197年8日


今日はうちに3人目の赤ちゃんがやって来る


朝はなんともなかったから、本当に産まれるのか

少し不安だったけど


夕方になると、予定通り産気付いた




ベッドでいきみ初めてからは

ジーノがずっと手を握って

くれていた



ほどなくして、あたしに似た女の子が

産まれた



名前は『リリス』

性格は『おしゃべり』だ


ルサルカは『信心深い』大人しい子だけど

女の子が多いと姦しいって言うし、賑やかに

なりそうだ




  ​197年9日




リズの結婚式の日がやって来た




季節は今日から夏


「はーい! 今日の朝食はラゴステーキですよ♪」


気合いを入れてラゴステーキを食卓に

出した


「わぁ、今日から夏なのにママすごーい」


ルサルカは胸の前で手を叩いて喜んでいる


「夏を先取りしてみました⭐︎」


ピースサインにウィンクで決める


「「ラゴステーキ」食べたいなぁ〜」

「ルネくん……ラゴステーキなら目の前に

あるよね?」


息子はラゴステーキを前にして、おかしな事を

のたまっている


「今年釣れた、新鮮なラゴステーキが

食べたいなぁ〜」


チッ……手抜きした事がバレたか……


あたしは一昨日、去年の魚を食べても

お腹を壊さない事を知ったのだ


お店のメニューにもなっている


これは、この国では当たり前のことなのだ






出鼻をくじかれたが、気を取り直して

リズの結婚式へ


彼女のお相手はレオンス・ホウォートンくん


デイジーとは違い、彼女が選んだのは

同級生の男の子だ


幼馴染との恋愛なんてロマンチストな

リズが憧れそうな展開だ


二人はレオンスくんのホウォートン姓を

名乗ることにした










……ん?


あんた、また居たの?


リズの参列者席に奏士の姿が……


デイジーの結婚式の時は仮面が邪魔で

分からなかったけれど、この位置なら

バッチリ分かる


茶色い肌に茶色い髪。間違いない


彼はフランの弟セオフィラスである


こんな所にまで現れるとは……あははは


この国では横恋慕した相手を結婚式に

招待する風習があるようだ


あたしは、隣に立つ緑の髪の男の子を

じっと見た。リズの両親の隣に並んで

いるのはフェデリコ・ワイルドだろう


可愛い顔立ちで遊び好きな彼

プレイボーイだったに違いない

(勝手な偏見w)


そんな彼の本命が、同級生のリズだったのだ



「お幸せにー!」



なんてヘラヘラ笑っている場合ではない


きっと心の中では嵐が吹き荒れている事だろう



訂正する。彼の祝辞は……



お幸せにー!チクショー!」



……だ




あたしは頭を抱えた


……なんとも良い趣味をしている


哀れな犠牲者を出さないためにも

祝福の言葉はやっぱり同性の方が

いいと思うのよね


これじゃあ、罰ゲームだ





***




はあ……なんか、疲れた


おめでたいはずの結婚式なのに、

知りたくなかった裏事情を教えられ

精神を擦り減らしてしまった


「レライエ、お疲れ様。結婚式どうだった?」

「ジーーノーー!!!」

「うわっ!」


お城の前で彼の姿を見つけ、安心したあたしは

思わず飛び付いた


「どうしたの?」

「んっ……なんか、疲れちゃって……」

「えっ? 結婚式行って疲れたの? はは、

面白いこと言うな。レライエは……」


ジーノは呆れた顔をしながらも、あたしの

頭を優しく撫でてくれた


「ふへへ……」

「何笑ってんの?」

「何でもないよ」

「変なレライエ」


やっぱり……あたしは、この人が好きだ


「ジーノ、だーい好き!」



チュッ



リップ音を立てて盛大にチューしてやった



「レライエ、飲んだだろ!」

「飲んでないですよー」



馬鹿な会話をしていたら……




あらら?








そんなにしてた?





  ​197年10日



今日はあたしのエルネア杯初戦の日だ


デュトロンさんの戦い方は分からないけれど、

武器の相性だけはおさえておいた






能力値もあたしの方が高かったため

難なく勝利!



前回の龍騎士ルース・ブラウンさんだが、

やはりカサードさんを打ち破り1回戦を

突破した


明日11日は彼と山岳兵の

ロレッタ・ダイソンさんの

試合がある


一般的に考えれば、銃装備の魔銃師は

不利だが……きっと彼は勝つだろう


あたしは、15日の対戦相手がブラウンさんの

気がしてならないのだ




  ​197年11日



今日は2回目の議会だ


この日は教育方針を決める日だ


プルト共和国でも、教育方針はとても

大事な議題だった


プルトでは教育方針によって性格が変化したが

エルネアでは身につく能力が変化するようだ



マリスなら何を選ぶんだろうか……



おおっと、いけない……



議会に彼女は関係ない


大丈夫……今のところ、あたしはマリスみたいな

ことはしていない


とは言っても、プルトの議長のように世界征服を

狙えるような権限はエルネアの議長にはない


議長は専ら議会の進行役だ


議案を選ぶことも出来ず、出された議案への

投票権しかない


身構えて損した


「ふあぁ〜……」


つまんない……


あたしはメリンダ女王の後ろで眠い目を

擦った