某ヒットドラマにめちゃくちゃ影響を受けて書いてしまったお話です。
とりあえず潤ちゃんがモテモテのお話は書くのが楽しい!
ということで、ゆっくりではありますが連載になりますので、末永くお付き合いくださいませ!




星星星星星星星星星星星

 

 

「え・・・・・何これ」

部長に頼まれて、パソコンでPOPデザインを編集しようとしていた。

個室になってる部長室では今部長も席を外していたため誰もいなかった。

そのパソコンで画像ファイルを検索していた俺の目に、突如飛び込んできた1つのファイル。

うっかり開けてしまって、俺は固まった。

そこには大量の隠し撮り写真。

千枚近くも保存されているその写真に写っていたのは。

俺。

デスクで仕事をしている俺。

外回りをしている俺。

食事をしている俺。

同僚と談笑している俺。

「なんで、こんな写真がここに・・・・・?」

これは、部長が使っているパソコンだ。部長が管理している資料などを使いたいときには

部長から使用許可をもらって使うこともあるけれど

通常、必要なファイルしか開かないから

こんなふうに他のファイルを見てしまうことなんてない。

でも、なんで?

俺、もしかして監視されてる?

そりゃあ、特に有能ってわけじゃないけど、仕事さぼったりはしてないんだけどな・・・・

「ありゃ、見ちゃった?」

「うわぁッ」

突然背後から声をかけられ、思わず飛び上がる。

「部、部長!」

いつの間に入ってきたのか、いつもと変わらぬ穏やかな笑顔を浮かべる大野部長が、そこにいた。

「な、なんで・・・・あの、この写真・・・・」

「んふふ、可愛いから」

「か・・・・・?」

「松本」

「は、はい?」

「今日、一緒にご飯食べにいこ」

「え・・・・・」

「話したいことがあるから」

「は・・・・わかりました・・・・・・」

何が何だかわけがわからず。

俺は部長室を出たのだった・・・・・。




「松本、どうした?」

部長の部屋から出てきた松本に声をかける。

なんだか心ここにあらずという感じ。

「え・・・・いえ、別に、何でもないです」

全く何でもないって感じじゃねえな。

部長のやつ・・・・松本に何した?

俺はさりげなく席を立つと、部長室へ向かった。

「―――失礼します。部長・・・・松本に、何か言いました?」

「お、翔ちゃん。んにゃ、なんにも」

・・・・うそだな。

鼻がぴくぴくしてる

「智くん」

「はい。―――え」

部長である大野智とは、実は幼馴染だ。

と言っても俺は中学から私立の中学に通っていてそのまま大学までエスカレーター式だったから

智くんとは小学校までの付き合いだ。

1つ上の智くんはぼーっとしているように見えて意外と頭が切れる。

そして今や俺の上司なんだからびっくりだ。

「松本に、なにしたの」

「・・・・本当に何もしてないよ、まだ」

「まだ?」

俺の言葉に、智くんは口の端を上げてにやりと笑った。

「・・・・・何するつもり?」

「翔ちゃんには教えないよ」

「はぁ?」

「邪魔されたくないからね」

「邪魔って―――」

「俺、本気なんだ」

そう言って、不敵な笑みを浮かべる智くんに、俺は何も言うことができなかった・・・・・。




「松本、今日飲み行かないか?」

仕事終わり、松本に声を掛けると松本がちょっと困ったように俺を見た。

「課長・・・・すいません、ちょっと今日は・・・・」

「予定があんのか?いや、それならいいよ、別に」

俺の言葉に、松本がぎこちなく笑う。

なんだか、気になった。

―――何なんだ?



松本の退社後、俺はその後をこっそりつけようとして―――

「櫻井」

「・・・・はい」

大野部長に呼ばれ、部長の部屋へ。

「なに、智くん」

「お、イライラしてんね」

「別にそんなんじゃないよ。なに?仕事の話?」

「まあね。明日、新人が来るから」

「新人?この時期に?」

「ん。本社の方から出向してくるんだ。松本につけようと思ってるんだけど」

「はぁ・・・・いいんじゃないすか。あいつ、面倒見いいし」

「おっけ。じゃ、俺も帰るわ」

「・・・・お疲れっす」

いそいそと帰り支度を始める大野部長

なんだ・・・・?

妙に嬉しそうな・・・・・?






「松本、ごめん、待たせた」

「あ、部長・・・・いえ、大丈夫です」

ニコニコと、笑顔で現れた部長に俺は緊張する。

「あの・・・・」

「大丈夫だよ」

「え?」

「あの写真、悪用したりとかしてねえから」

「それは・・・・・ありがとうございます、でも・・・・」

「あれはね、俺の仕事中の癒しなの」

「癒し・・・・・?」

「人の上に立つ仕事なんて、ほんとは俺には向いてねえんだよ。怒るのも苦手だしさ、教え方も下手だし、いつも翔ちゃん―――櫻井に手伝ってもらっててさ。見てりゃわかるだろ?」

確かに、部長が人を怒鳴りつけてるとこなんて見たことない。

でもその人あたりの良さで、いろんな気難しい取引先ともうまくやってきてるって、櫻井課長が言ってた。

『あの人は、人に好かれる才能持ってる人なんだよ』って言ってたのよく覚えてる。

俺は、新人の頃からよくわからない理由で取引先やお客さんに怒られることが多くて、そのたびに部長が羨ましいって思った。

「松本?」

「あ、はい」

「俺ね・・・・」

「え?」

「松本が、好きなんだよね」




『あの・・・・俺は・・・・・』

『いいよ、急がないから』

『え』

『困っちゃうだろ?急にそんなこと言われて。大丈夫、俺待つから』




ぼんやりと1人で歩きながらさっきまでの部長との会話を思い出す。

どう考えたらいいかわからない。

今までそんなこと考えたこともなかった。

部長が、俺を好きだなんて。

ていうか、男同士で、とか

そういうの、違う世界の話だと思ってた。

『俺、待つから』

待つって、いつまで?

てか、俺、どうしたらいいの?

「あれ、潤、今帰り?」

「え・・・・あ、まぁくん」

スーパーの袋を手に、ニコニコと手を振りながら俺の方にやってきたのは幼馴染の相葉雅紀だった。

「どうした?なんかぼーっとしながら歩いてたけど」

「いや、別に・・・・買い出し?」

「んー、兄貴に頼まれて。今日は珍しく店が混んでてさ」

「へえ?」

まぁくんは5歳年上のお兄さんと2人暮らしで、小さな居酒屋をやっていた。

もっともその稼ぎだけじゃ苦しいからまぁくんは他のバイトもしているのだけれど。

「俺、手伝いにいこっか?」

「マジ?助かるけど、潤、疲れてるんじゃないの?」

「大丈夫だよ。その代りご飯食べさせてよ」

「もちろん!」

兄貴と2人で切り盛りしてる居酒屋。

従業員を雇う余裕がないのも知っているから、俺は時々ボランティアで店を手伝っていた。

その報酬の代わりに、ただでごはんを食べさせてもらったりしているのだ。

「なんかさ、合コンらしいんだけど元々予約してたはずなのに予約できてなかったとか何とかで急に10人くらいのお客さんが来ちゃって」

「ふふ、兄ちゃんテンパっちゃってるんじゃない?」

「そうなんだよ!潤が来てくれたらきっと喜ぶよ」

にっこり笑うまぁくんに、俺も笑顔になる。

1個上のまぁくんは兄弟のいない俺にとってお兄ちゃんみたいなものだった。

そのまぁくんのためならなんにも苦にならないよ。




「兄ちゃん、潤が来てくれたよ!」

「おー、潤!助かるよ~」

カウンターでニンジンと包丁を手に汗だくになっていたまぁくんのお兄ちゃんが俺を見て笑顔になった。

「大変そうだね。これ持ってけばいい?」

俺は手を洗い店のエプロンをつけるとカウンターに用意された料理の皿を手に取った。

「おう、あそこの団体さんの席、頼むわ」

「はーい」




テーブルを3つくっつけ広げた席に、10人くらいの男女が座って楽しそうに飲んでいた。

「お待たせしましたー」

そこへ料理の載った皿を持って行くと、数人の女の子たちが振り向き嬉しそうに笑った。

「あ、おいしそ~」

「ありがとうございま~す!あ・・・・」

女の子たちが、俺の顔を見上げちょっと言葉を切る。

「?え・・・何か間違ってました?」

注文の品間違えた?

「あ!いえ!大丈夫です!」

「お~い、かっこいい店員さん来たからって声色まで変わってんじゃ~ん!」

向かい側に座っていたちょっとちゃらい感じの男が身を乗り出す。

「え~、そんなことないし~。っていうか、さっきまでいませんでしたよね?」

「あ、はい。忙しいって聞いたんで手伝いに・・・・」

「え~、すごい、えらいですね~!よく手伝いに来てるんですか?また来ちゃおっかな~」

「こらこら!店員さんナンパしないの!すいませんね~」

「いえ・・・」

なんとなくちゃらい男の視線が鋭くなったように感じて、俺はその場を後にしようとした。

そのとき。

「すいません、生一つ」

ちゃらい男の隣に座っていた、猫背で小柄な男がふいに顔を上げて俺を見た。

「あ、はい」

一瞬、視線が絡み合う。

目の前にいる女の子たちの会話には全く興味を示さない感じ。

なんとなく、不思議な雰囲気を感じた。

「あっれー、ニノじゃん!」

「え?」

俺の後ろで飲み物の載ったトレーを持って来ていたまぁくんが、そう言って猫背の男を見て目を丸くしていた。

 

 

 

 



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