『昨日、松本潤さん、大野智さんのダブル主演でボーイズラブを描いた衝撃のドラマが、とうとうクランクアップを迎えました!』

朝起きてテレビをつけると、ちょうど潤と智が映っていて雅紀は驚いていた。

「あ・・・・そっか。そう言えば昨日最後だって言ってたな」

3日前にバラエティ番組の収録で会った時、2人が話していたのを思い出す。

それを聞いて、潤と智以外の3人は内心ホッとしていたのだ。

これで、ようやく以前のような日常が戻ってくると。

2人がお互いを想う役を演じているためか、普段のバラエティの番組の時でも2人の空気が甘くなっていたのだ。

どちらもどちらかというとそのドラマの間は自分の演じている役にのめり込むタイプなので、余計にそんな雰囲気になるのだろう。

そして周りのスタッフもそんな2人に気を使って、ゲームなどでも2人が組むことが多く、そしてファンもそんな空気を楽しんでいるようだったのだ。

他の3人からしてみれば、自分だって潤の恋人なのにと、拗ねたくもなるというもの。

「―――ようやくだなぁ」

そう雅紀は1人呟き、知らずに口元を緩めていた。

今日は、潤が雅紀の家へ来る日なのだ。

ドラマの撮影が終われば、しばらくはスケジュールにも余裕ができる。

今まで我慢していた分潤と会えるようになると思うと、嬉しさを抑えられなかった。

その時、テーブルの上の携帯が着信を告げた。

画面に表示された名前を見て、雅紀は慌てて携帯を手に取る。

「もしもし、潤!?」

『ふは、うん。朝から元気だね、まぁ。今日、仕事何時まで?』

「えっとね、5時くらいには終わると思う!」

『ほんと?じゃ、夕飯うちで食べるよね?俺作ってもいい?』

「え、作ってくれるの?やった!」

雅紀のハイテンションに、電話の向こうの潤が楽しそうに笑った。

『んふふ。じゃ、7時くらいには行けると思うから、それくらいまでにはまぁも帰ってきてね』

「わかった!」




潤と会える。

潤の作った料理が食べられる。

そして、朝まで潤と過ごすことができる―――




今日の雅紀が、いつにもまして張り切って仕事をしたのは言うまでもない。

きっちりと夕方の5時には仕事を終え、自分の車に飛び乗り、家路を急いだのだった・・・・・。





「ただいまあ!」

家に着くなり、雅紀は靴を脱ぐのももどかしくドタドタと玄関を上がり、キッチンへ駆けこんだ。

潤はすでにエプロンをつけ料理を始めていた。

「ふふ・・・・そんなに慌ててるとまたどっかに足ぶつけて怪我するよ?」

前にも一度、慌ててキッチンへ飛び込んで来て足を冷蔵庫にぶつけて痣をつくったことがあるのだ。

「だって、早く潤に会いたかったから!ドラマクランクアップおめでとう!!」

そう言って後ろから抱き締めると、潤も嬉しそうに笑った。

「ありがと。ようやく一段落だよ」

「だね!昨日はみんなと打ち上げ?」

「んーん。昨日は5、6人でちょっと飲みに行っただけ。打ち上げはまたあらためて集まることになってるんだ」

「そっか。昨日はリーダーもいたの?」

「うん、あとマネージャーも・・・・。あのさ、まぁ」

「ん?」

「マネージャーに・・・・俺たちのこと、何か話した?」

潤の声が微かに低くなり、雅紀は驚いて潤から離れた。

「何かって・・・・何?どういうこと?」

雅紀の言葉に、潤は雅紀の方を振り向き、ちょっと言いづらそうに目を伏せた。

「気のせいかもしれないけど・・・・マネージャーに、疑われてるかもしれない」

「マネージャーって、一ノ瀬さん?」

嵐のマネージャーは5人いる。

1人1人での仕事も多いので、1人に1人、マネージャーがつくようになっているのだ。

ただ、5人でも仕事の時に5人いる必要はないので、そういう時には1人か2人、チーフマネージャーが着くことになっていた。

一ノ瀬は潤のマネージャーで、今回のドラマでは智のマネージャーと交代で2人に着いていた。

「うん・・・・最近、智と2人で帰ろうとしてもついてくるし、俺と智が別れるまでずっと一緒にいるんだよ」

潤が作った料理を2人で食べながら、思ってもいなかった話に雅紀は驚いていた。

「マジで?何か言われた?」

「ううん。ただ・・・・智と別れた後は、俺が『ニノのうちに行く』とか言ってもついてこないから、俺と智のことだけを疑ってる気がする」

「リーダーとだけ・・・・?まさか、マネージャーまでドラマの影響受けてるの?」

2人のリアルな演技が評判で、今回のドラマは大好評だった。

ただ、副産物というか、本当に2人が付き合っていると思われ週刊誌などでも『松本潤と大野智が熱愛か!?』なんていう記事がでたりしていたのだ。

そしてファンの間でも2人の噂が囁かれ始め、業界の中でも2人が付き合ってるんじゃないかという噂が出ているくらいだった。

「どうなのかな。ドラマの中というよりは、現実に、俺たち撮影中は一緒にいることが多かったし、役にのめり込んでたからべたべたしてるように見えたかもしれない」

「あー・・・・なるほどね」

もともと距離感が近過ぎると言われているグループだ。

そういう目で見始めたらそんな風に見えなくもないし、特に2人が恋人役を演じていたら普段もそういう空気を醸し出していることが多い。

「・・・・ドラマの間はそれでもいいんだ。役にのめり込んでるんだって、一ノ瀬さんならわかってくれてたと思うし。でも・・・・もしこれからもその疑いが消えなかったら・・・・智だけじゃなくて、まぁや他のメンバーとのこともばれるんじゃないかって・・・」

潤の瞳が不安に揺れていた。

「潤・・・・」

雅紀は箸を置くと、潤の隣に移動してその肩を優しく抱いた。

「・・・大丈夫だよ。俺たち、いつも一緒にいろんな問題を解決してきたでしょ?マネージャーだって、ついてる期間はそれぞれ違くても、みんな一緒にがんばってきた仲間なんだから。もし、ばれたとしても・・・・話せば、きっとわかってくれるよ」

「でも・・・・」

「もちろん、ばれないようにするけどさ。でも、マネージャーたちを騙すようなこと、あんまりしたくないしさ・・・・。きっと、わかってくれると思うんだ!」

力強くそう言いきった雅紀を、潤はちょっと驚いたように見つめ、それからふっと微笑んだ。

「・・・まぁらしいね」

「え」

「一緒に仕事してる仲間を、そうやって信頼するの。俺ももちろん信頼してるつもりだけど、どうしても心配になっちゃって・・・・・」

「わかるよ」

潤は、とても繊細だから。

雅紀は潤を包み込むように、ぎゅっと抱きしめた。

「潤は、いつもそうやって何でも話してくれるから、俺嬉しい。どんなことでも話してね。ちゃんと俺が守るから!」

「ふふ・・・・ありがと。頼りにしてるよ」

そう言って体重を雅紀に預ける潤。

安心できる雅紀の温もりを感じ、徐々に心は落ち着いてきていた。

そんな潤をいとおしむように雅紀は潤の髪を撫で、その透き通るような白い肌に何度もキスをした。

そうして潤を抱きしめながら、雅紀は考えていた。

マネージャーにもし、2人のことを知られたら・・・・

もちろん智と潤のことだけでは済まない。

嵐全員の問題だ。

このことが、世間に知れわてることだけは避けようとするだろう。

そのために、潤と別れさせられるようなことも・・・・



―――やっぱり、相談した方がいいよな・・・・・



そう思いながら、雅紀は潤に気付かれないように小さな溜息をついたのだった・・・・。



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