99.9最高に面白かった!
て、すいません、だいぶ出遅れてます・・・・・
いろいろやらなくちゃいけないことが山盛りで、リアタイできたにもかかわらず何もこちらにかけなくて、小話もいろいろ書きたいのに書けなくて・・・・。
もう少し落ち着いたら、いろいろ書きたいと思ってますのでもうちょっとお待ちいただけたら嬉しいです。
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『大好き』
松本潤の甘い声と、妖しい微笑みが、頭にこびりついて離れない。
自分よりも年下の、男子高校生にこんな心乱されるなんて―――
松本潤の病室の前でふと足を止める。
中から、話し声が聞こえた。
「あ、今日は男の子が3人、来てるようですよ。初めて見る子たちで・・・・みんなイケメンだって看護師が騒いでました」
婦長がそう言ってにやにやと笑った。
イケメン、ね・・・・
婦長が扉をノックして開けると、紺のブレザーを着た3人の男子高校生が一斉にこちらを見た。
「回診の時間。どうする?もう帰る?」
松本がそう言うと、一番背の高い茶髪の男が少し不満げに口を尖らせた。
「ええ、俺もうちょっと潤ちゃんと話したい。翔ちゃんが、お前の声はうるさいからっていうから我慢してたんだよ」
「だって本当にうるせえんだもん。いいよ、ちょっとジュースでも買ってからまた戻ってくればいいじゃん」
そう言ったのは窓際の椅子に座って穏やかに微笑んでいた男で、端正な顔立ちの育ちの良さそうな男だった。
そしてもう1人、ベッドに腰掛けていた小柄な男がベッドからすとんと軽い身のこなしで降りると、松本に向かってにこりと笑った。
「じゃ、またあとで。潤のも買ってくるよ。なに飲みたい?」
「んー。じゃ、コーラ」
「ん、おっけ」
3人がぞろぞろ出ていくと、松本はにこりと笑って俺を見た。
「せんせー、昨日お休みだったね。何してたの?」
「家でゲーム」
「ふは、マジで?出かけたりしないの?」
「しない。ずっとうちにいた」
「え―、そうなんだ。だから先生色白いんだね」
「・・・松本くんに言われたくないよ。真っ白じゃん」
透けるような白い肌は、日に当たったことがないように見えるほど。
「俺は、焼けても黒くならないの。赤くなって終わっちゃう」
「あら・・・・すいません、松本くんのカルテ忘れてきてしまったみたい。すぐに持ってきますね」
婦長が慌てて部屋を出ていく。
「んふふ、あの婦長さんて慌てん坊だよね」
「かもね。どう?気分は」
「悪くないよ」
「・・・・嘘つかない」
「・・・・超だるい」
「だろうね。熱が下がってない。ちゃんと薬飲まないと」
「薬、嫌い」
「わがまま言わない。治らないよ?」
「・・・・治らなかったら、ずっとせんせーの傍にいられるじゃん」
うふふ、と笑いながら俺を上目使いに見つめる。
患者にそういうこと言われるのは、初めてじゃない。
これでも結構もてる方だし。
でも相手にしたことなんてなかった。
「・・・・傍に、いたいの?」
「うん」
俺の首に、その白い腕を絡ませる松本。
「松本くん、俺は―――」
「潤だよ」
「え」
「潤って呼んでよ」
「潤・・・・くん」
「んふふ。せんせ―可愛い」
潤くんがベッドの上で背伸びして、そっと目を閉じる。
赤い唇に誘われるように、俺は唇を重ねようとして―――
―――ガラッ
扉の音に、はじかれる様に離れる。
入ってきたのは―――
「・・・松本、ごめん、俺先に帰るわ」
さっきの3人の中にいた、端正な顔立ちの男だった。
「しょおくん。どうかした?」
「学校から電話が来てさ。生徒会のことで話があるって。面倒くさいけど行ってくるわ」
「そっか・・・・」
潤くんの顔が、寂しそうに曇った。
俺の胸が、きしむように痛む。
「また来るよ。ちゃんと食えよな。お前、また痩せたぞ」
「ん・・・・ありがと、しょおくん」
「ん」
男は爽やかな笑みを潤くんに向け―――
俺のことをちらりと一瞥すると、部屋を出て行った。
「せんせー?どうかした?」
「あ、いや・・・・何でもないよ。あの彼は、クラスメイト?」
「うん。櫻井翔くん。生徒会長でね、すごく頭がいいんだよ」
そう言って潤くんはまるで自分のことのように誇らしげに笑った。
だけど俺は笑い返すことができなかった。
櫻井翔の、潤くんに向けられた視線はとても優しいものだったけれど。
一瞬、俺に向けられた男の視線はぞっとするほど冷たいものだった。
「あとの2人も、クラスメイト?」
「うん。あの茶髪の背ぇ高い方が相葉雅紀で、ちっちゃいのが大野智。あの2人はちょっとおバカだけど、優しいんだよ」
「仲いいんだね。女の子が来た時よりもうれしそう」
「女の子は別に仲いいわけじゃないし。勝手に来るだけだから。あの3人は、なんか気が合うんだよ。みんな性格とかバラバラなんだけど、一緒にいて楽なの」
無邪気な笑顔。
本当にあの3人が好きなんだろう。
それは、友情?
それとも―――
「潤ちゃーん、終わったぁ?あ、まだだった?」
再び扉を開けて入ってきたのは、相葉雅紀と大野智だった。
「すいません、そろそろ終わったかと思って・・・」
「もう終わりだよ。じゃあ松本くん、ちゃんと薬飲むようにね」
「はぁい」
ニコニコと楽しそうに手を振る潤くん。
「潤、コーラ」
「あ、ありがと、智」
大野智がまたベッドに腰掛け、潤くんにコーラを渡す。
大野もまた俺の方は一切見ずに潤くんにぴったりと寄り添うように座る。
そして相葉も潤の肩を抱くようにベッドに腰掛け、3人がぎゅうぎゅうになって座ったのだった。
―――くっつき過ぎだろ。
そう思いながらも、俺は黙って部屋を出るしかなかった。
閉じられた扉の向こうからは、楽しそうな笑い声。
俺は小さく溜息をつき、歩き出した。
「あ、先生!すいません、カルテが見つからなくて―――」
「あとでいいよ。次、先に行こう」
「あ、はい」
息を切らしながらついてくる婦長とともに、俺は仕事に戻る。
仕事に―――
そう、潤くんと一緒にいるとき、俺は医者ではなかった。
仕事のことなんて、何も考えてなかった。
潤くんのことしか・・・・
その肌に触れたい
その唇に再び・・・・
それしか、考えてなかったんだ・・・・。