ようやく暖かくなってきましたけど、気温が上がったり下がったりで体調を崩しがち。
歳とともにそういう気温の変化にもついていけなくなってくるからちょっと微妙に具合が悪いw
それでもお話を書いてるときは体調もいい気がするから不思議です。
皆さんも体調にはお気を付けくださいね~
。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・:*。・
「じゅ~ん」
「・・・・」
「なあ、潤ちゃん」
「・・・・」
「なあってば」
「・・・・・」
「じゅ~ん~!!」
「もう、何だよ智」
根負けしたように潤が机から顔を上げる。
夏休み最終日。
潤は夏休みの宿題をかたずけるために今日はずっと机にかじりついていた。
潤だけじゃなく、雅紀もカズも。とっくに終わっているのは翔くんぐらいのもんだ。
俺なんて、最初から終わらせるつもりがないから今日も日中はずっとパン屋でバイトをしていた。
で、なんで今俺がここにいるのかと言うと。
「夏休み終わったらやることがあるって言ってたじゃん。それって何なの」
あの公園で潤が言ったことが、俺たちはどうしても気になって仕方なかった。
好きな人がいるっていうのももちろんだけど、なんか、それを言う前にやらなきゃいけないことがあるとか何とか・・・
よくわかんないけど、とにかく潤が俺たちに隠し事をするなんて、本当にショックだった。
「だから、それはまだ言えないって・・・・」
「なんで?俺たち、いつも潤の言うことはちゃんと聞いてきたじゃん。潤が言いたくないっていうことは、俺も無理に聞きたくない。でも・・・・でも、心配なんだ。急にたくさん隠し事して、俺らに何も話さなくなって・・・・」
「智・・・・」
「そんな・・・・そんな、急に大人になるなよ」
急に潤が手の届かないところへ行ってしまったような気がした。
大人びた表情をするようになった潤。
物思いにふけることが多くなった潤。
いつも俺たちの後にくっついて、屈託ない笑顔で俺たちに甘えてくれていたのに。
寂しい。
とにかく、寂しくて仕方がないんだ。
潤はじっと俺の顔を見つめていたけれど―――
ふっと困ったように笑うと、椅子から立ち上がりベッドの上に座った。
つられるように俺も潤の隣に座る。
潤が、こてんと俺の肩に頭を預けた。
「・・・ごめんね、智。そんな悲しそうな顔、させるつもりじゃなかったんだ・・・。これは、俺の問題だから・・・・皆には言わないでおこうと思ったんだけど」
そう言って、潤はちょっとため息をついた。
「智は、一番上のお兄ちゃんだし、高校生だから・・・智にだけは、言っておく」
「え・・・・ほんとに?」
「うん。でも、他の3人にはまだ言わないで。絶対めんどくさいことになるから」
「へ?めんどくさい?」
潤がこくんと頷き、また一つため息をつくと俺の肩に乗せていた頭を戻した。
「どういうこと?」
「あのね・・・あの久保田の事件の前に俺、クラスのある人に告白されて・・・」
「また?潤、もてるなあ」
そう言ってちょっと笑った俺を、潤はちらりと見た。
「けど、そんなの今までもあったじゃん。別に隠さなくても・・・」
「・・・相手が、旬でも?」
「旬って・・・・え、お前の友達の?小栗旬?」
「そう、あの小栗旬」
「マジなやつ・・・・?」
「だったみたい」
そう言って、潤はまたため息をついた。
「最初は、俺も冗談だと思ったんだ。いつもみたいにふざけてるんだと思って、本気にしなかったの。そんな時、西野さんに言われたんだ。久保田には気を付けたほうがいいって」
「え、そうなの?西野さんて潤に告白した子でしょ?」
「うん。体育の授業の準備運動の時、俺の後ろがいつも西野さんで。それで、久保田が俺に触ったりしてたことに気づいてたみたいで。あと、いやらしい目で俺を見てるって言ってた」
「さすが。よく見てるね」
「旬は、準備運動の時俺から一番離れた場所にいるから気付いてなかったんだよね。そしたら西野さんが、このことは旬に言わない方がいいって」
「それは・・・小栗が知ったら怒るからってこと?」
「みたい。でも、俺は旬のこと親友だと思ってたし、周りもふざけて冷やかしてるだけだと思ってたから・・・。だけど、西野さんは真剣な顔して、本当だからって。で・・・あのプールで久保田が盗撮してた時も、旬には聞こえないように俺にだけ盗撮のこと教えてくれた。でも、放課後俺が教室出ようとした時、旬に言われたんだ」
「なんて?」
「久保田に何かされたんだったら、俺がぶっ殺すからって」
「・・・旬も、気付いてたってこと」
「ん。触ってたことは知らなかったと思うけど、あいつが俺を変な目で見たりスマホ向けてたことには気づいてたみたい。それで・・・旬の気持ちが、わかったんだ。本気なんだって」
「なるほど」
「目が、なんていうか・・・本気の目で。正直、どうしたらいいかわからなかった。久保田とか美術の岡田とか、まぁくんのクラスメイトとかも別に男だから嫌だとか思うことはなかった。だけど、旬は友達だから・・・」
潤は真面目だし優しいから、とても悩んだのだろう。
友達だからこそ、本気で考えて・・・。
「夏休みに入る前、また旬に言われたんだ。本気で好きだから、考えてほしいって。夏休み終わったら、返事が欲しいって」
だからか・・・・
「確かに、あいつらが知ったらめんどくさいことになるな。特にカズは」
「でしょ?カズは、旬とも友達だし。だから、ちゃんと俺が旬に返事するまでは言いたくなかったんだ」
「・・・どう返事するかは、もう決まってるの?」
「うん、決まってる」
「・・・・旬の好きな人って、もしかして・・・・」
小栗なのか・・・・?
俺の胸が、ドクドクといやな音を立てていた。
不安そうな俺の顔を見て、潤はちょっとおかしそうに笑った。
「なんて顔してんの、智」
「いや、だってさ」
「違うよ、旬じゃない。旬は、親友だけどそういう目で見たことはないんだ。だから・・・どうしたら旬を傷つけずに自分の気持ちを伝えられるだろうって、ずっと考えてた。でも考えても考えてもわからなくて・・・」
だから、一人で引きこもって悩んでたのか・・・・
「俺が断ったらどうしたって旬を傷つけちゃうし、そうしたら、もう旬とは友達に戻れないんじゃないかって・・・」
「で・・・どうやって答えを見つけたの?」
どう返事するかはもう決まってると言っていた。
「・・・答えなんて、最初からなかった。ていうか、一つしか答えはなかった」
そう言って、潤は俺を見てほほ笑んだ。
綺麗な、すっきりしたような笑顔だった。
「ただ、自分の気持ちを正直に伝えるしかない。旬は大切な友達だから、嘘はつきたくない。だから・・・俺の気持ちをそのまま伝えようと思ってる」
「そっか・・・」
「旬には・・・縁を切られるかもしれないけど」
と言って、潤は寂しそうに笑った。
「そんなこと、ないと思うよ」
「そうかな・・・だって俺、旬の気持ちに応えられないんだよ」
「それでも。潤が大切な友達だと思ってるなら、きっと小栗もわかってくれる」
俺がそう言って潤の頭をなでると、潤は俺の方を見て泣きそうな顔で頷いた。
「ありがと、智。やっぱり、智に言ってよかった」
そうして、また潤は俺の肩に頭をくっつける。
俺は潤の肩をしっかり抱き、その柔らかい髪に頬を寄せた。
「もし・・・・小栗と今までみたいな友達に戻れなくても、潤には俺らがいるから。だから、大丈夫」
「ん・・・・・智?」
「ん?」
「智、学校の宿題やった・・・・?」
「・・・・心配すんな」
「ふふ。やってないんだね。しょおくんに怒られない?」
「翔くんには言わないで」
「もう遅いと思う」
「やっぱり?」
「うん」
まあ今は宿題のことは忘れて。
俺たちはぎゅっとくっつきながら、くすくすと笑い合ったのだった・・・・・。
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