「なんで、いつまでたってもJは退院できないわけ?」
今日は4人での仕事の日。
楽屋では、苛立ちを露わにしたニノが声を荒げていた。
「もう今日で1ヶ月だ」
翔くんも、そう言ってため息をついた。
いつも落ち着いて新聞を読んでいる翔くんが、今日は新聞を開くこともなく、その指は落ち着きなくテーブルの上を叩いていた。
「―――熱が下がらないってマネージャーが言ってたけど・・・・・大丈夫なのかな?肺炎って、そんなに長引くものなの?」
いつも明るい相葉ちゃんまでが心配そうに俯いている。
「―――俺、松潤に手紙を書いたんだ」
俺が言うと、3人が一斉に俺を振り返った。
「手紙?」
「いつ?」
「どんな?」
「3日前―――かな。いくら言っても、入院してる病院を教えてくれないから―――だから、それなら手紙を渡してくれって頼んだんだ。内容は、他愛のないことだけど―――今度一緒に飲みに行こうとか、早く会いたいとか・・・・そういうこと?」
その言葉に、ニノはひきつった笑顔を浮かべた。
「飲みに行こうはともかく、早く会いたいって―――恋人かよ」
それを聞いて、翔くんと相葉ちゃんも噴き出した。
「確かに」
「リーダー、本当に松潤大好きだよねえ」
「いいじゃん、だって本当に早く会いたいもん」
俺がむっとしてそう言うと、ニノが溜息をついた。
「そういうことじゃなくってさ、病状はどうなのかとか、いつ退院できるかとか、そういうことは書かなかったのかってことだよ」
「―――うん」
「うんって・・・・なんで!?」
心底呆れた表情のニノ。
翔くんと相葉ちゃんも不思議そうな顔をしている。
「だって・・・・・」
俺だって、そういうことを書こうと思ったんだ。
マネージャーに聞いても『まだ熱が下がらない』と繰り返すだけで、らちが明かない。
だけど、いざ書こうとしてペンを取ると―――
書いたのは本当に他愛のないことで。
だって、書けなかったんだ。
きっと今、一番辛いのは潤だ。
人一倍まじめで、仕事熱心な潤。
1ヶ月も休まなければいけないなんて、絶対に潤が望むはずない。
1日でも早く、復帰したいと思っているはず。
10年以上も同じグループで行動を共にしているのだ。
そのくらいのこと、直接会わなくたってわかる。
だから、病状についても退院の見通しについても書かなかった。
今度会った時―――
その時は一緒に飲みに行きたいと。
早く会って笑顔が見たい。
早くその声が聞きたい。
その想いを、書いたんだ・・・・・。
言っとくけど、メンバー愛だよ?
俺は5人の中では一番年上。
そして潤は一番年下。
性格も何もかも正反対で、正直同じグループになった時は戸惑ったし、話もかみ合わなくて、潤をどう扱ったらいいのかわからなった。
だけど、一緒に仕事をしていくうちにだんだんとお互いのことがわかってきて・・・・・
ワイルドでクールなイメージとは裏腹に、シャイで不器用な一面や人一倍繊細な一面。
キラキラのアイドルオーラがいまいち苦手で近寄りがたかったけど、近づいてみれば人見知りだけれど暖かく、気さくで何よりもその笑顔を見ているだけで人も笑顔にできるような、そんな男だった。
今は、そんな潤が俺は大好きだし、グループ内の末っ子らしく甘えん坊の潤が可愛くて仕方なかった。
そんな潤が入院してしまって、心配じゃないわけがない。
もちろん、他のメンバーだって同じ気持ちだろう。
「すいません、そろそろお願いしまーす!」
スタッフに呼ばれ、俺たちは重い腰を上げた。
いつも5人でやっている番組を、4人でやらなければいけない。
仕方のないことだけれど―――
俺たちの気は重かった。
だけどこの日の収録には、思わぬサプライズが待っていたんだ・・・・・