2023年12月7日
『さんかく寄席』
ちば男女・みらいフォーラム2023
(蘇我コミュニティセンター ハーモニープラザ)
「さんかく」は三角ではなく、「男女共同参画」のこと。12月4日からの1週間を、千葉市男女共同参画週間として展開するということで、本件も千葉市男女共同参画センターの主催である(千葉市共催)。
落語のネタ自体は前座が15分ほど、ぼたん師匠が30分の噺を2席といった具合で、その間にぼたん師匠が男女共同参画にちなむ話をするという構成である。ぼたん師の講演は、落語家らしからぬと言っては失礼ながらごくまじめなもので、語り口、筋道だった話ぶりといい、知性と品格を感じさせるものだった。
1998年3月に静岡県立浜松工業高等学校情報技術科を卒業し、4月に日本大学生産工学部数理工学科に入学、在学中はプログラミングを学び、さらに顔認証など現代のIT技術の先端を履修していたそうだ。
くわえて、2021年より日本大学大学院総合社会情報研究科文化情報専攻言語教育研究コースに在学、2023年3月修士課程修了というから、掛け値なしのインテリ落語家ということになろう。
2022年8月、結婚。2023年4月、第一子誕生ということは43歳での初産である。
実に本日のテーマである「男女共同参画」あるいは「一億総活躍社会」にふさわしい人選であることよ。
こうした場合に、講演者プロフィルとして、理系学部卒、ママさん落語家、と紹介されることが多いのは当然といってよい。ご本人は、そう紹介されることを忌避するわけではないが、自分からことさらに言い立てることはしない。むしろ、この「男女共同参画社会」において、「リケ女」だの「ママさん~」と安易に表現することには気をつけねばならないと考えていると、まことに思慮深いコメントをされていた。
こういう人こそ「一億総活躍」担当大臣にふさわしいと思うぞ。
とか言いつつ、実はこの人のことはこの落語会まで全く知らなかった。「笑点」において、2007年に姉弟子だった林家ひらりの廃業後、ひらりが務めていた笑点アシスタントに起用され2023年1月まで出演していたそうだが、私は笑点は全く見ないので知らなかった。
ここ2年ばかり落語会や定席によくでかけるが、顔づけされていた記憶がなく、ちょっと不思議な気がする。女流としては11人目になるそうで、女流としては中堅より上にあたる。
落語界は男女差別はないとご本人も語っておられた。それこそ本日の「男女共同参画」にふさわしい世界ではある。
とはいえ、女流は数において少ないことは事実であり、落語に限らず「女流」を別枠でとらえてしまいがちである。これもぼたん師に言わせれば、気をつけねばならないことでありますね。
さてさて、落語の方は以下の演目でありました。
◆(前座)柳家小きち 『松竹梅』
しっかりとした発声とよどみのない語りは将来性を感じさせる。これからどう個性を磨いていくかですね、などと偉そうに。
◆林家ぼたん 『ぞろぞろ』
◆林家ぼたん 『御神酒徳利』
この方もはっきりとした発声と、落ち着いた雰囲気で、林家らしからぬ上品な高座であると感じた。同じ林家の女流でも林家つる子さんとはずいぶん違うものだ。つる子さんは正蔵門下、ぼたん師はこん平門下だから、師匠が逆じゃないのという印象すらある。
あくまで素人落語愛好家としての素朴な感想ながら、ぼたん師の高座は欠点がないことが逆に難点だとすら感じる。次は滑稽話を聞いてみたい。
女流では中堅の上の方と書いたが、落語界全体ではまだ若手である。どこかで爆発することを期待したい。
この日の客席は、落語を聞きなれた客という雰囲気ではなかった。きちんと拍手をしない客が多すぎる。
会の性格上、チケットを買ったというよりは、もらって付き合いで来たというようすが見えた。入りも2~3割で寂しいという印象は否めない。
お役所がいろいろ啓蒙活動をする場合の制約はあるのだろうが、もう少し工夫がほしい。