2024年1月17日

 

 

 

 見ているうちにだんだん腹が立ってきた。ヴィム・ヴェンダース監督作品というので見にきたが、これマスターベーションとしか思えない。いや、言葉が悪ければ自己満足と言い換えてもいい。

 一部に高い評価、どころかカンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得し、ヴェンダース監督の代表作品になるとの声すらある。ブログ界隈でも絶賛の嵐で、こういう芸術系映画が好きな人がたくさんいるのだなと感心するばかりだ。

 

 老生の感受性には全く響かない退屈な映画だった。何が言いたいの。日常性の尊さ?2時間もかけて。

 

 いかにもわけありの、半ば世捨て人のような中年男性がいて、淡々とその日常を描く。しつこい。役所広司の歯磨きを3回見る意味がわからない。

 

 役所広司はともかく、麻生祐未、田中泯、三浦友和、俳優の無駄遣いだ。

 

 劇中使用される歌の数々が、重要な意味を持っているはずだ。歌詞を全部聞き取れるほどの英語力がないのでフラストレーションを感じてしまった。日本で作った映画で全編日本語で進行する映画なのだから、せめて訳詩を字幕表示しておくれよ。

 

 たとえばエンディング近くに使われたニーナ・シモンの”Feeling good”だ。

 繰り返されるこのフレーズ。

 

 It’s a new dawn, it’s a new day, it’s a new life for me
 Yeah, it’s a new dawn, it’s a new day, it’s a new life for me, 
 And I’m feelin’ good

 

 あるいは劇中流れるルー・リードの”Perfect Day”

 

 Just a perfect day 
 Drink Sangria in the park  
 And then later 
 When it gets dark, we go home
 
 I'm glad I spent it with you
 Oh, such a perfect day

 

(歌詞はいずれも聞き取ったわけではなく、後刻ネットで拾ったもの)

 

 いや逆に、この映画を英語ネイティブが見れば、歌詞が完全に理解できてしまい、映像的余韻が削がれてしまうのかもしれない。歌詞の意味が一部あるいはほとんどわからない私のような日本人が、それでも単なる背景音楽ではない挿入歌に何かを感じる、というところが肝心なのかもしれない。だからこそ意図的に日本語訳詩を字幕表示しなかったに違いない。

 

 

 新しい夜明けだ、新しい日だ、私の新しい人生だ

 なんていい気分なんだ

 

 完璧な一日だ

 

 暗くなればうちに帰る

 

 完璧な一日だ

 

 PERFECT DAYS

 

【キャスト】

◆平山正木=主人公 トイレ清掃職人;役所広司 さすがに何を演じても、本作のように極端にセリフが少なくても、役所広司だ。ただ、本作のこの役は、この人でなくてもいい気がした。世間はそう思ってないらしいけど。
◆タカシ=平山の同僚;柄本時生 兄弟で活躍しておりますね。
◆アヤ=平山が熱を上げるガールズバーの女の子;アオイヤマダ なかなか個性的な新進女優かと思いきや、超売れっ子のダンサーで最近は演技も行うマルチなパフォーマーだそう。
◆ニコ=平山の姪;中野有紗 新人 有望と見た。
◆ケイコ=ニコの母親、平山の妹;麻生祐未 出番は少ないが光るものはあった。
◆平山が通う浅草のバーのママ;石川さゆり 役柄によく合っていた。
◆ホームレス;田中泯 うーむ、この人も無駄遣いだったような・・。いや、もちろん一目で田中泯とわかる存在感は他の人では真似ができない。
◆友山=ママの元夫;三浦友和 こういう役は合うが、これもあえてこの人でなくてもいいような。
◆居酒屋の店主;甲本雅裕 いろいろな作品情報を見ても無視しているのが多い。ちょっと扱い軽すぎないか。 
◆野良猫と遊ぶ女性;研ナオコ 一瞬しか出てないがすぐわかった。さすが。
◆OL;長井短 平山が昼食をとるベンチの隣でひとり昼食を取っている。セリフゼロだが十分存在感あり。
◆写真屋の主人;柴田元幸 この人東大名誉教授のアメリカ文学者という理解で合ってますか。
◆古本屋の店主;犬山イヌコ 短い出番ながらしっかり目立っていた。 
◆バーの常連客;モロ師岡 よく見るね。貴重な脇役。
◆バーの常連客;あがた森魚 あれがあがた森魚か、と言われてもわからない。
◆駐車場係員;松金よね子 はて、どこに出ていたか覚えていない。駐車場って?

 

【スタッフ】

◆監督;ヴィム・ヴェンダース
◆脚本;ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
◆製作;柳井康治
◆製作総指揮;役所広司
◆撮影;フランツ・ラスティグ
◆編集;トニ・フロッシュハマー

 

■公開日:2023年12月22日(金)全国公開
■上映時間:124分
■配給:ビターズ・エンド
■製作国:日本

 

 

 

 

 

 

 カンヌでパルム・ドールを受賞したヴェンダース監督の“パリ、テキサス”を見たのは40年近く前のことになる。そのころ何度か会った女性が見たいというので見に行ったのだったか。

 

 てっきりフランスのパリとアメリカのテキサスを対比させて描いた映画かと思ったら大間違い。“パリ、テキサス”とは英語で書けば Paris,Texasであり、テキサス州パリ市ということである。発音はむしろパリスと言ってもいいかもしれない。そもそもフランスのパリは都市名であり、テキサスは州名だから等格ではない。これはテキサス州北部の田舎町パリスから、ロスアンゼルスを経てヒューストンまで辿るロードムービーだ。

 

 主演のハリー・ディーン・スタントンの存在感が抜群だった。ナスターシャ・キンスキーの美しさも印象が強い。当時キンスキーはロマン・ポランスキー監督と愛人関係にあったと記憶している。

 

 この映画を見た数年後に、私はヒューストンへの赴任が決まった。ヒューストンでノンリコースファイナンスを担当していた私は、赴任後間もなく日本の大手商社が参加するコ・ジェネレーション(熱・電力併給プラント)の案件を手掛けた。その名もTexas Paris Co-gen, Inc. そう、この映画の舞台となったパリスで計画されたコジェネプロジェクトである。

 

 忘れることのできない映画である。