2024年1月26日

 

 WOWOWで見た。

 

 劇場公開の際に興味を持ったが、いつの間にか終わっていた。

 

 2020年11月に渋谷区幡ヶ谷のバス停で寝泊まりしていたホームレスの女性が突然襲われ死亡した事件をモチーフにしてこの映画を撮ったと言うが、底が浅くてほとんどコメディでしたね。元になった実話の方がよほどドラマチックで、考えさせられるストーリーだ。

 この映画の宣伝の惹句は「高橋伴明監督が板谷由夏を主演に迎え、コロナ禍が招いた貧困・社会的孤立を描いた社会派ドラマ」だ。ちょっと違うね。これで第96回キネマ旬報ベストテンの日本映画第3位、日本映画監督賞 (高橋伴明)、脚本賞 (梶原阿貴)受賞とは驚きだわ。

 

 

 

 劇中挿入される小ネタがむしろ鬱陶しい。根岸季衣扮するホームレスの派手婆が、かつて総理を失脚に追い込んだ芸妓であったとか、柄本明が演じるバクダンこと元過激派の活動家が、伝説の爆弾教本「腹腹時計」を見せる場面とか、扱いが軽薄すぎて歴史に対する冒涜すら感じた。

 

 

 折しもほぼ50年前の三菱重工ビル爆破事件等で、指名手配されていた桐島聡を名乗る男のニュースが世間を賑わせている。その後、件の男が死亡したとのニュースが伝えられた。

 映画内で「腹腹時計」が画面に登場した時、おふざけにしても品がないなと感じたのは私くらいだろうか。

 

 モリカケサクラだの、通り一遍の政府批判を叫ばせた後に、板谷由夏演じる主人公が「あの人(安倍晋三元総理を強く匂わせる)のやってることは無茶苦茶だけど、結局私が悪いんだと思う」と語らせたのはどういう意図だろう。新自由主義がもてはやされて自己責任論が過度に主張されている、もっと弱者に寄り添え、と言いたいんでしょうか。

 

 演出もキャラクター造形もステレオタイプで古臭い。まぁわかりやすいっちゃ、わかりやすいけど。むしろノンフィクションドキュメンタリーの方が説得力あったのにね。もうNHKが制作済みだ。

 

 板谷由夏始め、俳優陣はプアな脚本にしてはしっかりやっている。大西礼芳ってよく知らなかったんだけど、そこそこ存在感発揮している。ルビー・モレノと根岸季衣がすっかり老けてしまったのは、感慨を催したね。三浦貴大は山口百恵の息子か、この映画では役柄で損している。

 

 

 

【スタッフ】

監督    高橋伴明
脚本    梶原阿貴
製作    角田陸ほか
製作総指揮    鈴木祐介

 

【キャスト】

北林三知子:板谷由夏
寺島千春:大西礼芳
大河原聡:三浦貴大
工藤武彦:松浦祐也
石川マリア:ルビーモレノ
小泉純子:片岡礼子
高橋美香:土居志央梨
介護職員:あめくみちこ
KENGO:柄本佑
センセイ:下元史朗
如月マリ:筒井真理子
派手婆:根岸季衣
バクダン:柄本明

 

2022年 日本 91分