「それで、それを―――そうそう、うまいうまい」
ニノに誉められると嬉しそうに笑う潤。
翔くんと相葉ちゃんは窓から見える景色を見ながら談笑していた。
本当は2人とも潤と話したがっていたのだが、『今、マジック教えてるんだから来るな!』とニノに怒られ、仕方なく離れていたのだ。
何気に、ニノが潤を独り占めしてるんだよな・・・・・。
その状況に多少焦りながらも、俺は潤を描くことに集中していた。
「そうそう、上手いよJ、さすが、器用だね」
ニノの言葉に、照れくさそうに笑う潤。
「ふふ、褒めすぎだよ。ニノの教え方がうまいんじゃん」
「違うよ、Jの覚えが早いから。1回言えばちゃんと出来ちゃうんだもん。これが相葉ちゃんだったらそうはいかないんだから!」
こっそり言ったつもりが、本人にはしっかり聞こえていたようで―――
「おい!そこでこそこそ人の悪口言うなよ!俺にだってマジックくらいできる!」
「どの口が言ってるんだか。ちょうどいいや。今やったやつ、相葉ちゃんに見せてやってよ、J」
「え、なになに?俺にも見せてよ」
翔くんも慌てて相葉ちゃんと一緒に2人の方へ行く。
「え~、いきなりできるかなあ」
自信なさげな潤。
そんな潤の肩を力強く抱き寄せるニノ。
「大丈夫だって!」
顔を寄せ、にっこりと笑って潤を見つめる。
―――近過ぎだよっ!
思わず心の中で叫ぶが、そんな声が届くはずもなく―――
「ほら、やってごらんて」
ニノの優しい声に、潤がこくりとかわいく頷き、今までニノに教わっていたトランプマジックを2人の前で披露する。
そして・・・・・
「おー!!」
「すげえ―――!」
2人が感嘆の声を上げ、潤の顔とトランプを交互に見る。
「すごいじゃん、松潤!」
「マジすごいよ!今教わったばっかりでしょ?」
2人にべた褒めされ、恥ずかしそうにはにかむ潤。
その時、ふと潤が俺の方を見た。
「リーダー、進んでる?」
潤の声に、3人が一斉に俺を見た。
「そういや、絵ぇ描いてたんだっけ」
と、ニノ。
―――忘れてたんかい!
「あんまり静かだから、いることも忘れてたよ」
と相葉ちゃん。
―――おまえら・・・・・
俺が思わず顔をひきつらせると、翔くんと潤が同時に吹き出した。
「できたら、見せてくれんの?」
潤の言葉に、俺は頷いた。
「うん・・・・・。見る?」
そう言って、俺はスケッチブックを手に立ち上がった。
「え、もうできたの!?早くね?」
翔くんが驚いて目を瞠る。
「まだだけど・・・・・大体の雰囲気はわかると思うよ」
「雰囲気?」
潤が首を傾げる。
俺は、持っていたスケッチブックを潤の前に差し出した。
潤が、それを一目見て目を見開く。
「うわ・・・・・これ、俺・・・・・?」
「すげえ、さすがリーダー・・・・・」
ニノが一言、絶句する。
「この周りのって、ひまわり?」
パジャマ姿で満面の微笑みを浮かべる潤の周りに、大輪のひまわりが咲き誇っている、そんな絵だった。
「そう。松潤の笑顔って、ひまわりみたいだなって思って」
俺がそう言うと、潤の頬がほんのりと赤く染まった。
「そ、そう?なんか、照れくさいけど」
「―――ひまわり、ね。で、俺は透明人間になっちゃったわけだ」
ニノがちろりと俺を睨む。
「だって、俺は松潤を描いたんだもん」
「そうだけどさぁ、この笑顔の横には、俺の笑顔もあると思うんだけどなぁ」
ぶつぶつと文句を言っているニノを、俺は敢えて無視する。
「―――これさ、残りは家で仕上げて、出来上がったら渡すから」
「え、本当に?くれるの?俺に」
潤が驚いたように俺を見た。
もともと大きな瞳が、さらに大きくきらきらと輝く。
その瞳に、吸い込まれそうだと感じるのは初めてではなかったけれど―――
なんだか今日は、息苦しさまで感じるほどだった・・・・・。
「もちろん、そのつもりで描いてるんだから」
俺の言葉に、潤が嬉しそうに笑う。
「やった!すげえ嬉しい!ありがとう、リーダー!」
その笑顔が眩しくて―――
目をそらすことも忘れ潤に見惚れていた俺を、ニノがじっと見ていることに、俺は気付かなかった・・・・・。