2023年12月9日
『⁉︎なコンチェルト』
(みなとみらいホール)
【プログラム】
◆カーター・パン ”スラローム”
◆マウリシオ・カーゲル ”ティンパニとオーケストラのための協奏曲”
◆ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ”ピアノ協奏曲大6番 二長調 op.61a ”
(アンコール)
◆ガーシュイン ”魅惑のリズム”
【演奏者】
◆ティンパニ;篠崎志門
◆ピアノ;阪田知樹
◆指揮;川瀬賢太郎
◆オーケストラ;神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ティンパニー協奏曲は初めて、というかそれが目当てできた。もちろん阪田知樹さん推しの小生としてはまず阪田さんの出演するコンサートが優先事項である。今年阪田さんのリサイタル/コンサートに赴くのは5度目となる。
ユーチューブで『カスタネット協奏曲』を聞いたことがあるが、カスタネットに音階があるのかと思うほどの演奏で驚いた経験がある(著名なフラメンコダンサーであったと記憶する)。
ティンパニはそもそも音階があるから、それをどのように駆使してコンチェルトを奏でるのか、そこには期待はあった。
◆最初の曲“スラローム”はいかにも現代アメリカ曲らしい、華々しい活気あふれる曲。ジョン・ウィリアムズを聞いているみたいだった。
◆ティンパニ協奏曲ねぇ。ネタバレになるが、私のこのブログの読者は世界中で多い時で30人くらいなのでかまわないだろう。曲の最後に演奏者がティンパニに頭を突っこむのである。上のコンサート案内のフライヤの左上にそのイラストが描かれているから、事前にわかる人はわかる。というより、私が知らなかっただけで、かなり有名な曲らしい。
で、曲想は、いかにも現代音楽という趣で、美しいかといわれれば美しくないし、感動したかと訊かれれば全く感動しなかったし、もう一度聞きたいかと問われれば、勘弁してくれとしか答えようがない。
アーティストの側からしても、これ暗譜むりだろうという気がする。現代音楽はえてしてそうだが、メロディラインは全く予想もつかないし、そもそもこれを旋律と呼ぶのか、むしろ私のような永遠の初心者には戦慄であるよ。
これを20分も30分も聞かされるのは苦行に等しい。
バッハやベートーヴェンの作品はその死後200年、250年たっても演奏されているし、今後もまた引き継がれていくに違いない。ではこのカーゲル、あるいは現代音楽と呼ばれる前衛的な作品が22世紀以降も伝承されていくのか大いに疑問である(個人の感想です)。
このカーゲルという人、指揮者が最後に倒れるという指示のついた”フィナーレ”を作曲した人だそうで、ちょっとおふざけが過ぎるんではないのか。これを日本で最初に演奏したのが飯森範親さんだそうで、その曲の存在だけは知っていた(聞いたことはない)。
美術における抽象画あるいは前衛芸術は、気にいらなければ素通りすればいいが、コンサートに行ってその曲がおもしろくないといって耳をふさぐとか退席するとかいうのもむずかしかろう。
◆阪田さんのピアノコンチェルトで口直し?である。
相変わらず阪田さんの演奏は軽やかで、その音色は柔らかい。力強さもありながらの優美さというのは阪田さんの持ち味だと思う。超絶テクニックなのにさらりとひきこなす姿はいつもながら美しい。ほかのピアニストなら外連味たっぷりに見えを切ってみせるところを、阪田さんは少し手を上げるくらいか、しなやかな指が宙に舞うのをもっと見たい気もする。
◆アンコールは軽めの曲。本編とは雰囲気を変えて。
みなとみらいコンサートホールは初めて。千葉からは大遠征である。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団のホームと言っていいのだろう。神奈川フィルといえばコンマスの石田泰尚さんがすぐに思い浮かぶ。私個人は石田組や、そのほかアンサンンブルで何度か聴いたことがあったが、神奈フィルを率いての演奏は初めてだった。強面の見かけとは裏腹に、真摯で誠実な演奏ぶりに感嘆し、前後半とも目が離せなかった。
この日の私の席から。期近になって取ったのであまりいい席が残っていなかった。ほぼ満席でしたね。
ティンパニ協奏曲の後。その破れたティンパニを写真に収める人たち。私もその一人。
もちろん張ってあるのは紙です。神奈川フィルはこのために、15種類もの紙を用意して試したそうだ。
協奏曲の終わった後、普通のソロ楽器ならソリストアンコールがあるところ、さすがにティンンパニの独奏曲はなく、指揮者の川瀬さんと、ティンパニストの篠崎さんのトークタイムが設けられた。
頭を突っ込んだときにうまく破れなかったらどうしようという不安があったそう。