2024年6月21日

 

新日本フィルハーモニー交響楽団

すみだクラシックへの扉 #24 <JAZZとラテンへの陶酔>

すみだトリフォニ-ホール
 

指揮:ヤデル・ビニャミーニ 
ピアノ:小曽根 真 

 

 

 

 

感動したっ‼️

 


 
【プログラム】
前半
◆ガーシュウィン(ベネット編):交響的絵画『ポーギーとベス』より 
◆ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー ピアノ:小曽根 真 
 
ソリストアンコ-ル
◆小曽根 真 作曲 MO'S NAP(モーツァルトの昼寝)

後半
◆マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス(Danzón No. 2)
◆ガーシュウィン:子守歌
◆ガーシュウィン:パリのアメリカ人

アンコ-ル
◆ポンキエッリ 歌劇「ジョコンダ」より「時の踊り」

 

(敬称略でいきます)

 

 新日本フィルの定期公演とはいえ、これはやはり小曽根真が主役である。小曽根はかねて聴きたいピアニストであったが、私のようなのんびりした愛好家では、チケットが売り切れてしまって買えないことが続いていた。

 

 今回はひと月半ほど前にネットオークションで発見し、すぐ落札したというわけである。

 S席とはいいながら中央より後ろの席(1階23列)でステージにはかなり距離がある。モノキュラーを使えば表情も指の動きもよく見えたのでよしとしましょう。

 

 私の大学時代の友人が米国留学中、小曽根はバークリー音楽大学に在籍しており、詳しい事情は忘れたが知己を得たと聞いている。もちろんワタシ自身は面識はない。その後間もなくメジャーデビューしたと聞き、以来注目はしていたものの、コンサート通い(というほどではないが)を始めてまだ数年の、しかも怠け者の私には演奏会に実際に足を運ぶ機会がなかった。

 

 さて念願かない、今回初のナマ小曽根。これは素晴らしかった。

 

 元々ジャズピアニストとしてキャリアをスタートさせた人ではあるが(今でもそのように紹介される)、近年ではクラシックのオーケストラとの共演も多い。したがって、と言うべきか、演奏曲目はガーシュウィンやバーンスタインが多いのはやむを得ないか。

 

 この日の最初の曲は、オペラ「ポーギーとベス」からベネットが抜粋して編曲したもの。ガーシュウィン最後の作品である。私でもよく聴いたことがあるメロディは、耳に優しく美しい。

 

 2曲目で小曽根登場。「待ってました!」の声がかかりそうな雰囲気である。

 ガーシュウィンの”ラプソディ・イン・ブルー”はこれもまたあまりにポピュラーな曲。ガーシュウィンにまだオーケストレーションの技術がなかったので、ファーディ・グロ-フェが編曲したものである由。

 冒頭のクラリネットを初めとして、木管、金管の音が粒だっていて存在感はすばらしかったが、主張が強すぎると言えなくもない。一方ストリングスは出しゃばらず、柔らかく包み込むような調和のとれた音をビニャミーニの指揮が引き出していた。

 

 終盤の長いカデンツァ。小曽根の本領発揮。私レベルの理解力では、どのくらいアドリブが入っているのかはわからないが、自在に鍵盤を駆ける指先が、この日この時だけのリズムとメロディを奏でていることに取り込まれてしまった。

 

 このあたりでかなり涙腺が緩んでいたところ、ソリストアンコールに入り、モーツァルトの昼寝という仮想で小曽根自身が作曲した"Mo's nap" という作品で、涙が流れてきた。絶品。

 クラリネットがむしろ主役の曲であったとはいえ、小曽根の作品世界に浸り正に至福の時間であった。 クラリネットの中さん、と紹介していたのは中ヒデヒトだと思われる。新日フィルのメンバーではないので客演ということになる。

 

 私のすぐ後ろの男性が、よくこれだけ大きな声を出せると思うほどの全力のBravo、思わず身をよじるほどであったがそれも不快ではない。全員総立ちとは参らぬがスタンディングオベーションもあり、聴衆の熱狂は私が今年訪れたコンサートで最高であった。

 

 休憩のあと最初の曲は、メキシコ生まれのアルトゥロ・マルケス(1950-)の「ダンソン第2番」。ポスターのキャッチコピーに「JAZZとラテンへの陶酔」とあるのは、このあたりを指しているのだろうが、この1曲でラテンを謳うのもなぁ。あえて言えばアンコール曲はイタリアのオペラだし、ビニャミーニ マエストロはイタリア人だからラテン色がそれなりに織り込まれていたということでしょう。

 

 後半2曲目とフィナーレ曲もガーシュウィン。「子守歌」はほんとうに寝そうになった。

 そして最後の「パリのアメリカ人」。クラシックであまり「スタンダード」という言い方は聞かないが、正に定番曲でありますね。

 

 指揮のビニャミーニ マエストロは長身で手の位置が高く、軸もぶれず、無駄な動きもないので演奏する側は見やすかったのではないかと思う。マエストロの趣味なのか、管楽器の音が勝っていたように感じた。

 後半もすばらしかったが、やはりこの日は小曽根の演奏が圧倒的だった。いいものを聴かせていただきました。

 

 Bravissimo!!