2023年7月4日

 

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

 

【スタッフ】

監督:ジェームズ・マンゴールド
製作:キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル、サイモン・エマニュエル
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス
脚本:ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース、デビッド・コープ、ジェームズ・マンゴールド
音楽:ジョン・ウィリアムズ
2023年アメリカ 154分

 

【キャスト】

◆ハリソン・フォード:インディ・ジョーンズ 世界を駆け巡る考古学者にして冒険家
◆フィービー・ウォーラー=ブリッジ:ヘレナ・ショー バジルの娘で名付け親はインディ。父親が追い続けてきた『運命のダイヤル』の行方を探してインディの前に現れる
◆アントニオ・バンデラス:レオナルド インディの旧友で潜水士
◆ジョン・リス=デイビス:サラ インディの窮地に現れる親友 
◆トビー・ジョーンズ:バジル・ショー インディの親友でヘレナの父親 オックスフォード大学の考古学教授 
◆イーサン・イシドール:テディ インディを手助けする少年 ヘレナの相棒 
◆マッツ・ミケルセン:ユルゲン・フォラー 元ナチの物理学者でインディの宿敵
◆シャウネット・レネー・ウィルソン:メイソン インディを追う謎の捜査官

 

 

 ハリソン・フォードさすがに年とった。撮影時78歳だからそれは無理もない。

 冒頭の若い姿は、こんなシーンを以前に撮っていたのかと思ったら、CGだそう。もうこうなると実写とCGの境目がわからない。極端な話、俳優が死んでも続編をいくらでも作れるということになる。

 原作者が亡くなってもドラエモンもクレヨンしんちゃんも続々と作品は世に送り出されている。ゴルゴ13など、元々さいとうプロダクションが工房として共同作業で製作していたから、原作者のさいとうたかを氏が活躍中の時からなにも変わっていない。アニメならいいのか。アニメといっても最近の映画はCGを駆使して制作しているし、逆に最近の映画『リトル・マーメイド実写版』など実写といってもCG加工だらけだろう(見てないけど)。AIとCGでいくらでも作品は生まれそうだ。芸術作品もAIを使えば真贋を判定できないくらいのものが作れるだろう。これはある種の産業革命ではないか。

 

 いや、別にそんな大上段に振りかぶるつもりはなかった。ただ、これから芸術、エンタテインメントの世界はどうなっていくのかという興味はある。決着がつくころには私はこの世からおさらばしているだろうけど。

 

 さて、インディ・ジョーンズのたぶんこれが最終章。それこそAIとCGで続編を作らなければ、という条件つきだが。

 まあ水準以上のおもしろさであることは間違いない。ハリソン・フォードも頑張った。思えばスター・ウォーズの第1作でハン・ソロ役を演じてブレイクしたのがもう46年前だ。ということはジョージ・ルーカス(2歳下)もスティーブン・スピルバーグ(4歳下)もみんなおじいちゃんだね。元気なじじいどもだ。見習いたい。

 

 アクションシーンも今までは極力自分で全部演じていたそうだが、さすがに今回はスタントマンを使っているらしい。トム・クルーズもスタントマンを使わずに撮影することで知られる。あの「トップガン・マーヴェリックス」も戦闘機のシーンを含めてほとんど自分で演技しているそうで、還暦を過ぎてよく頑張りますな。80歳まではやりたいと言っているのはたぶんこのハリソン・フォードを意識してのことかと。

 

 ストーリーの方は、最後はまさかのタイム・トラベル物語に。前作あたりでも魔法のおとぎ話っぽい要素もあり、だんだんファンタジー系に移行していったのはスピルバーグが元々そういう趣味であるせいなのか、ぎりぎり大人も楽しめる範囲内だったと言っておきましょう。

 

 この映画、戦後80年近く経つというのに、ナチスを敵役にもってきた。誰にも遠慮なく悪役に設定できるのはナチスくらいなんだろうか。スピルバーグの意向が働いているのかもしれない。

 中国はエンタテインメントの一大マーケットだから配慮せざるを得ない。これから先しばらくはロシアを叩く映画が増えそうだが、冷戦時代の二番煎じになりかねない。イスラムがからむと米国内のイスラム系人口を敵にまわすのも具合が悪い。というわけで単純な勧善懲悪の物語は作りづらくなってきた。

 だいたいアメリカ式のカウボーイ正義感は単純すぎて、もはや大人の鑑賞には耐えなくなってきた(個人の感想です)。アメコミのヒーローだよりでは、ハリウッド映画もジリ貧だね。日本の漫画の映像化権を買い漁るのも無理はない。

 

 

 ところで、アントニオ・バンデラスってもっとかっこいいというイメージがあって、「え?出てたの?」というのが正直な感想。この役は彼の俳優キャリアにおいて何かプラスになるのか。ちょっと不思議な気がしますね。