新しい潤ゴトがなくて本当に寂しい毎日ですね。
楽しみと言えば月末のEnjoyの更新くらいでしょうか。
もしかしたら、今何かの準備をしているのかもしれないけれど、インスタでも何もお知らせないし、このままだと本当に干からびてしまいそうですわ。
でもきっと何か大きな楽しみが待っているはず!
と思って待ちましょうね!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「「「「誕生日、おめでとー!!!!」」」」
カズが、ろうそくの火を一気に吹き消す。
「ありがと」
ちょっと照れ臭そうに笑うカズ。
普段は生意気だけど、こんな時はやっぱりまだ中学1年生の男の子だと思う。
これで事実上、カズは3か月間潤の1歳上の兄貴になるというわけだ。
潤が我が家に来てからというもの、その3か月の間のカズは傍目にも張り切ってるというか、兄ちゃん感が半端なくて、それは俺らから見るとすごくほほえましいものだった。
「潤、ケーキシャインマスカットにして正解!めっちゃうまいよこれ!」
雅紀が興奮気味にそう言いながらケーキを頬張る。
「ホント、これうまい。スポンジもふわっふわだね」
と、俺もケーキを口に入れる。
「ホント?よかった」
潤がちょっと恥ずかしそうに小首を傾げつつ嬉しそうに言って笑った。
「カズ、おいしい?」
そして潤に聞かれたカズは、もちろん嬉しそうに頷いたけれど―――
「おいしいよ。おいしいけど・・・・潤くん、量の配分はこれでいいの?」
「え・・・・?」
5人兄弟だから、当然ケーキも五等分。のはずだけど・・・・
「俺の、すげえデカいけど・・・・」
カズの分は、たぶん全体の4分の1よりも大きい。
そして
「俺のはちっちぇえなあ」
そう言った智くんの分は、8分の1くらいか・・・?
「ぁ・・・・ごめん」
「いや、潤の方が小っちゃくない?それ10分の1くらいしかなくね?」
俺がそう言って潤のケーキを見ると、潤が首をかしげる。
「・・・・そうかな」
いや、誰も怒ってはいない。
むしろ、不器用な潤がかわいくて、おかしくて―――一生懸命笑いをこらえてるのだ。
「ご、ごめん、智、俺のも食べていいから」
そう言って自分の分を智くんに差し出す潤に、智くんがこらえ切れずに笑いだす・
「ぷはっ、いいって、全然!潤、俺のもやるから食べな」
「い、いいよ、智にも食べてほしいもん」
「なら、潤くんには俺のやつ半分あげる」
そう言ってカズが自分のケーキを切り分け始める。
それを見た智くんが
「おい、なら俺にもくれよ!」
「やだ」
「おい!」
「え、だから智には俺の―――」
「ははっ、それじゃ意味わからんから、智くんには俺の分けるよ」
「え・・・翔くんのはいらねえ」
「なんでだよ!」
「あ、じゃあ、潤には俺のあげようか?」
「ええ?なんでまぁくんが?」
「てか、あんたもうほとんど食べちゃってるじゃん!!」
「ふはは!ほんとだ!」
―――結局、潤にはカズのケーキを半分、智くんには俺のケーキを少し(もう半分以上食べてたから)分けることで何とか落ち着いたのだった・・・・。
「しょおくん、洗濯物持ってきたよー」
部屋の扉をノックする音に、俺は椅子から立ち上がって扉を開けた。
「潤、ありがと」
畳んだ洗濯物を両手に持って、潤が入ってくる。
「・・・ほんとに、背え伸びたなあ」
「そお?」
「うん。前は洗濯物持ってると顔が見えなかったのに」
「えー、そんな?」
「ふふ、そんなだったよ」
潤から洗濯物を受け取り、椅子の上に置く。
「―――潤、ちょっと座って」
そう言って、俺はベッドに座って自分の隣をポンと叩いた。
「ん?なに?」
潤が素直に俺の隣に座る。
「最近、学校どう?」
俺の言葉に、潤がきょとんと目を瞬かせる。
「どうって?」
「前に・・・小栗にカズとのことで、嫌なこと言われただろ?」
「ああ・・・大丈夫だよ。旬はあの後すぐ謝ってくれたし、俺も、手を出そうとしたことは謝ったから」
「そっか。他は?何か言われたりしてない?」
俺たち兄弟の噂で、潤が攻撃を受けてるかもしれない。
そんなことを、俺たちは心配していた。
潤は繊細だけど芯の強い子だ。
だからこそ、何か嫌なことがあっても俺たちには言わずに1人で抱え込んでしまうんじゃないか。
1人で傷ついているんじゃないかと心配になってしまう。
「・・・噂のことなら、大丈夫だよ。たまにからかわれたりすることもあるけど、みんな本気で疑ってるわけじゃないから、ただ面白がってるだけ」
「そっか。ならいいけど。他には?勉強以外のこととかでも、何か困ってることないか?」
「え~、困ってること・・・は、別に・・・・」
―――ん?
急に潤の歯切れが悪くなる。
―――これは・・・・?
「潤?正直に言えよ?」
「う・・・・でも、ほんとに、大したことじゃないし・・・・」
そう言いながらも潤の目が泳いでいることを俺は見逃さない。
「じゅ~ん」
「・・・・・笑わないでね」
「ん。約束する」
「・・・・しょおくんは・・・・男子から告白されたこと・・・・ある?」
「・・・・・・・・・・・あ”?」
今、なんつった?
男子から告白?
―――まさか・・・・
「誰?小栗?」
「ち!違うよ!」
「じゃ、誰?」
思わず声が低くなる。
潤が、ますます落ち着きがなくなる。
「2年生・・・たぶん、まぁくんと同じクラスの人・・・・」
「で、なんて言われた?」
「手紙、もらったんだ」
「へえ・・・?」
「金曜日に、下駄箱に入ってて」
下駄箱にラブレター?
そりゃまた古風なやつだな。
「それで、どうしたらいいかと思って」
「どうしたらって・・・付き合うかどうかってこと?」
胸がざわざわする。
「そうじゃないよ。付き合うつもりはない」
「そっか」
ほっと胸をなでおろす。
「でも、俺男子から告られるのって初めてだし・・・。手紙読んだんだけど、すごくまじめな人みたいで、なんていうか・・・・すごい、気持ちが伝わってきたんだ」
潤の目が戸惑いに揺れていた。
「・・・・付き合うつもりはないけど・・・でも、その人を傷つけたくないなって思って」
「・・・・いつ返事するんだ?」
「明日」
「そっか」
「あのね・・・しょおくんたちと俺の噂を聞いた時、兄弟っていうことよりも男同士っていうことをみんな面白がってるんだなってわかったんだ。男同士が付き合ったりするのは普通じゃなくて気持ちが悪いって、そういう風に思われてるんだって。でも・・・俺がおかしいのかもしれないけど、男同士が付き合うってそんなにおかしいこと?」
潤が、その純粋な目で俺を見てくるのにドキッとする。
「好きになった人が、女か男かなんて、そんなに重要なのかな?同じ『好き』なのに、それが男同士だと気持ち悪いって思うのは何でなのかな」
「そうだな・・・」
「その人の手紙・・・・本当に俺のこと好きっていう気持ちが伝わってきた。でも俺が断ったら、その人が『やっぱり男だから』って思って傷つくんじゃないかと思って・・・。そうじゃないって、どうしたら伝わるかなって」
うつむき、そう言ってため息をつく潤。
俺は、そんな潤の頭をそっと撫でた。
「そのまま、伝えればいいんじゃないか?」
「・・・・伝わるかな?」
潤が不安そうに俺を見上げえる。
「大丈夫。潤のこと好きになるなんて、そいつ見る目あるじゃん。そう思わないか?」
「そうかな・・・・」
「俺はそう思うよ。少なくとも、俺らのこと面白がってからかうやつらよりずっといいと思うね。潤は、そう思わない?」
「・・・・思う」
「だろ?だったら、その気持ちを伝えればいい。大丈夫。お前のこと好きになった奴なら、きっとわかってくれる」
その言葉に潤はちょっと考え・・・・
やがてニコッと笑うと、俺を見た。
「ありがと、しょおくん。しょおくんに相談してよかった」
「そっか?」
「うん、ありがとね。お休み」
「・・・おやすみ」
潤が出ていき、しばらく俺はそこから動くことができず――――
ふう、と息をついた。
まだ胸がざわついてる。
潤が手紙の主と付き合うつもりはないって知ってほっとした。少なくとも、今回は。
でも今後は?
男でも女でも、もし潤が付き合いたいと思うやつが現れた時―――
今日みたいに潤が俺に相談してきたら、俺は冷静でいられるだろうか?
「―――絶対無理だわ」
そう声に出してから。
俺は、部屋を出て雅紀の部屋へと向かったのだった・・・・。
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