このお話もいよいよ終わりです。
兄ズに溺愛されるかわいい潤ちゃんは、書いているほうも癒されました。
もう40歳になった潤くんですが、兄ズにとってはいつまでも末っ子の潤くんでしょうね。
この5人が大人になった時のお話を、またいつか書けたらと思います。



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思いもよらなかった潤の告白に、俺らはすぐには反応することができず―――


潤が、泣きそうな顔で俯いた。

「やっぱり・・・おかしいよね。男だし、血は繋がってなくても兄弟なのに、恋してるとか・・・」

その大きな瞳からは、今にも涙がこぼれそうで

潤がギュッとこぶしを握り締め涙をこらえているのがわかった。

「潤、違うよ」

「そうじゃない」

「泣くなよ」

「話、聞いて」

4人が慌てて立ち上がる。

潤はきゅっと唇を結び、俺たちを見上げた。

これは、ちゃんと話さないとさらに潤を泣かせてしまう。

その時、智くんが俺を見た。

「翔くん、話して」

「え、俺?」

「こういう時、翔くんが一番うまく話できるじゃん」

「いやいや、あなた長男でしょ」

「俺説明下手だし」

「説明ってなんだよ」

「どっちでもいいからさっさと話してよ。潤くんがまた泣いちゃうじゃん」

「泣いてない」

『泣いてるじゃん』

4人の声が揃うと、潤はぷうっと頬を膨らませた。

「仲いいね」

「すねるなよ・・・。じゃあ、俺から話すけど。あのな潤、一応俺らが同じ気持ちだって前提で話すけど―――男だからとか、兄弟だからとか、そんなこと俺らも気にしてないんだよ」

俺の言葉に、潤は目を瞬かせた。

「え・・・・」

「それどころか・・・・たぶん、潤よりもずっと前から、俺らは潤のことが好きなんだ」

「え・・・・それは知ってるけど、でも、弟だからでしょ?」

潤の言葉に、俺たちは揃ってため息をついた。

「あのな、普通に兄弟としてってことだったら、例えば俺なら智くん、雅紀、カズに対しても同じ気持ちを抱いてるってことじゃん。なあ、どう?」

3人の顔を見渡すと。

『キモイ』

「おい!キモイはねえだろ!―――ま、こういう反応になる。だからって、弟だと思ってないってことじゃないんだ。俺らの潤への気持ちは―――兄弟でもあり、友達でもあり―――恋愛対象でもあるってとこかな」

「え・・・・え?」

見る間に、潤の頬が赤くなる。

「・・・本当は、血が繋がってなくても兄弟なんだから、こんな気持ち抱いちゃいけないって思ってたよ、俺たちも」

智くんがそう言って潤を優しく見つめる。

「でも、俺らはいつだって潤に恋してたし、いつもドキドキしてたよ」

雅紀も潤に優しく笑いかける。

「潤くんが他のやつと話すたびに、めちゃくちゃ妬いてたんだよ。もちろんお互いにもね。俺らみんな、潤くんを独り占めしたくて仕方なかったんだ」

カズもそう言って、俺らには絶対見せない笑顔を潤に向けた。

「だから、潤も俺らのこと同じように好きでいてくれたってことがすごく嬉しいんだ。ただ、正直言えば―――4人同じじゃなくて、自分だけにその想いが向けられたらって思ってるんだけど」

俺がそう言うと、潤が困ったように眉を寄せた。

「それは・・・・俺もずっと考えてたんだ。だけどどうしても―――俺にとっての4人はお兄ちゃんでもあり、恋してる人たちでもあって、すごく大事で・・・・そこに、差なんてなくて、1人になんか決められない。ごめんなさい。―――俺、あの時お母さんにも言ったの。ごめんなさいって」

「母さんに?なんで謝んの?」

雅紀が不思議そうに潤を見つめる。

「だって、普通の兄弟になれなかったから。お母さんは、一人っ子だった俺に兄弟ができたこと、すごく喜んでくれてたのに・・・。俺が、4人に恋しちゃったから、ごめんなさいって」

「・・・俺らの母さんは、喜んでるだろうなあ」

智くんがちょっと昔を懐かしむように呟いた。

「そうだね。俺小っちゃかったけど、母さんが良く言ってたもん。男ばっかりでつまんないって。かわいい女の子が欲しかったって」

カズの言葉に俺も頷いた。

「言ってたなあ。髪結ったりかわいい服着せたりしたかったって」

そんな俺らを、潤が不思議そうに見る。

「俺も、男だよ?」

「でも潤は女の子よりかわいいから、会ってたらきっとかわいがったと思うよ。ピンクの服とか着せて、髪も伸ばさせてたかも」

「ええ~」

智くんの言葉にげんなりする潤を見て、俺たちは笑った。

そんな俺たちを見つめながら

「・・・・怒ってないかな、お母さんたち」

そう言った潤に、俺たちはうなずいた。

「・・・・お父さんも?」

「あー・・・・父さんには、とりあえず黙ってよう。あの人、意外と心配性だから」

智くんの言葉にうなずきながら、果たして言える日が来るのか・・・・?

と、内心思っていたけれど。

仲が悪くて喧嘩ばかりしてるよりは、いいだろうとポジティブに考えることにした。

さしあたっての問題は―――






『ジャンケンポン!!!!』

「やった!俺1番!」

「また雅紀かよ!昨日もだったのに!」

雅紀とカズがギャーギャーとやり合っているのを、俺と智くんはぼんやり眺める。

「俺最近ずっと最後だー」

「まだいいじゃん、翔くん。最後潤と一緒に出れるんだからさ」

毎日恒例のお風呂じゃんけん。

長風呂の潤と一緒に入るための順番決めだ。

この歳で、しかも相手は『好きな人』だっていうのにこうして毎日一緒にお風呂に入るなんて、たぶん傍から見たら普通じゃない。

でも、俺らにとってはこれが日常。

潤が嫌がったりしない限りは、ずっと続くだろう。




「そう言えば、小栗に告白されたこと、カズと雅紀にばれたって?」

お風呂で体を洗いながら、湯船につかってアヒルのおもちゃをいじる潤に聞いた。

「ん。旬がばらした」

「え、あいつ自分で言ったの?」

「そう。あいつ、俺は4人の兄貴に溺愛されすぎてるから、ちょっと外からも刺激してやるとか何とか言って。で、絶対あきらめないってカズに宣戦布告したって」

「はは、まじか。道理でカズが不機嫌なわけだ。雅紀はカズに聞いたんだな、じゃあ」

「まぁくんも怒ってた。なんで怒んのかなあ」

不思議そうな潤に、俺は苦笑する。

「そりゃ、怒るだろ。ただでさえすでにライバルが3人はいるんだからさ」

「そんなの・・・だって、俺は4人が好きって言ってるのに」

「だからだよ。みんな、潤の特別な1人になりたいんだからさ」

「一人に・・・・決めらんないよ」

困ったように言って、潤が俺を見る。

「わかってるよ。別に今決める必要ない。ただ、俺たちは常にお互いがライバルで、それはもう潤がこの家に来た頃からのことだから」

「俺、子供だったのに?」

「ふふ、今も子供だけどな」

「あ、しょおくん、馬鹿にしてる!」

「してないって!そうじゃなくて、潤に会った時から俺らは潤のことが特別だったから。だから、今更焦ったりしないしそれぞれお互いが一番のライバルだってことはわかってるから、いいんだよ」

「ふーん?」

首を傾げて不思議そうに俺を見つめる潤。

「―――よし、入るぞ、潤、詰めて」

「は~い」

潤が体を小さくして俺が入るスペースを作る。

白くて滑らかな肌が目の前にある。

まあるい頭も綺麗な黒髪も艶やかな背中も、全部愛おしくて抱きしめたくなる。

一緒にお風呂に入るたび、ドキドキしてることなんて潤は知らない。

俺たち4人のことが好きだと言ってくれる潤だけど、その表情を見れば俺たちの裸を見ても特に緊張したりしていないことはわかる。

だから、きっとまだこれからなんだ。

今はまだ、恋に恋してる段階。

だから潤も俺たちももう少し大人になった時、潤の『特別』になれるように。

そのために、俺たちは努力を続けるんだ・・・。




「・・・・しょおくん?」

「ん?」

「あんまり・・・・くっつくと、ドキドキする」

「へ!?」

思わずばしゃっと水音を立てて潤から離れる。

と。

潤が俺を振り返り、クスリと笑った。

「なんてね。・・・でも、俺もいつまでも子供じゃないから、ね」

そう言って。

驚いて固まってる俺に顔を近づけると、俺の頬にちゅっとキスをした。

「!!!??????」



ざばっと湯船から立ち上がり、潤が浴室を出ようと扉を開け―――


ふと、俺を振り返ると、妖しげな流し目で俺を見た。

「・・・しょおくんのほっぺ、やわらかいね。4人の中じゃ、一番かも」

そう言って、潤は扉を閉めた・・・・。





「ちょ、まてっ!!!潤!!今のどういうことだ!お前、みんなに―――!!」


俺が思ってるよりも、潤はもう大人なのかも・・・・・?





                        fin.

 

 

 


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