ようやくクライマックス！
次回で最終回、の予定です。
サクラ咲け、ですからね。
やっぱり桜の季節で終わりにしたいなあと。
「すげえな」
大野さんの言葉に、俺たちも思わず頷いた。
日が傾き始めたころ、俺たちは一度別れ相葉と松本は相葉の親戚の家へ、俺たちは宿泊するホテルへと帰った。
ホテルに戻ってシャワーを浴びた後、再び2人と合流。
やってきたのは相葉の親戚の家。
趣のある広い庭のある家で、その庭を見渡せる広間にはたくさんの料理が並べられていた。
「今日は先生たちがいらっしゃるっていうんでたっくさん用意しましたからね！さあさあ、どうぞ！」
そう言いながら、相葉の母親がにこにこと席を勧めてくれる。
その料理の数たるやすごいもので。果たしてこんなに食べきれるのか・・・・・？
「ほら潤ちゃんも座って！」
相葉と一緒に部屋にやってきた松本も、相葉の母親に手を引かれ座らされる。
ちょこんと座る松本は、前に座っている俺達を見てちょっと照れくさそうに微笑んだ。
「なんか、先生たちがそういうかっこしてそこに座ってるの変な感じ」
松本の隣に座った相葉が俺達を見てそう言って笑った。
「俺たちも変な感じだよ。いつも制服姿のお前らしか見てないからな」
ニノが言うと、大野さんも頷いた。
相葉は白いTシャツにデニムの短パン。
意外と筋肉質な腕と細くて長い足を持て余すように胡坐をかいて座るその姿は、日に焼けてより茶色くなった髪の毛と健康的に日焼けしたその顔も合わせ普通にイケメンだ。
うちは男子校だが、きっと共学なら絶対女子にもてただろうなと思った。
その隣に座る松本は大きめの黒いTシャツに切りっぱなしのデニムの短パンで、華奢な白い手足をより一層白く見せていた。
細く長い首に乗った小さい顔も透けるように白く、大きな目を縁取る睫毛は瞬きをするたびにバサバサと音を立てそうだ。
制服を着ている時にはそこまで思わないが、こうして相葉の隣に座っている姿はまるで女の子のようで、寄り添うその姿は相葉の彼女みたいだった。
「潤ちゃん、食べてる？ほら、これおいしいよ」
相葉の母親はよほど松本がかわいいのか、食事中もゆっくりと箸を口に運ぶ松本に料理を次々に薦めていた。
「やめろよ母ちゃん、潤ちゃんが困ってるだろ！潤ちゃんはゆっくり食べる子なんだから！」
「大丈夫だよ、まぁ。おばちゃん、ありがと。これ、すっごく美味しい」
「あらよかった！たくさん食べてね！」
相葉の家族はみんな陽気で人懐こく、相葉が学校でも人気者なのがとてもよくわかった。
俺たち教師には酒までふるわれ、いつの間にか大野さんもニノもすっかり酔っぱらっていた。
「あれ？」
気付くと、松本の姿が見えなかった。
相葉はニノと大野さんの間に座り、2人とげらげら笑いながら盛り上がっていた。
「こんなところにいたのか」
広い庭の、海に面した一角に置かれたビーチベッドの一つに寝そべっていた松本。
俺がその隣のビーチベッドに腰掛けると、驚いた様子もなくこちらを見て微笑んだ。
月明かりに照らされた松本の瞳が、キラキラと輝いて見えた。
「星が、すごい綺麗なんだ」
松本が空を見上げる。
俺もベッドに寝そべって夜空を見上げると、そこには本当に綺麗な満天の星。
「―――すげえな」
「でしょ？」
しばらく2人無言で星空を見つめていた。
何から話そうか。
俺はずっと考えていたけれど・・・・
「・・・・好きだよ、松本」
普通に、そんな言葉しか思い浮かばない。
伝えてる気持ちではあるけど。
他にどう言ったらいいのか・・・・
「・・・・いい加減な気持ちじゃない。お前がちゃんと学校を卒業できるように、このことは学校では秘密にしなきゃいけないけど、でも俺は―――」
「先生」
「うわぁッ？」
気付くと、松本が上から俺の顔を覗きこんでいた。
なぜか俺の体に覆いかぶさるようにして俺を見ていた松本。
突然の状況に、俺は心臓がバクバクして動揺しまくっていた。
「ま、ま・・・・」
「せんせーの顔が見えないんだもん」
「へ・・・・？」
「ちゃんと、せんせーの顔が見たい。目を見て・・・・言って欲しい」
大きな瞳が、不安に揺れていた。
「松本・・・・・」
俺は手を伸ばし、その柔らかそうな白い頬に触れた。
「好きだよ・・・・。俺は、松本が好きだ」
「・・・・俺も、せんせーが好き。大好き」
「学校では2人で会ったり話したり、出来ない。寂しい思いをさせるかもしれない。それでも・・・・いいか？」
松本が、こくんと頷く。
目には涙が溜まっていた。
大きな瞳がきらきらと輝いて・・・・
月の光に照らされて
光り輝く瞳からこぼれた涙が、俺の頬を濡らした。
俺は松本の頬に触れていた手でその柔らかい髪を撫で、そのまま松本の頭をそっと引き寄せた。
ゆっくり目を閉じる松本。
重なった唇は、柔らかくて
少しだけ、しょっぱかった・・・・・
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