いたのは翔くんだ。
次男だけど俺よりしっかりしてる。
「いや、今日は電車で行こう」
父親の言葉に和也が顔をしかめた。
「ええ、じゃあ駅まで歩き?だる」
和也の言葉に、潤が悲しそうに眉を下げた。
「あ・・・あの、俺」
「カズ」
翔くんがちょっと怖い顔で和也を睨む。
「・・・わかったよ」
ぷいっと顔をそむける和也と、心配そうに和也を見つめる潤。
この2人が仲良くなるのは、まだちょっと先の話。
父さんと洋子さんが結婚し、俺たちが兄弟になってからのことだった・・・・。