2023年12月22日に行った。

 

“ゴッホと静物画” 伝統から革新へ
(SOMPO美術館)

 

 これはかなり前のことになる。去年だよ。

 日本人はゴッホ大好き。平日の昼間だがそこそこの混雑だった。ただ、これがSOMPO美術館ではなく、上野か東京駅近辺のメジャーな美術館だともっと混雑したかもしれない(SOMPO美術館がマイナーだという意味ではありません)。

 

 ゴッホの名を冠する展覧会であるから当然と言うべきか、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館所蔵の作品もかなりの数が展示されていた。

 この美術館には2010年の7月3日に行った。なぜ日付けまで覚えているかというと、この日は私の誕生日で、鑑賞している最中に日本の父からお祝いの電話があり、携帯で話を始めたら当然係員に注意をされたのだった。

 

 ゴッホ美術館で膨大な数の作品を見て、知らないうちに涙があふれてきた。絵を見て泣いた初めての経験である。

 

 37年の生涯で約850点の油彩画を描いたという。画家になる決意をしたのが27歳の時だから、画業に携わったのは10年にすぎない。生きている間に売れた作品は1点だけだったと言われる。

  

 

 

 

 

◆フィンセント・ファン・ゴッホ『コウモリ』1884年10~11月  ファン・ゴッホ美術館

 

◆ゴッホ 『髑髏』1887年5月 ファン・ゴッホ美術館

 

◆ゴッホ 『青い花瓶にいけた花』 1887年6月頃 クレラー=ミュラー美術館

 

同上(部分)

 

◆ゴッホ 『カーネーションをいけた花瓶』 1886年 アムステルダム市立美術館

 

◆クロード・モネ 『グラジオラス』 1881年 ポーラ美術館

 

同上(部分)

 

◆ゴッホ 『赤と白の花をいけた花瓶』 1886年 ボイマンス・ファン・ブーニンヘン美術館

 

 

◆ゴッホ 『アイリス』 1890年5月 ファン・ゴッホ美術館

 

◆ゴッホ 『ひまわり』1888年11~12月 SOMPO美術館

 平常は展示の最後にガラスケースの向こうに収まっているこの絵が、今回は『アイリス』とならんで展示されていた。なかなか壮観でありましたね。

 購入時(1987年)の価格が53億円であったらしい。購入前の美術館の年間入場者数が3万人程度であったところ、翌年以降20万人程度増加したのは、正に「ひまわり効果」であったろう(現在は年間20万人近くで推移している模様)。

 すでに入場料収入だけでも十分投資額は回収していると考えられるうえに、作品の価値は何倍にもなっていると推測されるので(*)、結果として安い買いものだったと言って差し支えないだろう。

 

 (*)このレベルの美術作品がオークション等の形で市場に出ることは稀なので、現在の市場価値がいくらかというのはむずかしいが、一般に美術品は物価上昇よりはるかに高い比率で値上がりする。

 

 

 

 

 

◆ゴッホ 『水差し、皿、柑橘類のある静物』 1887年2月~3月 ファン・ゴッホ美術館

 

◆ゴッホ 『靴』 1886年9月~11月 ファン・ゴッホ美術館

 

◆ポール・ゴーギャン 『花束』 1897年 マルモッタン・モネ美術館

 

◆ゴッホ 『レモンの籠と瓶』 1888年5月 クレラー=ミュラー美術館

 

◆ゴッホ 『皿とタマネギのある静物』 1889年1月上旬 クレラー=ミュラー美術館

 

◆ポール・ゴーギャン 『りんごのある静物』 1895年 ランス美術館

 

 大部分が写真撮影可であった。本家のゴッホ美術館では、少なくとも私が訪れた2010年は全面不可だったので、案外本家でも今は解禁なのかもしれない。現物を見た時に覚えた感動を、写真が100%映像として再現してくれるわけではないが、それでも記憶、記録としての価値は十分ある。ありがたいことです。

 

 純粋に作品だけを見るというのはむずかしい。作者の人生を抜きに語れない、というのは素人のへぼ鑑賞でしょうか。


 今さら言うまでもなく、ゴッホの生涯は評論、小説、映画、演劇さまざまな手法で描かれている。本人の絵画作品を離れて、これだけその人生を採り上げられた芸術家がいるだろうか。


 ゴッホという存在そのものが芸術であるに違いない。