このとき何を考えてたのか。
今となっては思い出せません。
ただきっと、潤くんには幸せになってほしいと思っていたと思います。
その思いは今も変わらず、です。


。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・
 

「潤ちゃん、帰んないの?」

誰もいないステージに座り、ぼんやり空を見上げていると、後ろから雅紀の声。

「・・・・まぁくんこそ。もうみんな帰ったでしょ?」

「帰ったよ。俺は、潤ちゃん待ってたの。一緒に帰ろうと思って」

よいしょと隣に座る雅紀。

「・・・・いよいよ明日だねえ」

「・・・・うん」

無観客での、初めてのコンサート。

収録だし、今日までやっていたリハーサルと状況はあんまり変わらないのかな。

でも、明日が本番だと思うとやっぱり緊張する。

少し懐かしい、そして心地いい緊張感。

いろいろ思うことはあるけれど。

今は、前を向くだけだ。

天を仰ぐ俺の手の上に、雅紀の手が重なる。

「・・・・7年前は、考えもしなかったな」

「国立でコンサートがまたできること?」

「ううん。・・・・潤ちゃんの隣に、こうしていられるってこと」

隣を見ると、雅紀の優しい笑顔。

「・・・・そう?」

「そうだよ。ずっと俺の片想いだった」

「そうだっけ?」

「・・・・潤ちゃんは、ずっと大ちゃんと一緒にいると思ってたよ」

「・・・・あの人は、自由でいたい人だから。縛られたりするのは、ダメなんだよ」

「縛ってないでしょ?潤ちゃんは。ずっと自由にさせてあげてたじゃない」

「でも・・・・俺じゃダメだったんだ」

ずっと嵐でいたかった俺。

自由になりたかった智。

わかってたはずだった。

それでも・・・・・

ずっと一緒にいられるって、俺も思ってた。

「・・・・俺は感謝してるけど。おかげでこうして潤ちゃんの隣にいられるんだから」

「まぁくん・・・・俺ね」

「ストップ」

真剣な声に、はっとする。

雅紀の顔を見ようとすると、ふわりとその腕に抱きしめられた。

「・・・・いいんだ。わかってるから。俺は、いつまでだって待てるよ」

「・・・・・待つ必要なんか、ないよ」

俺の言葉に、雅紀が俺の顔を覗きこむ。

不安そうな顔。

・・・・大丈夫なのに。

俺は、そっと雅紀の唇に自分の唇を重ねた。

「もう、待たなくていいよ」

「じゅんちゃ・・・・」

「好きだよ、まぁくん」

驚きに、見開かれる目。

それから、嬉しそうに顔を綻ばせる。

「・・・・・俺も!大好きだよ」

それから少し強引に雅紀は俺の唇を奪い、まだ雨の残るステージに押し倒した。

シャツが濡れる。

でもそんなこと全然気にならないくらい

俺たちの体は熱くなっていった・・・・・

 

 

 


拍手お礼小話はこちらから↑
感想もお待ちしております!


小話のお題を募集しています!↑