チャイムが鳴り、休憩時間になると、俺は早速隣の潤くんのクラスへ行った。


俺が急いでいるのにはわけがある。


中学に上がって、俺と潤くんは別々のクラスになってしまった。


それだけだって不満なのに。


潤くんに近付く影に、俺のレーダーが反応していた。




「じゅ~ん、どの部活に入るか、まだ決めてないの~?」


ちょうど俺が教室の入り口から顔を出したとき、ちょうどそいつが潤くんに話しかけたところだった。


「うん・・・・・あ、カズ」


潤くんが、俺に気付いて手を振った。


俺はちょっと笑って見せ、ゆっくり中に入って潤くんに近付いて行った。


ちらりと、潤の傍に立っていたそいつを睨む。



小栗旬。



今、クラスで一番仲がいいと潤くんが言っているやつだ。


背が高く、きりっとした顔は女にもてそうだった。


野球部に入ろうと思っていたらしく、潤くんも誘われたと言っていた。


「ねえ潤、野球部に入ろうよ」


旬は入ってきた俺にはちらりと視線を向けただけで、潤くんとの会話を続ける。


―――やろう。無視しやがったな


「え~。野球は無理だよ。坊主とか日焼けとか、絶対NGだし」


「なんだよ、それ~。女みたいなこと言ってんなって。だって潤、小学校の頃はやってたんだろ?」


「やってたけど、別にそんなうまくもなかったし。ね、カズ」


潤くんが俺を見る。


「うまかったよ、潤くんは。でもキャッチャーだったからね、兄貴たちは写真が撮れないって文句言ってたけど」


「写真?へえ~、潤って可愛がられてるんだな」


クスクスと、からかうように笑う小栗。


思わずカチンときて、文句言ってやろうかと思ったけど―――


「兄弟なんだから、いいじゃん。とにかく、野球部には入らないよ」


ピシリと、潤くんが言いきった。


その言葉に小栗はちょっと目を瞠り―――


不満そうに眉を顰めると、『ふ~ん』と言いながら席を離れて行った。



小栗が離れたことにホッとしてると、潤くんがじっと俺を見た。


「カズ、気にしないで」


「え?」


「あいつ―――旬、口は悪いけど、いいやつなんだよ。一緒にいると面白いし。さっきのも、悪気があって言ったんじゃないから」


小栗を庇う潤くんに、ちょっと不満はあったけれど・・・・・


「大丈夫。気にしてないから」


と言って、俺は笑った。


潤くんはすぐに人に気ぃ使うから。


俺が小栗を嫌いと言ったら、きっと気にするだろうと思った。


だけど、別に小栗がどんなやつかなんて関係ないんだ。


潤くんに近付くやつは、結局どんなやつだって好きになんかなれないからね。


「―――で、結局何部に入るの?」


「うん・・・・すげえ悩んだんだけど、やっぱりバスケ部にしようかなって」


「バスケ部?なんで?」


ちょっと意外な気がした。


潤くんは外に出るのが好きだったし、もともとサッカーに興味を持ってたから、サッカー部に入るものだと思ってた。


バスケだって嫌いじゃなかったけど、翔くんと良くサッカーの話とかしてたし。


「昨日ね、智とちょっと話してたんだけど」


「うん」


「まぁくんは、バスケ部に入ってからすごく背が伸びたって」


―――ああ、なるほど。


「俺、ちっちゃいじゃん。女の子よりもちっちゃくて、からかわれたりするし・・・・・まあそれはいいんだけどさ。そんなに気にしてないし。でも、やっぱりもっと大きくなりたいなあと思って」


気にしてない、というのは嘘だと思うけどね。


3ヶ月俺の方が上だけど、同い年の俺よりも背が低いこと、潤くんは結構気にしてるんだ。


兄弟5人でいるときは俺の隣に立ちたがらなかったりするし。


「そっか。じゃ、俺もバスケにする」


「いいの?カズは別に、カズのやりたい部活に入ってもいいよ?」


「いいの。俺、特にこれと言ってやりたいと思うものもないし、バスケも好きだから」


「ふーん?ならいいけど」


そう言って、潤くんはちょっとほっとしたように笑った。



そんな潤くんを、ちょっと離れたところからじっと見ている小栗を、俺はちらりと見た。


―――あいつは、野球部って言ってたよな。


俺が気に入らないってのもあるけど、とにかく潤くんのことに関してはうるさい兄貴がいるからね。


俺が目を光らせてなきゃいけない。


あいつは絶対要注意だ。


かっこよくて性格もいいとか、一番嫌なタイプじゃん。


特に翔くんは潤くんのことに関しちゃめちゃめちゃ心配症だから、翔くんには気付かれないように気をつけないとな・・・・・




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