「大体、潤があの時ニノの家なんか行くからおかしくなっちゃったんだよ」


「何それ、俺のせい?」


ビールを飲みながら、リビングで床に座って睨みあう2人。


せっかく気持ちが通じ合ったというのに。


早速雲行きが怪しかった。


だって、あれだけはどうしても納得いかなかったんだ。


「だって、あれは―――」


潤が言いかけるのを、俺が遮る。


「知ってるよ。俺のためだって言うんだろ?あそこに石倉がいて、俺たちの様子をうかがってたから、特別な関係だと思われないようにしたかったって。石倉が犯人だって、潤は気付いてたから、俺を守ろうとしたって」


俺の言葉に、潤は目を見開いた。


「なんで、それ―――」


「ニノが言ってた」


「マジで!?ニノ、すごいね。俺の考えてたことわかっちゃったんだ」


へぇ~なんて感心してる潤に、俺はますます面白くない。


「でも、それ、俺に言ってくれたってよかったじゃん!あの店で言えなくても、外に出てからとか、言う機会あったじゃん」


もしあのとき本当のことを言ってくれてたら、俺はきっと、もっと早く潤にこの気持ちを伝えていたと思う。


そうしたら、もしかしたら潤をあんな危険な目に会わせなくても済んだかもしれない。


「―――あのときは、だって、智が俺のこと好きだなんて知らなかったから」


「知らなかったって・・・・・もしかしたらとも思わなかったの?だって、その前の日にさんざん俺を煽ってたじゃん!」


「煽ってた?俺が?」


潤が、首を傾げて目を瞬かせた。


―――自覚なしかよ!


「煽ってたじゃん!酒飲んで、俺にキスして、一緒に寝たいとか言い出して!」


あれが煽ってるんじゃなかったら何なんだ!


「別に・・・・・煽ってるつもり、なかったけど」


そう言って、潤は唇を尖らせた。


「・・・・・じゃあ、ああいうこと、誰にでもすんの?キスしたり、一緒に寝たり・・・・・」


胸が、痛かった。


そりゃあ、キスは挨拶だなんて言ってたやつだし。


意識する方が悪いのかもしれないけど。


でも・・・・・


「・・・・・逆だよ」


潤が、そう言って照れくさそうに俯いた。


「逆?」


「うん。俺、最初から智が好きだったもん」


「え・・・・・」


「めっちゃ緊張してたんだよ。自分から智の家がいいって言ったのにさ、いざ2人きりになったらすげえ緊張しちゃって・・・・・だから、酒飲んでごまかそうと思ったの。そしたらちょっと飲み過ぎちゃって・・・・。ちょっと、ブレーキ利かなくなっちゃった。キスしたのは、智が好きだから。本当に、智にキスしたかったからだよ」


「そう・・・・・なの?」


やばい。どうしよう・・・・・超嬉しいんだけど。


「俺ね・・・・ホストやってた時もそうだけど、お客さんに『キスして』ってねだられた時以外、自分からキスしたことってないんだよ」


「え?マジで?」


「うん。嫌いな相手じゃなければ拒まなかったのも事実だけど・・・・・。でも・・・・・たぶん、自分からキスしたのって、死んだ旬にしたのが初めてかも」


―――あのとき・・・・小栗に、『ばいばい、旬』と言ってキスした潤。


「あんなことしかできなかった。旬には、たくさんいろんなことしてもらったのに・・・・・俺には、あいつのためにできることなんて、何もなかった・・・・・」


そう言って、きゅっと唇をかみしめる潤。


その瞳には、涙が溜まっていた。


「そんなこと、ないだろ?ちゃんと犯人捕まえたじゃないか。あれは、潤のおかげだよ。潤がいなかったら、犯人を捕まえることはできなかった」


「・・・・ありがと、智」


柔らかい笑みを浮かべる潤。


ああ、そうだ。


俺は、たぶん最初に会った時から潤のことが好きだったんだ。


潤の、宝石のように輝く大きな瞳に魅せられて―――


ずっと、その宝石を手に入れたくて、追ってきたんだ・・・・・。




「潤・・・・」


俺は、潤の頬を撫でるように手を添えた。


潤の瞳が一瞬揺れ、俺を見つめる。


ゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねた。


ちょっと冷たくて、柔らかな唇に、ついばむようなキスをする。


「―――好きだよ、潤」


「智・・・・」


「すげえ好き。だから・・・・・ずっと俺の傍にいて」


たとえ俺のためでも、他のやつのところに、行ったりしないで。


自分でも信じられないくらいの独占欲に、少し不安になる。


潤に嫌われたら、俺はきっとダメになる・・・・・


潤が、俺のシャツをきゅっと握る。


潤んだ瞳が俺を見つめ―――


「―――俺も、好きだよ。大好き、智」


微かに朱に染まった頬。


男も女も虜にするだけの魅力があるくせに、自分のことは全然わかってない潤。


恋人になったからって安心なんかできやしない。


こいつに魅せられてるのは、俺だけじゃない。


だけど、渡さない。


この瞳も、長い睫毛も、白い肌も、黒髪も―――


全部全部、俺のものだから・・・・・・



俺は、自分の腕の中に潤を閉じ込めた・・・・・。




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こちらのお話には番外編があります。

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『魅せられて 番外編』