佐川急便のCMが再開されたとの噂を聞き、テンション上がってます!
で、全然関係ないけど、こちらのお話はようやく最終話を迎えることができました。
長かったですね~
まだ連載途中のお話があるので、そちらを書きつつ、また小話の方も書いていけたらいいなと思っています。




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『悪魔は人間界で暮らすことはできない』



それでも。

潤が俺を愛してくれるなら・・・・



「え、俺、人間界では暮らさないよ」

さらっと、当たり前のように潤がそう言った。

「え!?でも潤、俺のこと―――」
「うん、好きだよ。愛してる。でも別に、そこで暮らさなくてもよくない?」
「まあ・・・・そうだけど・・・・」

あまりにもあっさりとした潤の答えに、俺はがっかりするよりもあっけに取られていた。
そりゃ、すぐに一緒に住もうとか思ってたわけなじゃいけど・・・・

なんだか、俺の気持ちだけ取り残されているような気がしてきた。

「智、俺はね」

俺が何も言えずにいると、潤はニコッと笑うと俺のそばに来て、おもむろに俺の膝にちょこんと座った。

「おい、潤!」

見ていた翔くんが慌てる。
ニノはもうあきらめているのか、ため息をついて天井を見た。

「智が好き。大好き。こんなに好きになれて、俺は幸せ」
「好きになれて・・・・?」
「うん。俺ね、しょおくんが本当のお兄さんじゃないって知った時、すごいショックだった。しょおくんの弟だっていうことが自慢だったし、だから周りの人が優しいって知ってたし」

潤の言葉に、翔くんがはっとしたように息をのんだ。

「カズが俺のそばにいてくれてるのだって、しょおくんに頼まれたからだって知ってる。カズのお父さんが父さんの部下だったから裏切らないだろうって選んだんだよ」
「え・・・そうなんだ」

それは知らなかった。
けど、それに反応したのは翔くんだけじゃなくて。

「潤くん!俺が潤くんのそばにいるのは翔さんに頼まれたからじゃないってば!俺は潤くんが好きだから!」
「そうだよ。カズが潤を甘やかすから、俺何度かカズをクビにしようとしたもん。でもカズがどうしても潤を守りたいって言うから・・・」

2人の言葉に、潤が頬を膨らませた。

「でも、カズはしょおくんに逆らわないじゃん」
「それは!俺が試験に合格できたのは翔さんの後押しもあったし、お目付け役でも潤くんのそばにいることを許してくれてるから―――」
「わかってる」

潤はにっこりと笑ってニノを見た。

「だから、カズのことも大好きだよ。大好きだけど―――ずっと不安だったんだ。天使と悪魔の血を引く俺は、いつ追放されてもおかしくない。そうなった時・・・・しょおくんもカズもきっとこの悪魔界の掟を破ることはできないだろうなって」
「潤・・・・お前、そんなこと・・・・」
「今回のことで、俺が合格できなかったらしょおくんが地獄に落とされるって聞いた時、俺のためにしょおくんをそんな目に合わせることできないって思ったよ。しょおくんは俺にとってすごく大切な人だから。しょおくんやカズが俺のこと大事に思ってくれてるってわかってる。でも、悪魔だから。悪魔はルールを破らない。ルール以外のことはすごいいい加減だけど」
「潤・・・・」
「ま、本当のことだよね」
「だからこそ俺は、2人にすがって生きていくしかない。好きなのも本当だけど、そうやって生きていくために2人にくっついてるのかなって思うと・・・悲しくなった」

潤の目が、悲しげに揺れた。

「俺は・・・・友達ができないと思ってた。信じられると思ってた友達も、結局俺を利用するだけのやつらばっかりで。だから、2人以外に好きになれる存在なんてこの先現れないだろうなって思ってたんだ。でも、智と相葉ちゃんに会って、この2人は俺に打算抜きで優しくしてくれる。そんな人初めてだったからすごく嬉しくって」

そう言って潤が、俺のことを優しく見つめた。

「あとね・・・・俺、智を傷つけなくちゃいけない、不幸にしなきゃいけないって思ったらすごく悲しくて辛かった。そんなこと、したくないって思った。しょおくんのためにそれでもやらなきゃって思ったけど・・・・でも辛かった。智を傷つけて、智に嫌われるのが、怖かった」
「潤・・・・」
「好きなんだ、智が。智を悲しませたくないし、嫌われたくない。だから・・・・俺がこの先悪魔にも天使にもなれなくたって、追放されたって、智とだけは別れたくないって思った。一緒に暮らせないのなんてどうでもいい。俺は智が好き。それだけじゃ、だめ?」

熱っぽい目が、俺を見つめる。

俺は、ゆっくり首を振った。

「いや・・・・それでいいよ。一緒に暮らせなくても、そんなこと大したことじゃない。俺も潤が好き。潤が俺のことを好きでいてくれるなら・・・・潤が天使でも悪魔でも、なんでもいい」

潤の目から涙が零れ落ち、俺の頬に落ちた。
俺は潤の頬に手を伸ばし―――その綺麗な顔を引き寄せ、口づけた。

「・・・・・どうします、翔さん?」
「どうもこうも・・・・2人がそれでいいって言うんならしょうがないだろ。明日にでも、行ってくるよ」
「お偉いさんのとこですか?」
「そ。特例として、人間界に住むことを認めろって。ま、俺はあの人らの弱み握ってるから、何とかなるだろ」
「こわ・・・・」

そんな2人の会話を聞きながら―――
俺は潤を抱きしめながら、その柔らかい唇を堪能していた・・・・。




「相葉ちゃん!いらっしゃい!」

玄関の扉が開いた途端、満面の笑みを浮かべた潤に迎えられた。

「潤ちゃん!久しぶり!」

相葉ちゃんも嬉しそうに笑い、2人が固く抱き合う・・・・。

「相葉ちゃん!離れて!」
「相葉さん、調子に乗らないで!」

ニノと俺が2人を引きはがしにかかっていると―――

「離れないと、殺すぞ」

と、翔くんの低い声が響き―――

2人が、ぱっと離れた。

「しょおくんこわい~」

潤が口をとがらせる。

「うるさい。てかいつまで玄関にいるんだよ?上がってもらうなら早くしろよ」
「は~い」

ここは、潤とニノが住んでいたマンション。


あれから翔くんが悪魔界の偉い人に直談判したらしく、特例で人間界へ移住することが許されたのだ。
と言っても、俺と一緒に住むことは翔くんが許してくれなかった。

「試験には合格しても、潤はまだまだ半人前だから」

ということで、元居たマンションでまた暮らすことになり、さらに翔くんもそこで暮らすことになったのだ。

潤はこれまで通り俺と相葉ちゃんのところへ家事の手伝いをしに来てくれることになっていた。

潤が悪魔だったと言うことはまだ相葉ちゃんには言ってない。
いきなり言っても信じないだろうし、いずれ折を見て・・・・という感じだった。
まあ、どっちにしても信じないだろうけど。

ニノというお目付け役に加え、翔くんという怖い監視役までついてきてしまって、前途多難ではあるけれど。

潤jが俺のそばにいてくれると思えば、どんなことにも耐えられる気がした。



「大ちゃん、どうやってあの2人を説得したの?」

広くてきれいなリビングのソファーでビールを飲みながら、相葉ちゃんが小声で言った。

「俺は、特に何も・・・・。結局潤には甘いんだよ、2人とも」
「なるほどね」

潤に甘い、というのもそうだし、そもそも潤はあれですごく頑固なんだということが分かった。
こうと決めたらてこでも動かない。
潤にはそういうところがあって、それをよく知ってる2人が仕方なく認めた、という感じだった。
2人の中では、俺はまだまだ認められていない。
きっと潤が心変わりでもしようものなら喜んで俺たちを別れさせるだろう。
でも・・・・・

「智、何か食べたいものある?ビール足りなさそうだからコンビニに買いに行くついでに、何か買ってこようか?」

そう言ってパーカーを羽織る潤に、俺は立ち上がった。

「なら、俺も一緒に行くよ。ビール重いし」
「そお?じゃ、いこ」



2人でエレベーターを待っている間に、俺は潤の手を握った。
潤も俺の手を握り返してくれる。

「・・・・俺、諦め悪いんだ」

俺の言葉に、潤がきょとんとして俺を見た。

「何?急に」
「潤がたとえよそ見しても・・・・俺、離さないから」

そう言って見つめると、潤はますます不思議そうに目を瞬かせる。
それでも俺が真剣に潤を見詰めていると―――

ふ、と嬉しそうに潤は微笑んだ。

「なら、俺も智から離れないよ。智がよそ見しても、絶対くっついてるからね」
「ふん」

ちょっと鼻を鳴らし、潤の腰に手を回す。
潤が、されるがままに俺に寄り掛かるようにしてくっついてくる。
心地よい重み。
ずっと、離したくない。
この温もりを―――


「大好きだよ、智」
「俺も、大好きだよ、潤」

引き寄せられるように、合わさる唇。
ついばむように、何度も何度も。


やがて、開いたエレベーターに乗っていた同じ階の住人らしき夫婦が驚いて固まってしまったのは言うまでもない・・・・・。



                              fin.

 

 

 


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