2023年12月20日

 

 上野鈴本演芸場12月中席千秋楽 昼の部

 

 12月2度目の落語。今年はこれで39回目の落語鑑賞。ここ2年ほどですっかり落語にはまってしまった。ただ、落語家の数はいまや1,000人になんなんとするという。まだまだ知らない上手な人がたくさんいるに違いない。あと2~3年は抜けられそうもない。年金生活者ゆえ、資金に限りがある。来年はDVDとCable TVも活用してとりあえずねらい目を絞っていきたい。

 

 私の現在の推しは、春風亭一之輔、桂宮治、柳家三三、桃月庵白酒、入船亭扇橋、三遊亭兼好、上方で桂吉弥、桂雀々各師匠。ほかにもいらっしゃるが、まぁこのあたり。ベテラン師匠はとりあえずはずしておいた。

 二つ目ではわん丈、つる子は真打昇進が決まっているから別として、春風亭一花、春風亭昇羊、立川談洲、立川吉笑、前座は立川のの一、三遊亭けろよん、三遊亭東村山あたりが有望かなと。

 

 何度も書いたが落語家が900人とか1,000人とか多すぎる。定年制設けてもいいくらいだ。75歳かな。この年齢超えても聞きたいという人は限られてくる。

 

鈴本演芸場正面

 

 

 

 代演あり実際には下の顔付けとは異なる。この日の目当ては柳亭市馬、古今亭文菊、春風亭一之輔の各師匠。割だけ見ると桃月庵白酒師と三遊亭白鳥師が交替出演となっているが、なんと20日は両師匠休演(20日は白鳥師が夜の部で芝浜リスペクト噺を演じる)。残念。

 

 夜の部では、年末恒例(だと思う)の演者日替わりでの「芝浜」。10日間毎日通う人もいるのだろうか。一流どころが名前を連ねていて興味をそそる。ちなみに21日から26日までの年末特別興行ではトリが『文七元結』の競演である。

 

 

 元々の顔付けが2段目。写真のない札が代演。この日はおそらくトリの一之輔師目当てと思われる客で正に大入り満員。ただ、一之輔以外興味ありませんわ、という風情の和装のとりすました婆ぁ・・もとい高齢のご婦人がいて、一之輔師が出てくるまで全く拍手もしないし笑いもしない。まことに不愉快であった。

 

 

 

 夜の部は上記の通り師匠日替わりで「芝浜」の競演。昼の部のトリで一之輔師が、出だし「芝浜」かと思わせて、自作の新作落語『芝ノ浜由縁初鰹』を演じた。

 

 例によって個別に簡単にコメントを。

◆(前座)春風亭貫いち 

 与太郎噺。2度目かな。そつなく語るが個性が出てくるのはこれからか。

◆春風亭㐂いち 『一目上がり』

 この人も二度目かな。一之輔師が顔づけされている時に、弟子の前座貫いち、二つ目㐂いちというパターンだね。これはネタ自体がよくできた噺なので、個性をどこまで出せるかを問われるような気がする。がんばってね。

◆ダーク広和 (マジック)

 トランプ手品。この人を見るのは何回目だろう。いつもお見事です。

◆三遊亭歌奴 『片棒』

 この噺はいろいろな噺家さんで聞いたが、なかなか味わい深かった。歌奴といえばこの人の師匠で先代(三代目)圓歌の二つ目時代の名前。あの「山のアナアナ・・(「授業中)」」で一世を風靡した方。先代林家三平とともに、二つ目で鈴本のトリを飾った伝説の主である。その圓歌の名跡はすでに兄弟子の四代目(前名歌之介)が継いでいる。

◆柳家小ゑん 『顔の男』

 このネタは自作だろうか。ユニークでそれなりに完成度は高い。

◆ロケット団 (漫才) 

 相変わらずおもしろい。今回は山形ネタがなかったのが寂しかった。舞台に登場したとたんに客席から歓声があがり、この日の客はかなり寄席に通い慣れているという雰囲気だった。

◆春風亭一蔵 『猫と金魚』

 たしか真打になったのは小燕枝、扇橋と同期だったと記憶している。ほかの二人に比べるとセールスポイントがやや弱いかな。ネタを選べばすごくおもしろいんだけど。

◆柳亭市馬 『厄払い』 

 相変わらず洗練された高座。ただ、この日は最後ぶつっと切ったような印象。ちょっと抜いたかな。

◆立花家橘之助(浮世節)

 この方私好きです。華があって余裕綽綽という雰囲気がよいね。

◆橘屋文蔵 『時そば』

 この人、入りがぼそぼそと小声で始まるので、年寄りには聞き取りづらい。だんだん熱が入ってくる時の「ため」みたいなものなんだろうけど、ちょっと配慮がほしい。これだけ有名なネタだと逆にむずかしいと思うのだが、さすがに手慣れた話ぶりでしたね。

◆ニックス (漫才)

 二度目。いやなかなかおもしろいですよ。

◆古今亭文菊 『つる』 

 まくらの喋りと落語本編でがらっと雰囲気が変わる。なかなかの迫力を感じさせました。期待に違わず。

◆春風亭正朝 『ん廻し』

 事前の顔づけでは一之輔師の師匠の一朝師だったところ、急遽弟弟子にあたる正朝師が代演。入門の時から真打になるまで名前が変わらないというのはむしろ珍しいんではなかろうか。70歳には見えない若々しさ。

◆林家正楽 (紙切り) 

 いやーこういうのを至芸というんでしょうか。客席からのリクエストに「スノーボール」があって、「そんなもん切れるわけない」と一言で切って捨てて客席爆笑。ところが最後にちゃんと見事に切って見せて、さすがの年季でありました。息子が二楽、孫が八楽と三代にわたって紙切りの芸を継承している。

◆春風亭一之輔 『芝之浜由縁初鰹』

 爆笑。はちゃめちゃのようでいて、きちんと辻褄を合わせるストーリーと、途中マイクを片手に歌をうたう場面まで組み込むという破天荒な構成をみごとに調和させてみせる。天才だ。

 以前上方落語の笑福亭たま師の新作を二つばかり見たことがあるが、完成度が低く、アイデアの斬新さでも全く一之輔師のレベルに遠い。私自身が関西出身なので上方落語を応援する気持ちは強くあるが、かつての仁鶴、三枝全盛期の勢いはない。

 

 今年はこれで聞き納めかな。