「じゅ~ん、一緒に寝よ~~~」
大野さんが床に座っていた潤くんにがばっと抱きつく。
「あー!ちょっと大ちゃん!潤ちゃんにくっつかないでよ!ずるい!」
酔っ払ってテンションの上がってる相葉さんは、さっきから声がバカみたいにでかい。
「近所迷惑ですよ!」
「なんだよ~、ニノ、いい子ぶってないでなんか面白いこと言えよ!」
「なんでですか!」
意味わかんないし。
潤くんはさっきからにこにこしながら大野さんにくっついて髪をなでたり、相葉さんのつまんないダジャレに笑ったりしてる。
―――楽しそうだから、いいけど・・・。
急に家を出ると言い出した潤くん。
きっと翔さんと何かあったんだろうと思ったけど、詳しくは聞かなかった。
潤くんがカレーを作ってくれてる間、大体のことは相葉さんから聞いたけれど―――
相葉さんも言っていたけど、翔さんの考えていることは俺にも理解できない。
潤くんは何も言わないけど、その目が寂しいと言っていた。
潤くんは嘘がつけない人だから。
その全身で『翔くんが好き』と言っているのがわかって、俺は切ない・・・・・。
俺が立ち上がると、誰かにズボンのすそを引っ張られる感覚。
見ると、潤くんが俺のズボンのすそを掴んで俺を見上げていた。
「どこ行くの?」
「トイレ」
「・・・・今日、泊って行ける?何も聞いてなかったから・・・・もし用事あるなら―――」
みんなでカレーライスを食べた後、大野さんが買って来てくれたビールを飲んでいたら、いつの間にか日付が変わっていた。
「大丈夫。明日の夕方までは、休みなんだ」
「ほんと?よかった」
そう言ってほっとしたように笑う潤くん。
本当に偶然だったけど、休みでよかった。
相変わらず潤くんにべったりな大野さんと、至近距離で潤くんとおしゃべりしている相葉さんを見て―――
―――この2人と一緒なんて、危険過ぎるでしょ。
と思ったのだった・・・・・。
トイレから出てくると、リビングに潤くんの姿が見えなかった。
「―――潤くん?」
床には、すっかり出来上がった大野さんと相葉さんが転がっていた。
―――どこに行ったんだろう?
きょろきょろしている俺の目に飛び込んできたのは、50センチほどの隙間が開いたベランダへ出る窓だった。
カーテンが風に揺れている。
そのカーテンをそっとめくり、窓を開けて見ると―――
手すりに寄りかかり、夜空を見上げている潤くんがいた。
「―――潤くん」
そばに行くと、潤くんが振り返った。
「ニノ・・・・今日は、ありがと」
「いえいえ。こっちこそごちそうさまでした。すごくおいしかった」
「ホント?良かった」
「―――相葉さんとはうまくやっていけそう?」
「うん。相葉ちゃんなら大丈夫」
「何かあったらすぐに言ってね。飛んでくるから」
「ふはは、スーパーマンみたい」
楽しそうに笑う潤くんの横顔を見つめる。
―――本当に、そう思ってるんだけどな。
潤くんが悲しむ姿なんて、見たくないんだ・・・・・。
「―――翔さんには、知らせないの?」
その名前に、潤くんの顔色が変わる。
「―――手紙を、置いてきた」
「そう・・・。ここのことは?」
潤くんは首を横に振った。
「しょおくんは優しいから―――きっと俺が1人でやっていけるか心配してくれる。しょおくんに会ったら、俺はきっと甘えちゃうから―――だから、しばらくはここにいることは言わない」
「そっか。でも―――翔さん、結婚するって言ってるんでしょ?それは・・・いいの?」
「・・・・いいのって?」
「好き・・・・なんでしょ?潤くん。翔さんのことが」
潤くんは、夜空の星を見上げた。
「―――好き、だよ」
うふふ、と笑う潤くんの笑顔がせつない。
「しょおくんのこと―――大好きだよ」
「だったら、結婚なんて反対したら―――」
俺の言葉に、潤くんは首を振った。
「―――しょおくんには幸せになって欲しいんだ」
「でも―――」
それじゃあ、潤くんの幸せは?
「しょおくんが幸せなら、俺も幸せだよ」
「そんな・・・・そんな、泣きそうな顔、してるのに?」
潤くんが、下唇をぐっと噛みしめる。
「―――ニノ、俺ね・・・・」
「うん?」
「俺、小学生のころ、学校でいじめられててね・・・・・親には言えなくて・・・・・学校に行くふりして、しょおくんに会いに行ったことがあるんだ。しょおくんの通ってる大学に行って、しょおくん探して―――。学校が嫌いだって言って泣いたの。クラス中が俺を嫌ってるから、行きたくないって。その時、しょおくんが言ってくれたんだ。たとえ世界中の人間が俺のことを嫌っても―――俺だけは―――しょおくんだけは、俺のことが好きだよって・・・・」
夜空を見上げる潤くんの瞳から、きれいな涙が零れ落ちた。
「しょおくんのその言葉があったから―――俺、今まで生きて来れたと思ってる。どんなにいじめられても、しょおくんは俺の味方だって。両親が死んだ時も―――しょおくんがいてくれれば、俺は大丈夫って思えた。その言葉を思い出すだけで、俺は幸せだと思えるんだ。だから・・・・今度は、俺がしょおくんの幸せの手助けがしたい。しょおくんのために、何かしたいんだ・・・・・」
そう言って笑う潤くんはとてもきれいで―――
俺は、何も言えなかった。
俺の知らない潤くんと翔くんの過ごしてきた時間。
そこに俺が入りこむことはできないんだって、思い知らされてるみたいだった。
「―――そろそろ、寝ようか。俺、ソファー借りていい?」
俺の言葉に、潤くんは首を傾げた。
「いいけど―――ベッドで寝れば?俺の部屋のベッド、セミダブルだし、ニノ小柄だから2人いけると思うよ?」
「え・・・・・・は?」
2人いけるって・・・・・
「潤くんと一緒に寝るってこと・・・・?」
「うん。ダメ?」
「だ・・・・ダメでしょ!それは、ダメだって!」
「そう・・・・?俺、そんなに寝相悪くないと思うけど―――」
「いや、そういう問題じゃなくって!」
「ん~、じゃあ、智と一緒に寝ようかな。ニノ、相葉ちゃんと寝る?」
「寝ないよ!てか、大野さんともダメだって!」
「なんで?」
きょとんとして俺を見つめる潤くん。
「なんでって・・・・・潤くん、今後、相葉さんに誘われても相葉さんと一緒に寝ちゃダメなんだよ?」
「え?そうなの?なんで?」
・・・・・・わざとじゃ、ないんだよな。
潤くんは、こういう子なんだ・・・・・。
―――やっぱり俺も、ここに住もうかな・・・・・
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