このお話の番外編を、これまでいくつか拍手お礼小話としてUPしていたのですが、小話の方はほとんど消してしまっていて、現在残っているのは1つのみで、別ブログの方でUPしています。
ほんとに、まるっきりの番外編でどちらかというと兄ズの妄想のような・・・・
兄ズとラブラブな潤ちゃんのお話だったんですけども。
消さなければよかったなあなんて、ちょっと後悔
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
「じゅーん」
廊下から聞こえてきた声に、俺は足を止めた。
生徒会室に向かう為に上っていた階段を降り、声の聞こえてきた廊下を見た。
少し離れた所に、後ろを振り向き止まっている潤が見えた。
そして、潤に向かって走ってくる男。
―――あれは確か、小栗旬とかいうやつだな・・・。
今潤とクラスで一番仲がいいやつだと、カズが言っていた。
「なぁ、今日部活ないだろ?遊ぼうぜ」
「テスト前だろ?勉強しないと」
潤の言葉に、旬は顔をしかめた。
「お前って真面目だよなぁ。いいじゃん、いつも部活で遊べないんだし、たまには」
「ダメだって。俺、カズと勉強する約束してるし」
その言葉に、旬はむっとした。
「またかよ・・・お前らってあやしいくらい仲いいよな」
「あやしい?」
「本当の兄弟じゃないんだろ?2人きりで本当は何してんの?いやらしいこととかしてるんじゃないの?」
潤の顔色がサッと青ざめる。
「―――もう一回言ってみろよ」
「だから、あいつにいやらしいことされてるんじゃ―――」
「―――んのやろう!!カズをバカにすんな!!」
潤が、旬に殴りかかろうと腕を振り上げた。
「―――潤!!」
俺は咄嗟に潤に駆け寄ると、その腕を掴んだ。
潤が驚いて俺を見る。
「しょお・・・くん」
「暴力は、ダメだろう?潤」
俺の言葉に、潤は下唇を噛みしめた。
驚いて固まっていた旬が、ほっと息を吐き出した。
「―――弟が、悪かったな」
そう言うと、旬は気まずそうに目を逸らせた。
「殴ろうとしたのは謝る・・・けど―――潤を傷つけるような言動は俺が許さない」
旬の体がビクッと震えた。
「覚えとけ」
「は・・・い・・・」
旬は消え入りそうな声でそう言うと、ちらりと潤を見て、走って行ってしまったのだった・・・・。
「潤」
生徒会室に潤を連れて行き、会長用の机の引き出しから出したものを潤に投げた。
「わっ」
突然のことに、潤は慌てて手を伸ばしそれをキャッチした。
「チョコ・・・・?」
「内緒だぞ。疲れてやる気が出ない時、チョコを一口食べると、元気が出るんだ」
「え・・・俺、貰っちゃっていいの?」
「食べな。元気、出るよ」
俺の言葉に、潤はそのチョコレートを一口食べた。
「―――おいしい」
「だろ?元気、出た?」
潤はこくりと頷いた。
「―――しょおくん、ごめんね」
「なんで謝るの。潤は悪くないだろ?」
「―――旬を殴ろうとした」
「それは、向こうが悪いんだろ?」
「でも・・・いつもはあいつ、あんなこと言わないんだよ。優しいし面白いし・・・カズのこと、嫌いなのかな」
「あー・・・それは・・・」
潤が、カズを優先するからだよ、とは言えなかった。
「お前と、遊びたかっただけだよ。明日、お前から話しかけたら、きっと普通に戻ってるんじゃないか?」
「そう・・・・かな。もし俺が、みんなと本当の兄弟だったら・・・・・あんなこと言われないよね」
下を向いた潤の瞳からは、涙が零れ落ちた。
「潤、それは―――」
「俺も、本当の兄弟ならよかったのに・・・・。そしたら、カズのことだって悪く言われたりしないのに・・・」
「潤・・・・」
俺は潤の傍へ駆け寄ると、その髪を撫でた。
潤は小さく震えながら、俺の胸に額を寄せた。
「・・・・血なんか繋がってなくたって、俺たちは家族だろう?」
俺の言葉に、潤が泣き濡れた顔を上げる。
「人の言うことなんか気にするな。カズだって、きっとわかってるよ。人がなにを言ってたってそんなこと関係ない。それより・・・・潤に、そうやって泣かれることの方が俺たちには辛いよ」
「しょおくん・・・・・」
潤が俺の背中にその細い腕を回し、きゅっと抱きつく。
俺は潤を抱きしめ、背中を擦った。
潤の涙に、胸が痛くなる。
だけどその痛みは、潤が泣いているからというだけじゃない。
俺は、潤と本当の兄弟じゃなくて良かったと思ってるから。
潤に対する気持ちは、兄弟としてだけではない、もっと深い気持ち・・・・・。
この想いは、潤を傷つけるかもしれない。
だけど、それを否定することはできなかった。
きっと、それは他の兄弟たちも一緒だ。
「潤、それより、試験勉強はちゃんとできてる?」
俺は、気持ちを切り替えるように明るい声で言った。
「・・・・うん、大丈夫だよ。カズと教え合いながらやってるから、覚えやすいし」
そう言って潤は涙を拭い、にっこりと笑った。
普段なら俺が2人の勉強を見てやるんだけど、今回は俺が生徒会の会長をやってることもあっていろいろ忙しくって見てやることができないでいた。
雅紀はあてにならないし、智くんもそういうのは苦手だ。
カズは器用だし人に何か教えたりするのもうまいけど、学校の成績自体は潤の方が良かった。
「そっか。大丈夫ならいいけど、もしわからないことがあったら聞きに来いよ」
「うん、ありがと。でも、翔くんも生徒会の仕事もあって大変でしょ?勉強も夜遅くまでやってるし・・・・ちゃんと寝れてる?」
潤が心配そうに俺を見つめた。
「気付いてたのか・・・・。大丈夫だよ。ちゃんと寝てるし、自分の限界はわかってるから」
「・・・・俺、夜食作って持っていくよ」
「それじゃ、潤の睡眠時間が減っちゃうだろ?俺のことは気にしないでいいから―――」
「だって、いつも翔くんに教えてもらってるから俺成績落ちずに済んでるんだよ?俺も、翔くんのために何かしたい」
そう言って、ちょっと拗ねたように俺を見つめる潤が、愛しくて仕方なかった。
「じゃ・・・・本当に、簡単なものでいいからな。自分の勉強を優先しろよ?俺のせいで潤の成績が下がったりしたら、あいつらに何言われるかわからないんだから」
その言葉に、潤は明るく笑った。
花が咲いたような明るい笑顔に、俺はホッと胸をなでおろした。
潤にはいつも笑っていて欲しい。
たとえ俺の想いが伝えられなくても、潤が傍にいてくれるなら。
潤が笑っていてくれるなら、それだけで十分だった。
「小栗が?潤くんにそんなこと言ったの?」
家に帰り、潤が夕食の準備をしている時に俺はカズを部屋に呼び今日のことを話した。
カズが眉を顰め、鋭い目つきで俺を見る。
「あいつ・・・!」
「まぁ、でもそれは単なるお前への嫉妬だから、気にするな。本気でそんなこと思ってるわけじゃない。ただ、潤と遊びたかったんだろ。潤がお前のことを優先したから面白くなかったんだ」
俺の言葉に、カズがふんと鼻を鳴らした。
「だろうね。いつも俺、あいつの邪魔してるから」
「あんまり、あからさまにするなよ。潤がお前を優先することはわかってるんだからさ」
俺がそう言って苦笑すると、カズはむっと口を尖らせた。
「だって、あいつだってあからさまに俺を邪魔にしたりするから」
「潤が困るだろ?潤にとっては小栗は大事な友達なんだから。うちに帰ってくれば小栗に邪魔されることはないんだから。な?」
「・・・・家に帰って着たら来たで、兄貴たちに邪魔されるもん」
「けどお前、夜は勝手に潤の部屋に忍び込んでんじゃねえか」
「いいじゃん、それくらい」
「・・・・カズ」
俺は、頬を膨らませふてくされているカズの顔を真剣に見つめた。
カズが、そんな俺の様子にちょっと目を瞬かせる。
「な・・・・何?」
「潤は、俺たちの兄弟だ。血は繋がってなくても、ずっと家族だ」
「・・・・わかってるよ」
「たとえお前でも・・・・・潤を傷つけるようなことは、絶対にするなよ?もしおまえが潤を泣かせたら・・・俺はお前を許さないからな」
カズの顔色が変わり、俺をじっと見返した。
大人びた、人を見透かすような瞳。
それでも、ずっと一緒に育った兄弟だ。
言葉にしなくても、相手が何を考えているのかは大体分かるつもりだった。
「・・・・わかってるよ。俺は、潤くんを泣かせたりしない」
そう言い放ったカズは、兄の俺を目の前にしても、全く怯む様子はなかった。
「・・・・なら、いい」
『しょおくん、カズ、ごはんできたよー』
潤の声が、聞こえた。
「はーい」
「今行く」
俺たちはそう返事をして。
お互いちらりと視線を交わし、部屋を出たのだった・・・・・。
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