今回は智目線です

ちょっとまだ説明口調が多くて、智らしさがないですが・・・・・

可愛い潤ちゃんを心配する兄ズです。


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
 
 
「お~い、松本~」


後ろから名前を呼ばれ、俺は振り向いた。


「卒業式以来だな。明日は高校の入学式だろ?」


ニコニコとやってきたのは、中学時代の担任教師だった。


今日は潤とカズの入学式で、出席できない父親の代わりに、俺が2人の入学式に参列しに来たのだ。


3年生の翔、2年生の雅紀と、弟4人が同じ学校にお世話になっている。


「いやしかし、お前の弟たち、可愛いなぁ!男も女もそわそわしてるぞ!」


「・・・・・何で、2人別々のクラスなの?」


俺は、先生の言葉を無視してそう聞いた。


潤はA組、カズはB組だった。


「そりゃ、しょうがないだろう」


「困るんだけど」


「いや、参観日なんかはさ、2人のクラス交互に見ればいいだろう?お前んとこは他の学年にも兄弟がいて大変だろうけど・・・・」


そういうことじゃないんだよな。


カズは大丈夫。


あいつは見た目よりもずっとしっかりしてて、俺なんかよりも考え方が大人だったりするし。


心配なのは、潤だ。


小さくて華奢で、顔も女の子よりも女の子みたいで可愛い潤。


いつもニコニコしてて、人見知りもするけれど、人を疑うことを知らない純粋なその瞳に見つめられると、どんなやつでも潤の虜になっちゃうんだ。


でも潤にはそんな自覚ないから、近寄ってきたやつを疑うことなく受け入れてしまう。


そんな潤を、俺たちはみんな心配していた。


悪いやつに騙されたりしないか?


可愛すぎて攫われたりしないだろうか?


同じクラスのやつらだって安心できない。


可愛い潤にくらくらして、悪さしようとするやつがいたらどうする?


そんなやつらから学校にいる間も潤を守るのが、カズの役目になっていた。


別に、強制したわけじゃない。


自然とそうなっていたんだ。


同い年のカズは、実は潤が来たばかりの頃、あまり潤と仲良くなかった。


やっぱり年が同じだからか、潤がみんなにちやほやされるのが気に入らないんだろうと思っていたけど、それはちょっとちがかった。


潤が来たばかりの頃、潤はまだ母親と同じ部屋で寝ていた。


でもしばらくして、母親の具合が悪くなって、潤はカズと一緒の部屋で寝ることになった。


潤はとても不安そうだった。


すると、それまで自分から潤に寄っていくことのなかったカズが、潤に言ったのだ。


「潤くん、ゲーム一緒にやろう。俺、教えてあげるから。その代わり、勉強教えて」


そう言って笑うと、潤もほっとしたように笑って頷いた。


それから、2人はあっという間に仲良くなった。


それで、わかったんだ。


潤のことが嫌いだったわけじゃない。


照れてただけなんだって。


だって、カズの目はいつだって潤に向けられてる。


ガキのくせに、潤のことを愛しそうに見つめるんだ。


だから、カズが潤の傍にいてくれれば俺も安心できるんだけど・・・・・。


過保護だって言われても仕方ない。


だって、潤は本当に可愛いから。


潤が泣いたり、悲しんだりするようなことが起きないように、俺たちはいつも心配していた。






入学式が始まり、クラスごとに新入生が入場してくる。


―――あ、潤だ。


まだ大きい詰襟の制服を着た潤が、くりくりした大きな目でちょっと不安そうに周りを見ている様子が可愛かった。


潤が、高校の制服で保護者席にいる俺に気付く。


俺が小さく手を振ると、潤はホッとしたように笑った。


―――うん、可愛い。


制服に着られている感じが、また可愛いんだよな。


なんて思いながら若干にやにやしていると、カズのクラスの生徒たちが入場してきた。


カズがすぐに俺に気付いてちらりとこちらを見たけれど、俺の表情を見ると、呆れたように冷ややかな視線で一瞥し、すぐに前を向いてしまった。


どこか不満げな表情。


―――ふふふ、潤と別々にされて、悔しいんだな。


斜め前あたりの席に座る潤の後ろ姿を、カズがじっと見ているのが後ろから見てもわかった。


潤が、その視線を感じてか後ろをちらりと振り返る。


その瞬間、潤が安心したように満面の笑みを見せた。


2人が、こそこそと何か言葉を交わし、潤が頷いてまた前を向く。





入学式が始まると、在校生代表として翔ちゃんが演台に上がった。


俺と違って勉強のできる翔ちゃん。


弟たちの勉強を見るのは翔ちゃんの役目だった。


一番の心配症でもあり、心配し過ぎてカズにはいつもうざがられてる。


まぁ、できるのは勉強だけで料理だの洗濯だのといった家事はほぼ潤がやってくれてるけど。


朝だけは、潤がどうしても起きられないというので頑張って翔ちゃんがパンを焼くのと目玉焼きを焼くのはできるようになった。


『潤が食べたいって言うから』と、張り切ってやった初日は見事に卵を焦がしていたけれど、今はだいぶうまくできるようになっていた。


かっこいい兄の姿を見つめる潤は嬉しそうだった。


そして、新入生代表は潤。


舞台袖で心配そうに潤を見つめる翔ちゃんが見える。


きっとカズも同じ顔をしてるんだろうな。


潤は緊張しいだから、俺も心配。


頑張れ、潤!


ドキドキしながら、潤を見守る。


緊張しながらも、持ってきた原稿を読み始める潤。


最後までちゃんと読み進め・・・・・たかと思ったら、最後の最後、自分の名前を読むところで


「―――新入生代表、まちゅも・・・・ぁ」


思わずぺろりと舌を出す潤。


会場内が笑いに包まれ、とたんに和やかな雰囲気になる。


―――やばいっ!これはやばいぞ、翔ちゃん!


潤の可愛さが学校中にばれちゃったじゃんか!


翔ちゃんを見ると


見事に破顔していた・・・・・。




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