「柚之方が好きなもの」 15日目 | 平素、ドラマチック

平素、ドラマチック

日常は思ったより劇的なのです。

ブログ5周年企画、15日目。

 

最終日は王道と言えるこちらの作品。

「星の王子さま」サン=テグジュペリ 著 河野万里子 訳(新潮文庫)

 

 

1943年にアメリカで発行された、フランス人作家のアントワーヌ・サン=テグジュペリの作品。

筆者は飛行士としても有名です。

タイトルは知ってるけど読んだ事ないなぁという方も多いのでは?

 

本来であれば長々語ってみたい所ではあるんですが、このお話は個人解釈という視点がとても大切になる作品だと私は思ってるので、なるべく簡潔に紹介したいなと。


私が初めてこの作品に触れたのは恐らく小学校低学年の頃で、図書室で意味も解らず挿絵だけを見て「象を飲み込む大蛇」に衝撃を受けたと同時に「王子の自画像」を何故だかとても好きになったのです。

本文をきちんと読んだのは高学年になってからでした。

私はどちらかというと押さえつけられる教育親の言う良い子でなければ生きて行けないという精神的な圧迫)を受けて来たので、どこか小生意気な王子の物言いに「誰かに怒られてしまうのではないか?」と何となくハラハラしたのを覚えています。

王子が主人公であるにヒツジの絵を描いて欲しいとせがんだり、星に居る一輪のバラの花が放つ優しい本音、渡り鳥と共に星をあとにした王子の行動力が心底羨ましかったです。

 

このお話の中で特に目立つのは王子とキツネのお話しだと思います。キツネと接する事で作品の本質である「大切なものは目に見えない」を王子は理解し、バラに対する本当の気持ちを自覚することになる重要な場面です。「他人から見たらなんの価値も無いけれど、誰かにとってそれはとても大切で愛おしいものなのだ」と。

読むたびにこの場面では心がきゅっと掴まれる気持ちになります。

私が一番好きなのは、王子が5番目に訪れる星に居るガス灯の点灯人さん。

彼は夜になればガス灯を点け、朝になれば明かりを消すことを仕事としています。それが彼に与えられた指示であるからです。しかし、その星は元々小さい上にどんどん自転の速度が速まり今や1分で一日が終わってしまうほどです。彼は常にガス灯の明かりをつけたり消したりせねばならず「状況が変わったのに指示が変わらない。昼休みすらなくなった」「眠る事が好きなのに夜があっという間」と自身の状況を嘆きます。しかし、王子の様に自分の星を出て他へ行こうとはしないのです。何故なら「この星に居てガス灯の管理をする」ことが彼に与えられた指示だからです。

何となく彼に自分が重なってしまい「わかるよ。うん、わかるよ」と読むたびに共感しています。

 

  

空を愛し空に散ったサン=テグジュペリ。

そんな彼だからこそ、王子との出会いを優しい言葉で綴ることが出来たのかもしれません。

そしてこの物語を、かつて小さな男の子だったレオン・ヴェルト氏を介し私達に語り掛けるのです。

「星の王子さま」という作品は世界中で愛されている物語であり、日本語版でも様々な解釈や説明などを記した書物が多く発行されています。

書かれた時期の歴史的背景、そして物語に出て来るものが比喩するものや思想など様々な視点から固定されてきたイメージがありますが、個人的にはそういった事は文学の専門家に任せて必要な時にその知識を拝借しつつ「今のあなたは何を想った?」という感覚的な部分を大切にして欲しい作品だと思っています。

 

短いですが、この辺で。