2023年4月16日

「前衛」写真の精神:

なんでもないものの変容

(千葉市美術館)

 実は写真は苦手である。特に芸術系はなおさらだ。むしろ報道写真の方が興味がある。TOP MUSEUM(東京都写真美術館)は2回くらいしか行ったことがない。そんな私でももちろん土門拳は知っているし写真集も持っている。今まさにTOPで「土門拳の古寺巡礼」展が開催中である。これは行ってみたい。

 ほかにも森山大道や白川義員、田原桂一は知っている。メディアによく登場していた秋山庄太郎、立木義浩、荒木経惟、篠山紀信、浅井慎平、大竹省二あたりは誰でも知っているだろう。最近だと岩合光昭とかレスリー・キーとか。

 しかしこの展覧会で名前の上がっている写真家の方々は、馴染みがない。

 なんでそんな展覧会に行ったのかというと、千葉市美術館の年間会員「ちばしびフレンズ」だからという単純な理由である。2回も企画展に行けば元がとれるというお得なプランであるから、企画展は100%行っている。

 さて、その展示の後半で、「実験工房の造形」という展示があった。最初にメンバーの写真が掲げてある。そこで目についたのが赤丸で示した小柄な男性である。はて、みたような顔だと思って説明書きに戻ったら、これは作曲家の武満徹であった。

 「実験工房」は、本展の主題の一人である大辻清司が1950年代に参加した、美術、音楽、文学など芸術のジャンルを超えた集団で、相互に影響を与えながらゆるやかに結びつき、バレエや音楽界での作曲、舞台装置、衣装、照明などに取り組み、総合的な芸術の空間づくりを目指したのだそうだ(会場キャプションからの引用)。

 

 

後年の額が禿げ上がった顔がなじみ深いが、面影は変わらないので気がついた。

そして、武満の左が福島秀子という画家で、この後の展示に興味を覚えることになる。

 

これが福島秀子の【花(ダクダク)】

 

福島秀子【ヒト】

一瞬、ピカソの「泣く女」を思い浮かべた

 

 とまあ、行ってみるといろいろ新たな発見があるわけで、美術展というのはお金を損したと感じることはあまりない。この先どれだけ芸術に触れる機会があるか知れぬ身としては、あまり無駄な時間を使いたくない。先日坂本龍一氏が亡くなった際に所属事務所は訃報を伝える文書に、坂本さんが好んだラテン語の一節を添えた。
「Ars longa, vita brevis」(芸術は長く、人生は短し)
「人の命は短いが、優れた芸術作品は死後も後世に残る」

 

 書物も、平面芸術も立体芸術も、映像作品も、映画演劇、歌舞音曲やあらゆる芸術学術作品も、市井の一市民がどんなに頑張ったところで、触れることができるのはごく一部に過ぎない。アーティストの方々に感謝。

 

 そしてこれはやはり「実験工房」のメンバーである北代省三の【エウリュディケ】。クレーを思わせる

 

常設展示より恩地孝四郎【失題】

 

同じく恩地孝四郎【土岐善麿像】

 

コレクション展示より 井上安治【銀座商店夜景】

まるで葛飾応為のような

 

落合芳幾【俳優写真鏡 花垣七三郎 澤村訥升】

三菱一号館美術館で4月9日まで「芳年/芳幾」展が開催されていた

 

落合芳幾【俳優写真鏡 荒獅子男之助 坂東三津五郎】

 
 千葉市美術館、いつもユニークな企画展で楽しませてくれる。
 この日は日曜日の昼間というのに閑散とした展示室のようすであった。鑑賞に好適なのはよいが・・残念だ。