こちらで過去のお話の制限を解除し始めているのですが、やっぱり時間かかっちゃいますね~
ひとつひとつ内容確認しながら、と思っているのですが、ついちゃんと読んじゃったりして、余計に時間かかってるw
でも過去作品を見直すのってちょっと楽しいです。
こんなお話描いてたなあって。
今度また、過去の作品を思い出しながら紹介できたらと思います。

とりあえず、こちらのお話をどうぞ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「向井~、アメちょうだい」

「ほい」

「サンキュー!」



クラスメイト達のやり取りをじっと見る。

今まで大して気にも留めなかったけど―――

「雅紀、どうした?」

クラスメイトで同じバスケ部の角田が俺を見た。

「いや・・・・。向井って、何部だったっけ」

「向井?えーと・・・確か写真部じゃなかったっけ」

「写真部なんて、うちの学校にあったんだ」

「らしいよ。なんで?」

「いや・・・あいつとあんまりしゃべったことないなあと思って」

「おとなしい奴だよな。暗いってわけじゃねえけど。いつもニコニコしてるし、なんかいつもアメを持ち歩いてるらしくって意外と女の子には人気あるって話だぜ」

「へえ・・・」


―――向井望。

陽に当たったことがないのかと思うくらい青白くひょろりと背の高い奴で、度の強そうな眼鏡をかけていた。

確か、いつもテストの点数がよくて先生に褒められてるっけ。

内気なのか、自分から発言するようなことはほとんどないけれど・・・。



あいつが、潤にラブレターを出したやつ。

翔ちゃんに話を聞いて、潤から何とかその名前を聞き出した。

潤からは『絶対余計なことしないでね?』と念を押された。

何もしないよ。しないけどさ・・・・

今までほとんど関わったことのないクラスメイトが、潤にラブレターを出したということに驚きを隠せない。

潤も、特に今まで向井と話したことはないと言っていた。

いったいなんで・・・・?




「ちょっと、翔ちゃんもう少し詰めてよ」

「雅紀、あんまり出るなって」

「カズ、押すなよ!」

昼休み、俺たち3人は潤が呼び出された学校の裏庭に来ていた。

もちろん、潤に見られないように校舎の陰に隠れて・・・



「あ、あれだよ、向井望」

向井が、落ち着かない様子できょろきょろしながら裏庭にやってきた。

俺の言葉に、2人がぴたりと動きを止めた。

「・・・なんか意外だな。地味っつーか・・・」

「オタクっぽい」

「カズ、はっきり言うな」

向井はそわそわしながら、大きく息を吸ったり吐いたりしていた。

「緊張してるな」

翔ちゃんの言葉に俺たちも頷く。

いつも青白い顔をしているけれど、今の向井はぶっ倒れちゃうんじゃないかと思うくらい真っ青な顔をしていた。


「あ、潤くん来た」

潤が、いつもと変わらない様子でとことこと歩いてきた。



「あ・・・・ありがとう、来てくれて」

少し震える声でそう言った向井に、潤は笑って首を振った。

「いえ。あの・・・手紙、ありがとうございます」

「いや、あの、ごめん。俺のことなんて、知らないよね?びっくり・・・・したよね」

「まあ・・・びっくりは、しましたけど。でも、うれしかったです」

「え・・・・ほんとに?」

向井の顔が、紅潮する。

「男から手紙なんて・・・・気持ち悪くなかった?」

「それはないです。あの、手紙にもそう書いてあって・・・・どう言えばいいかなってちょっと悩んだんですけど・・・」

そう言って、潤はちょっと自分を落ち着かせるように息を吐いた。

「俺・・・向井さんのことよく知らないけど、男だからダメとか、そういうことはないです。ただ・・・やっぱり、付き合うならちゃんと俺も相手のことよく知ってからがいいし・・・今、正直付き合うとかは考えてないんです・・・・」

潤の言葉に、向井が肩を落とす。

「そっか・・・・」

「ごめんなさい。でも、あの手紙は嬉しかったです。本当に。あんなに気持ちのこもってる手紙もらったの、初めてです」

「ホントに?俺・・・あの、今まで男を好きになったことはないんだ。でも、潤くんが雅紀と・・・お兄さんと楽しそうに話してるとこ見て・・・ほんと自分でもびっくりなんだけど、潤くんに一目ぼれしちゃって」

向井の言葉に潤の頬が染まる。

―――ああ、そのかわいい顔、見せちゃダメ!

「気持ち悪がられるかもって思ったんだけど、どうしても気持ちを伝えたくて・・・・伝えなかったら、きっと後悔すると思ったんだ」

向井の真剣な気持ちが、その声から伝わってきた。

「・・・今日、来てくれてありがとう。ちゃんと考えてくれて、うれしかった」

向井がどこか吹っ切れたようにそう言うと、潤も微笑んで首を振った。

「あの、それで、一つ聞きたいんだけど」

「何ですか?」

「その・・・俺、すごく目が悪くて、眼鏡なしだとほとんど見えないんだけど」

「はあ・・・・」

何の話だ?

潤がちょこっと首を傾げ、それを見ていた俺たちも首を傾げる。

「コンタクトにしようかどうしようか迷ってて。今まで、自分の見た目なんて気にしてなかったんだけど・・・・その、潤くんは、どっちがいいと思う?」

「え・・・・俺?」

向井が真っ赤になって頷く。


潤はちょっとの間ぽかんとしてたけど・・・・

ふっと少し笑うと、向井に近づき、おもむろにその眼鏡を外した。

「!!」

向井が、離れたところから見ていてもわかるほどびくっと震える。

「あ、かっこいい」

「へ・・・・?」

「向井さん、眼鏡外すとめちゃかっこいいよ。コンタクトって合わない人もいるみたいだから、これはあくまでも俺の意見だけど。コンタクト、いいと思います」

「は・・・・あ・・・・ありが・・・・とう・・・・」

「いえ。じゃ、俺行きますね。じゃ」

そう言って向井に眼鏡を返すと、潤は軽く手を振って走って行ってしまった。


残された向井は、口を開けたまま呆然とそこに立ち尽くしていたのだった・・・・・



俺たち3人はそっとその場を離れ・・・・


「あんなんされたら、誰でも惚れない?」

カズの言葉に、俺と翔ちゃんも頷く。

「あれはやべえな」

と、翔ちゃん。

「俺、潤の将来が恐ろしいんだけど」

「あれ、天然だからね。計算してない」

「「「おそろしいわ・・・」」」






その後。

コンタクトにして性格まで明るくなった向井は、めちゃくちゃもてるようになった。

そして

「雅紀、こんど家に遊びに行っていい?」

「やだよ!お前、潤に近づこうとしてんだろ!」

「あ、ばれた?だって潤くんともっと仲良くなりたいもん」

「ぜっっったいだめ!!!」

「いいじゃん、今度英語教えてやるから」

「・・・・少しなら、潤と話してもいいよ」

なぜか、俺は向井と親友になっていた・・・・。

 

 

 


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