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早雲寺殿廿一箇条
北条早雲
戦国時代に
相模国の
後北条氏が定めたとされる家訓。
「北条早雲廿一ケ条」ともいい、
北条早雲が定めたと伝えられる。
全21ヶ条から成るが、
内容は分国法としての面もあり、
神仏への崇拝、
主君への奉公の仕方、
文武の鍛錬法、礼儀作法、
友人の選び方、
大工修繕の方法、清貧など
日常的な生活上の心得などを
簡潔明瞭に示している。
江戸時代初期までには
成立しているが、
早雲が定めたかどうか疑わしい
という見方もある
分国法は
戦国大名の家中を規律する
家法(かほう)と、
守護公権に由来し
国内一般を対象とする
国法(こくほう)に
区別される
- 一、可信佛神事
- (神仏を信ずること)
- 二、朝早可起事
- (朝は早く起きること)
- 遅く起きると、
- 家来も
- 気が緩んで用事が果たせなくなり、
- 主君の信頼を失う。
- 三、夕早可寝事
- (夜は早く寝ること)
- 夜は8時頃までに就寝し、
- 早起きして
- 6時までには出勤して
- 時間を有効に使いなさい。
- 無駄な夜更かしで薪を無駄にし、
- 寝しなに夜盗の被害にあえば
- 世間の評判を落とす。
- 寝坊すれば
- 公務も私用も果たせず、
- 1日が無駄になる。
- 四、手水事
- (万事慎み深くすること)
- 無駄遣いや、
- 無遠慮な態度は見苦しい。
朝は洗面の前に、 - 邸内の厠、厩や庭、門外まで見回り、
- 掃除すべきところを適切な者に指示し、
- それから素早く顔を洗いなさい。
- 水はいくらでもあるからといって、
- ただうがいをして捨てたりしないこと。
- 家の中だからといって
- 大きな声を出したりするのは、
- 無遠慮で聞くに耐えない。
- ひそかに行いなさい。
- 高い天にも身をかがめ、
- 固い大地にも
- そっと忍び足で歩くとういう
- 教えがある。
- 五、拝事
- (礼拝を欠かさぬこと)
- 常に素直で
- 正直な心を持ちなさい
礼拝をすることは、 - 身をただすことだ。
- 心を正しく柔和に持ち、
- 正直を信条にして上の者を敬い、
- 下の者を思いやり、あるものを受入れ、
- ないものを求めず、
- ありのままの誠実な心掛けは
- 仏神の思いにかない、
- 礼拝をしなくても加護がある。
- 礼拝をしても
- 心が歪んでいれば
- 天道からみはなされる。
- 六、刀衣裳事
- (質素倹約を旨とすること)
- 分をわきまえて質素でありなさい
刀や服装は - 他人のように立派でありたい
- と思う必要はなく、
- 見苦しくなければ
- 十分と心得なさい。
- 無い物を借り続けると、
- 他人から馬鹿にされる。
- 七、結髪事
- (常に身だしなみを整えること)
- 出勤の時はもちろん、
- 外出の予定がない場合でも
- 身だしなみを整えておきなさい。
見苦しい姿で
-
人に会うのは不作法で、
-
自分が油断すれば
-
家来も倣い、
-
来客にあわてるのはみっともない。
- 八、出仕事
- (場の状況を見極めてから
- 進み出ること)
- 出勤した時は、
- いきなり主君の前に
- 顔を出さないほうがよい。
- まず次の間にひかえ、
- 同僚の様子をみて
- 状況をつかんでから
- 御前に参上しなさい。
- そうしないと、
- 不慮の事態に
- 動揺してしまう場合がある。
- 九、受上意時事
- (上意は謹んで受け、
- 私見を差し挟まぬこと)
- 主君から命令があれば、
- まず返事をしてから
- 側に寄り、
- 謹んで拝命しなさい。
- 用事を果たしたら、
- ありのままを報告し、
- 自分の才知を
- ひけらかさないこと。
- 事案によっては
- 報告の仕方を思慮ある人と
- 相談してから復命しなさい。
- 独断はよろしくない。
- 十、不可爲雑談虚笑事
- (主の前で談笑するなど、
- 思慮分別のない行動を慎むこと)
- 主君の前で
- 談笑などをしないこと
- 主君へお目通りの場で
- 雑談などをする人の
- そばに近寄らないこと。
- まして、
- 自分もそれに加わって
- 談笑したりすると、
- 上役はもちろん、
- 同僚でも
- 思慮分別のある人には見限られる。
- 十一、諸事可任人事
- (何事も適切な者に任せること)
- 多くの人と交わって、
- かつ問題を避けろという。
- 何事もしかるべき人に任すべきだ
- 十二、讀書事
- (書を読むこと)
- 少しでも暇があれば、
- 本を読み、
- 文字が書かれたものを携帯して、
- 人目を遠慮しながら
- 見るとよい。
- 寝ても覚めても
- やり慣れているようにしないと
- 文字を忘れてしまう。
- 書くことも同じ
- 十三、宿老祗候時禮義事
- (常に礼儀を弁えること)
- 重臣方が
- 主君の側に
- ひかえている場面では、
- 姿勢を低くして通りなさい。
無遠慮な態度で - 足音をたてて通るのは
- 無礼なことだ。
- 誰に対しても
- 丁寧で礼儀正しくすること
- 十四、不可申虚言事
- (嘘をつかぬこと)
- 上下万人に対して、
- ほんの少しでも
- 嘘をついてはならない。
- どんな時でも
- ありのまま正直でいるべきだ。
- 嘘を言い続けると
- 習慣になって
- 一々つつかれ、
- いずれは人に見限られる。
- 人から糺されるのは
- 一生の恥と心得なさい。
- 十五、可学歌道事
- (歌道を学び品性を養うこと)
- 歌道の心得のない人は、
- 品がない。
- 良く学び、
- 常に言葉遣いに注意しなさい。
- 迂闊な一言で
- 胸中が悟られてしまうものだ。
- 十六、乗馬事
- (乗馬の稽古を怠らぬこと)
- 基礎を達人に習い、
- 応用の手綱さばきなどは
- 稽古を積みなさい
- 十七、可撰朋友事
- (友とする者はよく選ぶこと)
- 良い友を求めるなら、
- 学問の友人である。
- 悪友として除くべきは、
- 碁・将棋・笛・尺八の遊び友達だ。
- 趣味は知らずとも恥ではなく、
- 習っても害にはならず、
- 無駄に日々を送るより
- ましな程度である。
- 人の善悪は全て友人次第だ。
- 三人よれば
- 必ず師となる者があるから、
- その善人を選んで見習い、
- 良くない者は吟味すべきだ。
- 十八、可修理四壁垣牆事
- (外壁や垣根は自ら点検し、
- 修繕を怠らぬこと)
- 帰宅したら
- 家の囲いや垣根など
- 周囲を点検し、
- 必要な修繕を指示しなさい。
- 下働きの未熟な者は、
- その場しのぎで
- 用事を取り繕い、
- 後のことに無責任だ。
- 全てがそのようなものだと
- わきまえて注意を払いなさい
- 十九、門事
- (門の管理を徹底すること)
- 夕方は、6時頃に門を閉じ、
- 人の出入りのときだけ
- 開けさせなさい。
- ぐずぐずしていると、
- 必ず災難が降りかかる。
- 二十、火事用事
- (火元は自ら確認し、
- 常に用心すること)
- 夕方には
- 台所などの火元を自身で見回り、
- 家の者に
- しっかりと指示しなさい。
- よそからのもらい火への用心も
- 習慣となるよう、
- 毎晩指示すること。
- 女性は
- 身分の上下にかかわらず
- そうした気持ちがなく、
- 家財や衣装を取り散らかして
- 油断しがちである。
- 多くの者を
- 召し使っているとしても、
- 全てを人にさせようと思わず、
- まず
- 自分が行って状況を把握し、
- その上で
- 後には人に任せてもよいものだと
- 心得るのがよい。
- 二十一、文武弓馬道事
- (文武両道を旨とすること)
- 文武弓馬は常道である。
- 記すに及ばないが、
- 文を左、武を右にするのは
- 古来からのきまりであり、
- 兼ね備えなくてはならないものだ
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