「あれ?潤くん、そんなサングラス持ってたっけ?」


今日は、俺と潤くん、それにリーダーの3人での仕事だった。


楽屋に入ってきた潤くんは、見慣れないティアドロップのサングラスをかけていた。


「あ―これ、リーダーにもらったんだ」


その言葉に、テーブルに突っ伏してうたた寝していたリーダーが顔を上げる。


「あー、似合う似合う。やっぱりかっこいいね~松潤」


だらしなくにやにや笑うリーダーに、思わずむっとする。


「―――何でもらったの?」


誕生日でもないのに、なんで?


「俺たちの記念日のプレゼントだよ」


んふふふといやらしい笑みを浮かべるリーダー。


「はぁ?記念日?なんの記念日だよ?」


「俺たちの心が繋がった記念日だよ!」


得意げに胸を張るリーダーに、俺はふつふつと怒りがこみ上げてくる。


「心が・・・・繋がったぁ?ちょっと潤くん、これどういうこと?」


俺は荷物を置いて椅子に座った潤くんをじろりと睨みつける。


サングラスを外した潤くんが、ぎょっとして俺を見る。


「え・・・・・そ、それはだから、リーダーとはずっと強い絆で心が結ばれてるってことで、一緒に飲んだ日に『今日を2人の記念日にしよう』って・・・・・」


「強い絆って何!何で俺の知らない間に記念日なんか作ってんの?」


「だからそれは―――」


今にも潤くんに掴みかかりそうな俺を、後ろからリーダーが猫の首を掴むみたいにシャツの襟を引っ張った。


「ニノ、やめろって!松潤は悪くないよ。俺が無理やり言ったんだから」


「無理やりって―――」


「あの日―――お前に松潤と付き合うことになったって聞いて、松潤ちに乗り込んでって、話して―――松潤が俺のことを大事に思ってくれてるってのがわかって嬉しくって納得したんだ。でもさ、これからは2人きりで飲みに行ったりすることもあんまりできなくなるんだなあと思ったらやっぱり寂しくってさ。だから、約束したの。1年に一度、この日だけは俺と2人きりで飲もうって。だから、あの日を2人の記念日にしたんだ」


「記念日にしたんだって―――俺、そんな話聞いてないよ」


再び潤くんを睨むと、潤くんは首をすくめ、気まずそうに俺を見た。


「ごめん。あの日は俺も結構飲んでたから、忘れてて・・・・それに、あのときのカズにそんなこと言える感じじゃなかったし」


―――そりゃあね、俺も相当怒ってましたから。


「松潤は優しいから。俺のお願いを聞いてくれたのは、ニノのためでもあるんだよ」


「俺のため・・・・・?」


「そ。だって、あのまま俺が松潤を諦めなかったら、ニノとの仲だってぎくしゃくしてた。『大宮コンビ』だなんて言われてなかよしなイメージがあるってのに、急に険悪になったりしたら―――」


「・・・・・確かに」


「だから、松潤は俺のお願いを聞いてくれたんだよ。俺のため、ニノのため。それから、嵐のため―――でしょ?潤」


リーダーの言葉に、潤くんの頬が染まる。


「―――それも、あるけど!単純に俺も酔ってたし・・・・リーダーと飲むの楽しいなって思ったから、そういう日があるのもいいかなって」


そう言って、再び潤くんは俺を見た。


「言うの、忘れててごめん。俺、ちょっと甘えてたのかも」


「甘えてた?」


「カズ、優しいから。それになんだかんだ言ってもリーダーとやっぱり仲いいし、そのくらい、許してくれるかなって軽く考えてたかも。あの日に、ちゃんと言っておけばよかった。ごめんね、カズ」


俺を傷つけてしまったと思って、落ち込んでしまったんだろう。


シュンと肩を落とす潤くんに、俺の怒る気も失せる。


「―――怒ってないよ」


「ほんとに?」


「ほんと。ちょっと、ヤキモチ妬いただけ。俺、結構独占欲強いんだよ」


「だよなぁ、知ってる」


うんうんと頷くリーダーを、俺はじろりと睨みつける。


リーダーが明後日の方向を向き、ぺろりと舌を出す。


「―――だから、どんなに仲の良いやつでも、潤くんと仲良くしてれば妬いちゃうんだよ。でも、潤くんのこと嫌いになったりは、絶対しないから」


「―――絶対?」


「うん、絶対。だから、潤くんも俺のこと嫌いにならないで」


そう言って、潤くんの首に腕を回し抱きつく。


潤くんも、そっと俺の背中に腕を回し、俺の首におでこをすりよせる。


「―――ならないよ。なるわけない。カズ―――大好きだよ」


「潤くん―――」



自然と重なる唇。


甘い空気が流れ、ここが楽屋だということも忘れる。


「―――おいこら。俺の存在無視すんなよ」


我慢できなくなったのか、リーダーの不機嫌な声が聞こえ、潤くんが俺からぱっと離れる。


―――本当に、ここがどこだか忘れてたんだな。


真っ赤な潤くんの顔が超絶に可愛くて、俺は再び潤くんにチュッと口づける。


「おいっ!お前、いい加減にしろよ!」


リーダーが立ち上がったかと思うと、俺たちの間に割って入り、俺をぎっと睨みつけながら潤くんを抱きしめた。


「おいっ!お前こそ、俺の潤くんにくっつくなよ!」


「ニノのじゃないじゃん!」


「俺のだし!潤くんは俺の恋人!手ぇ出すなよ!」


睨み合う俺とリーダー。



潤くんは、そんな俺たちを交互に見ると、苦笑して溜息をついた。


「なんか―――痴話げんかみたい」


「「違うから!!」」


思わずはもった俺たちに、噴き出す潤くん。


「やっぱ仲いいじゃん」


「「よくない!!」」


「ふふ・・・・ちょっと妬けるかも」


言いながら、楽しそうに笑う潤くん。


―――そっか。


俺たちが仲いいと、ちょっと妬けて・・・・で、楽しいんだ。


俺は、リーダーとちらりと目を見交わした。


「―――潤くんが楽しいなら、仲良くしてやってもいいけど」


「―――潤のためならね」


そしてまた、火花を散らす。


絶対に譲れないけど。


でも、1年に1回くらいなら。


ちょっと、目をつぶってやってもいいかな。



と、ちらりと考えなくもない、俺だった・・・・・。




 ~fin.~


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