このお話は2013年7月31日にUPしていたものです。
しやがれで、潤ちゃんが『花束を買いたい』と言って、翔くんが花屋さんを紹介すると言っていた時だったと思います。
映画とかドラマとかっていうのは、たぶん陽だまりの彼女とかはじまりの歌のことかなぁ。
すいません、うろ覚えであせる

 

゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


 

『花束を、買いたいんだよね』


テレビ番組の収録のとき、ちょっと恥ずかしそうにそう言っていた潤。


―――花束って、誰に?


そう聞きたかったけど、収録中にそんなこと聞けるわけないし。


そのあと、ニノが言ったんだ。


『花束あげたらかっこいいよね』


胸が、ドクンとイヤな音をたてた。


―――もしかして、ニノ?


いつの間に?


考え出したら、どんどん悪い方向に考えがいってしまう。






『ピンポーーーーン』



「―――はーい」


インターホンに出ると、液晶画面に潤の顔が映る。


「へ―――ど、どうした、の?」


思わずどもる。


『ちょっと―――渡したいものがあって・・・・今、少しだけ時間ある?』


「あ―――うん、ちょっと待って」


俺は慌てて玄関に向かった。





手に黒い紙袋を提げた潤が、遠慮がちに部屋に入ってきた。


久し振りの潤の訪問に、緊張する俺。


潤はどことなくウキウキしているように見える。


何か、いいことでもあったのかな・・・・


今日は、何してたんだろう?


「―――今日は、何してた?」


「ん?今日は雑誌の取材が3件続いてて」


「うお、マジ?超忙しくね?」


「映画とか、ドラマの取材が多いから」


「あー、そうだよね」


「翔くんもまだまだ忙しいんじゃない?」


「いやあ、俺はもうひと段落したよ。で・・・・そんなに忙しかったのに、どうしたの?」


「うん・・・・これ、翔くんに、プレゼント」


言いながら、潤が照れくさそうに持っていた紙袋を俺に差し出した。


「え・・・・俺に?」


びっくりして紙袋を受け取り、中を覗く。


「え、なに?ケーキ?」


入っているのはおしゃれな光沢のある箱。


それをそっと取り出してテーブルの上に置く。


重さはそんなにないみたいだけど・・・・?


「ふふ・・・・開けてみてよ」


「う、うん、じゃあ・・・・」


若干緊張しながら箱を開けてみると、そこには―――


「え・・・・バラ?」


真っ赤なバラと、白いカスミソウが箱に敷き詰められていた。


「あ!これ・・・!」


思い出した。


あの番組で、俺が潤に教えてあげた花屋のフラワーボックスだ!


「やっとわかってくれた?ショップ名の入った紙袋ですぐにばれちゃうかと思ったのに」


「あ、そういえば・・・・やべ、全然忘れてた」


「ふはは、マジか。持ってくるまで超ドキドキしてたのに」


「え・・・・・そうなの?てか・・・・何でこれ、俺に?」


今日は俺の誕生日でもなければ、何かの記念日でもないはず。


「え・・・・いや、別に意味は・・・・・」


「ええ?意味ないの?」


にしては、潤の顔は真っ赤で。


俺の鼓動も早まる。


「・・・・・・花束をね、送ってみたかったんだ」


「花束を・・・・・・?」


「うん・・・・・・好きな人に、送りたいなって・・・・・」


―――え・・・・・・・?


今、なんて・・・・・・?


俺が何も言えずにいると、潤は耳まで真っ赤にして、両手で口を押さえ―――


「ごめ・・・・・忘れて、今の。俺、帰るわ・・・・・」


そう言ったかと思うと、踵を返し部屋を出ようとする潤。


俺は反射的に、潤の手をつかんだ。


「ちょ―――待てって!忘れてってなんだよ!」


「だって・・・・・」


「忘れられるわけ、ないじゃん!だいたい、俺にもちゃんと言わせろよ!」


「え・・・・・?」


戸惑ったように俺を見る潤の目をまっすぐに見つめる。


「・・・・・好きだよ、俺も」


潤はその大きな目を、ますます大きく見開いて。


「うそ・・・・マジで・・・・?」


「マジだよ。なんでうそなの」


「だって・・・・翔くん、よく花をプレゼントするって言ってたから、そういう相手がいるんだと・・・・」


潤の言葉に、俺は溜め息をついた。


「いねえよ。あれは―――俺、よく結婚式とかパーティーに呼ばれるから、それで・・・・」


「あー・・・・・そうなんだ・・・・・」


潤がほっとしたように息をついた。


そんな潤を見ていたら、俺もじわじわと実感してきた。


なんか気恥ずかしくて、でも嬉しくて―――


「―――潤」


潤の手を、そっと握る。


潤が、潤んだ瞳で俺を見る。


「―――抱きしめても、いい?」


勇気を振り絞って言った言葉に、潤が無言で頷く。


俺は潤の手を引き寄せ―――


その細い体を抱きしめた。


「―――好きだよ」


潤の手が、戸惑いがちに俺の背中に回される。


「―――俺も」


記念日は、今日。



想いが叶った日。



来年は、俺から君に



愛を込めた花束を・・・・・





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