今日も風が強いですねー
花粉症なので、こういう日はなるべく外に出たくないですね。
ところで、潤くんはいつになったら表に出て来てくれるんですかね~
待ち遠しくてたまりません。

ではでは、お話の続きをどうぞ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

男なら誰もが経験するのが声変わりだろう。

潤とカズももちろん。

だから別に驚きはしなかったんだけど―――

「智」

後ろから声をかけられて、びくっと体が震える。

振り向くと、潤がきょとんとした表情で俺を見上げていた。

「ごめん、びっくりした?」

「ああ、いや、大丈夫・・・」

「そ?あのさ、このシャツ、絵の具のシミが落ちなくて」

そう言って、潤が青いシミの付いたシャツを見せる。

「ああ、それ油絵具だからなあ。つけないように気を付けてたんだけど・・・。いいよ、下の方だから目立たないし、そのままで」

「ええ?でも結構でかいし・・・。ちょっと預かっていい?ネットで染み抜きの方法調べてみるから」

「うん、もちろん。ありがとな、潤」

「ううん」

にっこり笑ってシャツを手に自分の部屋に戻る潤。

いつもと同じ、かわいい笑顔。



声変わりをして、潤もカズも声が低くなって、違和感がすごかったけど。

でも俺らも経験したことだから驚きはしなかったんだ。

カズなんか低くなったって言っても男としちゃあその声は高い方で、本人の方が面白くなさげだった。

けど潤の方は、なんていうか、今までが女の子みたいな声だったからなのか、低くちょっと鼻にかかったような癖のある声になって、今だ慣れなかった。

そういえば、中学生になって3ヵ月が経とうとしているが、この3ヵ月で潤はずいぶん背が伸びた。

前は156㎝カズよりも小さく150㎝もなかったのに、今はカズとほぼ変わりなく、すぐに抜かしそうな勢いだ。

そして足も大きくなり、入学時に買ったスニーカーはすでに履けなくなっていた。

手足も伸びたせいで肩がしっかりして男性的な体形になってきたが、細く縊れた腰はちょっと女性的でもあり、白い首も細く長くその上に乗った小さな頭がスタイルをよく見せている。

背が伸びても童顔はそのままで、アンバランスなその容姿は何とも言えないミステリアスな雰囲気を醸し出していた。



「何緊張してんの、あんたは」

カズが呆れたように俺を見る。

「だって・・・なんか潤が急に大人っぽくなちゃって、なんつーか・・・・」

「色っぽい?」

カズがにやりと笑う。

「おまえな・・・12歳が、生意気なことゆーな」

「馬鹿じゃないの。今時、小学生でもそれくらい言うよ。てか、俺明日で13歳だけど」

「・・・・知ってるわ」

「嘘つけ、忘れてただろ」

「忘れてないって!ちゃんとケーキも・・・翔くんが買ってくるし!」

俺の言葉に、カズがため息をついてじろりと睨んだ。

「別にいいけど。俺も自分の誕生日に興味ないし。それより、あんまり潤くんをいやらしい目で見るなよ」

「・・・・やっぱだめか」

「否定しないのかよ」



だって、本当に潤が急に色っぽくなってしまってドキドキしてるんだよ。

前から可愛かったけど、今はそれに艶が加わって、幼いのになんとも言えない色香が香ってくる感じだ。

それにそう感じてるのは俺だけじゃない。



「翔くん、明日どこでケーキ買う?」

リビングでテレビを見ていた翔くんに声をかけると、翔くんが不思議そうに俺を見る。

「ケーキ?」

「カズの誕生日だろ?」

「あ・・・・」

翔くんも忘れてたな。

「そ、そうだな。いつも行くケーキ屋・・・」

「あそこ、先月潰れたよ」

床に寝そべって漫画を読んでいた雅紀が顔を上げずに言った。

「え!マジで?」

「うん。先週、部活の後ケーキ食べたくなって学校帰りに寄ったらなくなっててびっくりしたもん」

「マジか・・・。翔くん、他のケーキ屋さんわかる?」

「何件かは・・・でも、どこのケーキがいいか・・・・」



「俺、作ろうか?」

後ろから聞こえた声に、雅紀も翔くんもはじかれたようにそちらを見た。

潤の顔を見て、うっすらと2人の顔が赤くなる。

―――2人とも、俺と同じ反応だな。

「明日日曜だし、部活も午前中だけだから、帰って来てから俺が作るよ」

「潤くんが作ってくれんの?すげえ楽しみ」

そこへカズも来て話に入る。

「ん。ケーキ作るの久しぶりだけど、頑張るよ。カズ、どんなケーキがいい?」

「潤くんが作ってくれるならなんでも」

「じゃ、楽しみにしてて」

にっこり笑う潤に、カズも嬉しそうに笑った。





コンコン


部屋をノックする音に、俺はベッドで体を起こす。

「智、いい?」

「潤?いいよ」

扉が開き、潤が顔をのぞかせる。

俺は起き上がると、読んでいた漫画を机の上に置いた。

「どした?」

「うん、明日のケーキなんだけどさ・・・」

潤が扉を閉め、ベッドに腰を下ろした。

「毎年、メロンとかマスカットのケーキ、買ってきてたでしょ?今年は何がいいか、相談したくて」

俺は潤の隣に体を寄せ、うーんと考えた。

「そうだなあ。あいつ、潤の作ったのならなんでも喜ぶと思うけど・・・・」

「だから、智に聞きに来たの」

困ったように笑う潤は、やっぱりかわいい。

背が伸びても、声が低くなっても中身まで変わるわけじゃない。

素直で優しい性格はそのまんま。

だけどちょっとしたしぐさや視線がどことなく色っぽくて、ドキッとしてしまうんだ。

「・・・材料、買いに行くならいっしょに行こうか?」

「いいの?これから行こうかと思ってたんだけど」

「もちろん、俺、荷物持つから」

「ありがと!智」

「・・・・・潤、やっぱりかわいい!!」

思わず潤を抱きしめ、その勢いで潤と2人、ベッドに倒れこむ。

「うわ、何だよぉ、智」

潤がキャッキャと笑うのも、声は低いのにどこか甘ったるくてかわいい。

「だってかわいいから。ちゅーしたくなる」

「うはは、何言ってんだよ、もお」

全然本気にしてない潤は、抵抗もしない。

このまま本当にちゅーしたら、どんな顔するかな。

怒るかな。

泣くかな。

・・・・・

たぶん、翔くんたちに殺されるな。


―――まだ殺されたくねーな。


そう思って

俺は、潤の柔らかい頬に軽くちゅっとキスをした。

潤がピクリと震える。

「―――智?」

「んふふ。いこっか」

そう言って、俺は目をまん丸くしてる潤の手を引っ張り、立ち上がらせた。




俺はずっと部活も美術部で、運動は嫌いじゃないけど学校の授業以外でやることはないからあまり外へも出ない。

性格的に家で絵を描いたりしてるのが好きなんだ。

そんな俺が喜んで外へ出るのは潤が一緒にいるときくらいだ。

昔はよく潤と手を繋いで公園へ遊びに行った。

そんな時、カズも潤と手を繋ぎたがるから、大体潤は真ん中で。

中学生になってからはさすがに外で手を繋ぐのは恥ずかしがってしなくなったけど、こうして時々一緒に出掛けるのは嫌がらないし、たまに肩を組んでも嫌がったりしない。

学校で、俺ら兄弟が仲が良すぎて怪しいという噂があるらしい。

潤だけ血が繋がっていないというのもみんな知っているから、俺たちが潤をかわいがりすぎるのが怪しいと・・・・。

それでも潤は俺たちを避けたりしないし、ちゃんと甘えてくれる。

俺たちは特に話し合ったりしたわけじゃないけど、みんな同じことを考えているのはわかる。

何があっても、どんなことからも潤を守る。



それでも、俺は時々考えるんだ。

潤を、いつか自分のものにできたらって。

そんな考え、間違ってるかもしれないけど・・・・




「あ、智見て。このシャインマスカットおいしそう」

そう言って潤が、きれいなシャインマスカットを見つけ身を乗り出すように見つめた。

「ケーキに合うかな?どう思う?」

「いんじゃない?うまそう」

「・・・智、真剣に考えてる?」

潤が俺を見てちょっと頬を膨らませる。

そんな顔もかわいくて、思わずにやける。

「うん。うまそうだと思うよ」

「そう?じゃ、これにしようかな。2パックもあればいいかな。あとは生クリームと・・・・」



こうと決めたら早い。

潤は次々に買い物かごに目的のものを放り込み、夕飯のおかず用の材料もまとめてかごに入れていった。

ずっと我が家の食事を作ってくれている潤は買い物も慣れたものだ。

俺はかごを2つ乗せたカートを押しながら、潤の後ろを着いて行った。



潤の後ろ姿は、やっぱり以前よりも背が伸びて男らしくなったみたいだ。

Tシャツの袖からのぞく腕は真っ白で、ウエストもまだまだ細かったけれど・・・。

子供っぽいところと大人っぽいところ。

そして、どこか中性的な雰囲気があると思うのは、俺の気持ちの問題なのか、それとも潤がもともと持っているものなのか・・・・。

白い肌、長い睫毛、そして赤い唇。

食材を真剣に吟味するそのきれいな横顔を盗み見ながら、俺はやっぱり潤とずっと一緒にいたいと、できることなら自分のものにしたいと、そう願っていた・・・・。

 

 

 


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