口の中から薬が“再登場”した件について

病院で働いていると、
ときどき物理法則が崩れる瞬間があります。

本日の事件現場:病棟。
主役:認知症のある患者さん。
被害者:さっき飲んだはずの薬。

ミッション:服薬確認

「お薬飲みましょうね〜」

一錠ずつ、ゆっくり。
水もOK。

ごくん。

「飲めましたか?」
「飲んだ!」

口の中チェック。
舌の下、頬の内側、歯の裏。

異常なし。完璧。

私は心の中で思いました。
「今日は平和だな」

 

事件は突然に

数分後。

「看護師さん、なんかあったよ」

嫌な予感しかしない。

「どこですか?」
「ここ」

患者さん、ゆっくり口を開ける。

そこには──

薬、再登場。

しかも、
無傷。
新品同様。

 

どこにいたの?

・口腔内の奥深く
・舌の裏の異空間
・時空の狭間

医学書には載っていません。

でも病棟では、
定期的に出現します。

看護師の脳内会議(3秒)

「さっき見たよね?」
「確かに見た」
「え、私、見たよね?」

結論。

見た。
でも、あった。

これは拒否ではありません

認知症のある方にとって、
「飲む」「飲み込む」「覚えている」を
同時にやるのは高難度ミッション。

本人はちゃんと
やったつもりなんです。

だから、責めません。

そしてオチ

もう一度、ゆっくり服薬。

今度こそ…
ごくん。

口の中チェック。

……ない。

私「よし!」

その瞬間。

患者さん、ひと言。

「もう一個あるよ」

(※ありませんでした)