「で、お前はいつまでいるつもりだよ?」
潤の言葉に、七之助くんが顔を顰めた。
「なんだよ、つめてえなぁ。せっかく会いに来てやったのに」
「お前な・・・・・」
潤が顔をひきつらせると、七之助くんは両手を上げ、降参のジェスチャーをする。
「はいはい、邪魔ものは帰りますよ~だ」
その言葉に、俺は思わず慌てる。
「いやいや、邪魔だなんて・・・・・」
「あはは、いいっすよ。俺本当にこれ届けに来ただけですから。―――じゃあな、松本」
「はいよ」
玄関へと向かう七之助くんを見送るため、一緒にリビングを出る潤。
部屋を出る瞬間、七之助くんがふいにこちらを振り返った。
―――え?
ほんの一瞬だったけれど・・・・・
七之助くんの瞳には、嫉妬の色が見え隠れしているように見えた・・・・・。
七之助くんが帰ると、俺たちはビールを飲みながら、DVDを見ることに。
潤に勧められた映画。
『すごく面白かったよ!』という潤の言葉に、その映画を見たくなったのも事実だけれど・・・・
久しぶりに、潤の家で過ごしたかった。
別に、何かを期待していたわけじゃなくて、2人きりでまったり過ごせればいいと思ってたんだ。
だけど、いざ映画が始まっても、俺はなかなか集中して見ることができなかった。
テーブルの上に置きっぱなしになっていたあの写真が気になってしまって、ちらちらと見てしまっていた。
もちろん、潤もそれに気付いて・・・・・
「―――何、見てんの」
「え・・・・いや、だって本当にきれいだったからさ。ね、もう1回ちゃんと見ていい?」
俺の言葉に、潤の頬が染まる。
「ええ?いや・・・・いいけど・・・・でもあんなん、見たって面白くないじゃん」
「そんなことないよ」
そう言って、俺は写真を手に取り、まじまじと眺めた。
―――やっぱ、マジきれい・・・・・。
18歳の頃と言っていたから、今から10年前になる。
今よりも線が細く、顔にも幼さが残る。
それなのに、着物姿の潤からは思わず生唾を飲み込むほどの色気が醸し出されていた。
大きな眼と白い肌、黒く長い睫毛と赤い唇のコントラストが絶妙で・・・・・
このまま何時間でも見つめていられると思った。
そして、七之助くんの言葉を思い出す。
『―――部屋で1人でいるとき、良くこれ眺めてたよ。超きれいなんだもん、お前』
その頃の、2人の関係って・・・・・・?
さっきの、視線の意味は・・・・・?
胸に、もやもやとしたものが広がる。
「―――翔くん?どうかした?映画、見ないの?」
潤が、不思議そうに俺の顔を覗きこむ。
まるで、俺の気持ちになんか気付いてない顔で・・・・・。
「・・・・・七之助くんて、何でここにいたの?」
当然のように、この家に上がり込んで潤を待っていた七之助くん。
潤も、それほど驚いた様子はなかった。
ということは、いつものことなのか・・・・・
「ああ、あいつには合鍵渡してあるから」
「合鍵?」
「うん。たまに俺の洋服借りにきたりすんの。あとDVDとか、CDとか。で、返す時もそうだけど、いちいちお互い予定合わせたりすんのも面倒だし、俺のいないときでも入って勝手に持ってっていいよってことで、渡してる」
「・・・・・へえ・・・・・」
思わず声が低くなる。
まるきり、半同棲生活してるカップルじゃんか。
なんだそれ。
何なんだ。
かなり、顔にも出てたんだろうな。
突然不機嫌になった俺に、潤は戸惑った表情をする。
「翔くん?」
「・・・・俺、帰るわ」
「え?だって、映画―――」
「今日はいい」
そう言って、俺は立ち上がるとリビングを出ようとした。
「ちょ―――ちょっと待ってよ」
その俺の腕を、潤が掴む。
「なんで怒ってんの?俺、翔くんに何かした?」
「・・・・別に、怒ってない」
「嘘だよ、絶対怒ってるじゃん。何でだか言ってよ」
食い下がる潤に、俺もついカッとなる。
「怒ってねえっつってんじゃん!」
「怒ってるよ!」
「怒ってねえ!!」
「怒ってる!!」
『ガタンッ』
次の瞬間。
俺は、潤の体を壁に押し付け、その唇を奪っていた・・・・・。
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