2024年1月26日
浅草は相変わらず人出がすごい。半分以上は外国人か。
浅草演芸ホールは久しぶり。ネットオークションで招待券を入手したので来てみた。正直に言って、顔づけを見た段階で若干の躊躇を覚えたのだが、夜 高校のプチ同期会があったのでそのついでというわけで。
正月興行の延長か、出演者の数が多く、その分一人当たりの持ち時間が短いようでせわしない。
う〜ん、全般に低調でしたね。客の入りは上々でしたけど。最近定席はいつも混んでいる。この日も8割がた埋まっていた。
◆前座 林家さく平 『牛ほめ』
林家たい平の長男。そのネームヴァリューだけで客席が沸くほど甘くはない。下手ではないけど。
◆春風亭一花 『子ほめ』
女流では期待の二つ目という認識だったが、この日はやや精彩を欠いた。かような前座ネタではなく、もっと大ネタをかけてもよいと思ったものの、出番や他の師匠方のことも考えてこの噺にしたか。しかも短縮バージョン(往来でのやりとりを割愛)。ちょっと残念。
◆林家木久蔵 『こうもり』
先日蝶花楼桃花師のこの噺を聴いたばかり。桃花さんに1票ですね。木久蔵師は言うまでもなく木久翁師の息子。やや舌足らずの口調が耳に障る。
◆岡大介 カンカラ三線
カンカラ三線のよさ(があるとして)が全く生かされていないし、ほぼ歌を歌うだけのステージは退屈。また見たいとは思わなかった。
◆春風亭柳枝 『初天神』
初めてではないと思うが前回いつ、どこだったかは覚えていない。落語は上手でしたね。この日の出演者の中では光っていた方だろう。
◆林家ひろ木 まくらだけ喋って落語本編はなし
どこかの営業に行ったとき、主催者から「今日はひろ木さんのようなプロに近い人に来てもらってよかったです」と言われたそう。名前を変えた方がいいのかも。以前、台所おさん師匠も似たようなことを言っていた。
ひろ木師、座ったときの膝が斜め向きになっていて印象が悪い。若元春の仕切りの姿勢みたいだ。
◆アサダ2世 マジック
相変わらずお達者で。下手な噺家は話術を教わったらどうか。
◆林家たけ平 これもまくらのみ
声が大きいのはいい。上野鈴本演芸場の2月中席昼の部の主任を務めるくらいだから、そこそこの実力がおありなんでしょう。
◆春風亭柳朝 『荒大名の茶の湯』
ネタが悪いのかこの人の運びが拙いのか、感心しませんでしたね。
◆ロケット団 漫才
安心して見ていられる。久々に山形ネタを聴いて嬉しかった。少し短かったけど。
◆柳亭佐龍 『宮戸川』
客席の集中力が落ちているのが目に見えてわかった。どんどん雰囲気が弛緩してくる。演じている側にも間違いなく伝わっていて、噺の途中で「お時間がきました」と言ってぶつっと終わりにしたのは、予定通りなのか続ける気力が失せたのか微妙なところ。
あまり声を張る方ではないのにマイクから離れているから通りが悪い。失礼ながら女性を演じるには容貌が邪魔している。この噺のお花ははっきり言ってまるでさまになっていない。
◆柳家風柳 『つる』
上方落語と東京落語の二刀流、あるいは新作落語と古典落語の二刀流、というのが謳い文句。以前国立演芸場で「妾馬」(「八五郎出世」)を聴いたときは感心したが、この日は客の質が悪く気の毒だった。客席を惹きつけて一体化するにはネタもふさわしくなかったかもしれない。
◆林家楽一 紙切り
ついこの間上野鈴本で見た。横綱土俵入りを挨拶代わりに切ってみせ、その後客席からのリクエストに応えて、大谷翔平、舞妓さん&五重塔を切った。次のリクエストが女性客から「私の顔」。鈴本では女性客が「誕生日」というリクエストで、その際もこの日も女性を高座の前に呼び寄せ、横顔を鮮やかに切ってみせた。偶然にしてはできすぎのような。
奇しくもこの日、師匠の三代目林家正楽師の訃報が流れた。それには全く触れなかったが、少しくらい語ってもよかったのではないかと。
◆五明楼玉の輔 演目わからず
変わった名前なので五街道雲助一門かと思ったら小朝師の2番弟子。一見文菊師匠に雰囲気が似ている。
◆柳家小満ん 『悋気の火の玉』
老名人から「名」を抜いたら・・単なる「老人」。
ー仲入りー
◆春風亭一蔵 『鷺とり』
例によって声を張り、居眠りする客を起こす・・と自ら喋る。まぁ、小満ん師の高座でだれ切っていた客を起こすにはちょうどいい。前にも同じセリフを聞いた。この人こういう役回りにはぴったりだ。
この人のこの噺を聴くのは2度目かな。今回は短縮バージョン(前半のスズメとりを割愛)でかつサゲを少し変えたか。
◆すず風にゃん子・金魚 漫才
2度目か3度目だが、これだけ近くで見るとおもしろい(今日の席は前から4列目のほぼ中央)。
しっかり笑いはとっていた。後期高齢者というのは冗談にしても(客席はほ~っと軽いどよめき。金魚さんはほんとうは71歳である)、ちょっと痛々しいのは事実。
にゃん子さんは元女優・歌手。若いころは美人だっただろうという面影はある。62歳にしては若い。関西で活躍していたちゃっきり娘の真ん中、晴美さんに雰囲気が似ている。と言っても活動を休止して30年くらい経つし、関西ローカルだし、わっかんねぇだろうな~(松鶴家千とせ風に、ってそれこそわかんねぇだろうな)。
◆古今亭文菊 『浮世床』
やっと本格落語が聴けたという印象。だれた客席を引き締めた。
演目は『浮世床』で間違いないとは思うが、改編もあり、途中で切ってしまったので、もしかしたら改編創作版かもしれない。
ここで疲れて途中退席。3つ残っていたがあまり興味もなかったので。
この日は一部の客の質がたいそう悪かった。公演中のべつ間もなく喋っていた婆ぁ・・もとい高齢のご婦人方、周りの客がそれとなくにらむのだがおかまいなし。団体客の席があったので、そのメンバーかもしれない。
私の隣にいたご婦人二人連れも高座の流れに関係なく会話が途切れない。初めて寄席に来たと言っているのが聞こえたが、もうちょっとマナーを勉強してから来てくれ。
演じる方も集中力を欠いたか、やや精彩なく、居眠りする客多数。小満ん師の時間帯は3割くらいは寝てたかな。小満ん師は相変わらず単調な喋り、かつ声に張りがないのでよく聞こえない。眠気を催すのは間違いない。聴かなくても残念には思わないし。
だからかどうか、落語よりも色物の方が客席は沸いていたような印象を受けた。漫才二組、マジック、紙切りいずれも大ベテランの方々で、年功序列で真打になった程度の落語家がかなわないのは当たり前だ。
夜の部の顔づけには、入船亭扇橋、隅田川馬石、三遊亭白鳥、蝶花郎桃花、五街道雲助、入船亭扇遊らが並び、興味をそそる。
最近定席はやたら混んでいるが、質のよくない客も少なくない気がする。痛しかゆしであるね。
永谷商事の運営している寄席(定席とは言われない)は比較的空いている。あるいは圓楽一門会の亀戸梅屋敷寄席とか。それとも二つ目中心の落語会にまた行ってみるか。下手な真打を聞いて損した気分になるよりは、一生懸命な二つ目の熱のこもった高座の方が清々しいこともあるさ。